真のインクルージョン、真のダイバーシティを創りたい OVER THE RAINBOW 代表 荒牧 明楽さん

生まれた時から心は男性、体は女性として生まれ、自分が何者かわからず、迷い苦しみ死も覚悟した経験を経て、世の中のすべての境界線をなくす技術との出会いから、現在、真のインクルージョン(※1)、真のダイバーシティ(※2)を創っている荒牧 明楽さんにお話を伺いました。

プロフィール
出身地: 福岡県柳川市
活動地域:福岡、九州を中心に全国
経歴:佐賀大学経済学部卒業後、株式会社リクルートに入社
その後、広告業界と医療業界で転職を繰り返したのちに独立
現在の職業および活動:OVER THE RAINBOW 代表
NPO法人カラフルチェンジラボ 
LGBT(性的少数者すべてを含む)の啓発活動や講演活動
マインドームインストラクターとして自己理解やコミュニケーションスキルを磨くトレーニングを実施
座右の銘:縁を生かし恩をかえす


※1 ダイバーシティ(Diversity):多様性を認め合うこと
※2 インクルージョン(Inclusion):一人ひとり異なる存在として受け入れられ全体を構成する大切な一人としてその違いが活かされること

「真のインクルージョン、真のダイバーシティを創りたい」

Q.どのような夢やビジョンをお持ちですか?

荒牧 明楽さん(以下、荒牧 敬称略):真のインクルージョン、真のダイバーシティを創っていきたいです。今世間では、ダイバーシティ&インクルージョンやSDGsが話題になり、個性と全体性を発揮しようという風潮になっていますが、今の思考の起点のままだと難しいと思います。なぜなら、はじめから自分と他人は違うという「違いが大前提」の観方だと、立場や環境によってぶつかるため、人と人とが分かり合うことは不可能だと考えるからです。
 しかし、そもそもの大前提が自分と他人は違うものではなく、本当はひとつだけであることが認識できることで、そこから違いが生まれ、それぞれの役割が分かるようになります。その仕組みが分かった時に初めて、真のインクルージョン、真のダイバーシティが創られると思います。それができる社会を創っていきたいです。

記者:真のインクルージョン、真のダイバーシティ、すごくかっこいいですね!!!

Q.「真のインクルージョン、真のダイバーシティを創る」ために、どんな目標や計画を立てていますか?

荒牧:2020年の東京オリンピックに向けて、今世界から日本が注目されていますが、その中のひとつとして、LGBTへの取り組みも注目されています。オリンピック開催までにまず、根深い固定観念として持っている、男女二元論という性の境界線を解くことが大事だと思い、今もそこにアプローチをしています。
 現在、学校や企業などで性に関しての教育や講演をさせて頂いていますが、「そのような人たちがいるんだ!」という言葉をよく聞きます。その中で、正しい知識を教えていくことの大切さに気付かされます。
 また、当事者の中には自分らしく生きることの恐怖から、隠れて生きている方がいます。そのような方に「自分らしく生きていいんだ!」という勇気の一歩を踏み出してほしいと思い、堂々と自分を表現することができるよう、九州レインボープライドの活動も続けています。性の境界線を解くためには、非当事者、当事者、互いに歩み寄ることが必要だと思っています。それをすることで、2020年までに性は男女二元論ではなく、多様な性があるということをみんなに知ってもらいたいです。
 そして2030年には、実は性という境界線は無いということをみんなに気付いてほしいです。その時には、LGBTという言葉もなくなり、全世界の人が境界線なんて無い、ひとつだけがあると言える世界を実現したいと思っています。

記者:なるほど。確かに、性の境界線はすごくあると思いますね。しかし、その境界線がなくなったとき、本当にひとつだけがある世界が実現するのかもしれませんね。

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Q.「2030年までに全世界の人が境界線なんて無い、ひとつだけがあると言える世界を実現する」ために、現在どのような活動指針を持って、どのような基本活動をしていますか?

荒牧:私自身が自分の固定された観点に執着しないことを心掛けています。常に、0=∞=1のALLZERO化感覚で生きること。今ここ常にひとつだけと繋がって、今ここの瞬間を楽しむ、相対世界ではなく囚われない世界で生きることです。
 それこそ、心が脳に勝つこと。脳の条件反射で行動してしまうと、全部観点に掴まってしまうので、常に心が脳に勝つことに勝負しています。

記者:読者の方の皆様にとってはなかなか難しい表現かもしれませんが、心が脳に勝つことに向き合っている姿勢が素晴らしいと思いますね。

Q.そもそも、「真のインクルージョン、真のダイバーシティを創りたい」という夢やビジョンを持ったきっかけは何ですか?そこには、どのような発見や出会いがあったのですか?

荒牧:人生で初めて生きる場所を見つけたのが、大きなきっかけでした。高校1年生の時に「性同一性障害」がテーマになったドラマを見て、「自分と同じように性に悩んでいる人がいるんだ」という衝撃を受けました。そこでもっと詳しく知りたいと、当事者役のモデルとなった方の講演を聞きに行きました。そこには、私と同じ境遇の方がたくさんいて、初めて同じ悩みを抱える仲間と出会えた時の喜びは今でも忘れません。その時、一気に世界が開けたんです。そこで初めて自分の生きる場所を見つけることができました。
 その後、インターネットで同じような境遇の方が集まるコミュニティとも出会いました。この出会いに私はすごく救われたこともあり、LGBTのTに特化したトランスジェンダーの方が集まれるコミュニティを九州で立ち上げました。それで自分の居場所と仲間たちの居場所を創れたと思っていたのですが、大きな問題が起きたのです。同じトランスジェンダーの仲間の間で、手術をしている人が手術をしていない人に「なんで手術を受けないんだ!お前みたいな男らしくない奴がいるから俺たちがいつまでも認められないんだ!」と争うことがありました。その時私は「同じ仲間なのになんで分かり合えないんだろう?」とすごく戸惑い、悲しい思いで一杯でした。
 その後手術も行い、戸籍も変えて男性として生きたのですが、男性で生きようとすればするほど、私が思い描いていた『男は強く、たくましく、誇り高く女性や家を守るもの』という男性像とはかけ離れた場面を何回も見るようになりました。それがすごく嫌で「男らしさとは一体何なんだろう?」と考え悩むようになり、もしかしたら、「私含め当事者は性という部分に執着しているのではないか?」と思ったのです。結局、女性として生きても、男性として生きても、「自分とは何なのかも何もわからず、そもそも人間なんて分かり合えないんじゃないか?」と思ったのです。しかし、諦めることができず、悩みを解決できる方法を探し求めていた時に出会ったのがnTechでした。
 nTechを通して、この体が男でもない、女でもない、ひとつだけがある世界、本当の自分に出会えたのです。その時初めて、自分を認めることができ、その喜びに涙が止まりませんでした。そしてその世界に出会った時に、これだったら私の夢である「みんなが認め合える社会を実現する」という夢が叶うと確信しました。だからLGBTとして生まれたこの境遇も道具にして、みんなが認め合える社会を創っていきたいと思いました。

記者:希望と絶望がすごく伝わって来ました。チャレンジし続ける荒牧さんの背景をもっと聞きたいですね。

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Q.それほどまでの挫折を味わっていながらも、「人間が分かり合う方法を知りたいと思い続けることができた」背景には、何があったのですか?

荒牧:私は気づいた頃から、「なぜ自分だけ体は女の子なのに、心は男の子なんだろう?」とずっと思って生きてきました。小さい頃は兄とよく一緒に遊んでいたのですが、成長していくにつれて次第に体型や両親の接し方が兄と違うようになってきて、「なんで同じ男の子なのに、こうも違うんだろう?」と疑問を持つようになりました。そのことを家族や友達に表現しても誰にも伝わらないし、誰も自分の言うことを信じてくれることはありませんでした。
 小学校高学年になると、今までは何も言われなかったのに、急に男の子と遊んでいたら冷やかされるようになったり、恋愛においても女の子を好きになった時に、レズビアンと言われたり、集団で無視されることもありました。「なんで誰もわかってくれないんだよ!!」という憤りもあり、「自分とはなんだろう?どうやったらみんなに認めてもらえるんだろう?」と思うようになりました。誰一人として受け入れてくれる人もいなくて、自分自身自分が分からないし、自分とは何なのか、何のために生きているのかと模索し、生きることが苦しくなり、睡眠薬を使って自殺を試みました。結局致死量にいたらず死ぬことすらもできませんでした。このとき、どうせ生きることも死ぬこともできないのであれば、自分の心を殺してしまえばいい、この先の生涯100%演技で女性として生きることを決断したんです。
 女性として生きるようになってから、生活や恋愛など表面上は生きやすくなったのですが、「人生この先何十年、ほんとうにこのままでいいのか?自分に嘘ついたままでいいのか?」と次第に心の叫びが常に常に湧き上がってくるようになり、自分の心との乖離にどんどん苦しくなっていったんです。

記者:計り知れないほどの絶望と葛藤があったんですね。誰にも認めてもらえず、男性で生きることも女性で生きることにも限界を感じるその苦しみがあったからこそ、すべての境界線をなくしたいという夢を持たれていることが納得できました。

Q.最後に、読者の方に向けて一言お願いします。

荒牧:今世の中には、周りの目が気になって自分を表現できない方、自分がやりたいことが分からず、なんで生きているのかわからない方、社会的な問題意識が高くいじめや差別、戦争を無くしたいと思っているけど解決策が見つからない方など、多くいると思います。
 そのような方に出会ってほしいのが、ひとつだけがある世界です。本当に解決したい、実現したいと思っている方ほど、その世界と出会えばすべてが解かります。難しいことではありません。すべてはひとつであることが論理とイメージで解り、ひとつだけがある世界から新しいチームプレイをしていきたいと思っています。一緒に尊厳社会を創っていきましょう!

記者:ひとつだけがある世界を本当に伝えていきたい、本気さがひしひしと伝わって来ました。
本日は、貴重なお話ありがとうございました。

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荒牧さんの活動、連絡については、こちらから↓↓

Facebook:

https://www.facebook.com/akira.aramaki.5

HP:

https://www.lgbt-connect.com/blog/

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【編集後記】
インタビューの記者を担当した不知と山口です。
一言では語り尽くせないほどの深い絶望と苦しみを味わい続けたからこそ、nTechと出会ったときの希望と感動がすごく伝わって来ました。その経験があったからこそ、今の大きな夢を描かれていることが分かり、まるで一本の映画を見ている様でした。
今後も荒牧さんのますますのご活躍を楽しみにしております。

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