
「すべてのLGBTが自分らしくはたらける社会の創造」を。株式会社JobRainbow代表“星賢人”さん

ゲイ(男性同性愛者)を自認し、いじめや差別・偏見を受け人生に絶望するも、大学ではじめてLGBTコミュニティに出会い、すべてのLGBTが自分らしくはたらける社会の創造を目指し活躍されている、株式会社JobRainbow(ジョブレインボー)代表取締役の星さんにお話を伺いました。
プロフィール
出身地:大阪府八尾市
活動地域:東京を中心に全国
経歴:1993年生まれ。大学院在学中の2016年1月に、株式会社JobRainbow(ジョブレインボー)を設立。
東京大学大学院情報学環卒。孫正義育英財団会員。
米国にて「Social Justice Leader」の10人に選出。
はたらくを虹色に。
Q.星さんは、今後どのような夢やビジョンをお持ちですか?
星さん(以下、星敬称略):最終的には、すべての人が自分らしく生きる社会を創ることをゴールにしています。
今はすべてのLGBTの人が自分らしく生きる社会を目指していて、まずはLGBTの就職。その後、教育、生活、ローン、介護など、ライフイベントに関しての困難な状況を寄り添って解決していくことを目指しています。
LGBTの社会課題って、他の課題とつながっていることがたくさんあると思うんですよね。だから、LGBTの方が生きやすい世の中だったら、その他の人も生きやすい世の中だと思うので、日本だけじゃなくて世界中でそんな社会を創っていきたいですね。
LGBTの方々の生きづらさを解決するだけではなく、実はみんな生きづらさを抱えていると思うし、それを言語化できない人も多いと思います。
家庭環境も様々なので、実はそれぞれがマイノリティと感じている部分は持っていると思うんですよ。
記者:たしかに、みんなどこかしら「人と違う」と感じる部分って持っていて、悩むこともありそうですよね。
Q.では、すべての人が自分らしく生きる社会を創るために、どんな目標計画を立てられていますか?
星:今、日本では毎年約70万人のLGBTの方が就職活動や転職活動しています。1/3の方が自分らしく生きられる就職を実現することを6年後までに達成することを意識して活動しています。
この就職における部分が今軌道に乗ってきているので、ちゃんと事業として固まったら、結婚、住宅、金融のWebサービスをここから2~3年でやりたいと思っています。
その上で、上場も目指しています。上場のタイミングで、海外展開を開始したくて、まずはアジア圏で就職領域から始める予定です。
なぜ就職領域かというと、世界中が全業界、全職種で採用課題を持っているんですよね。我々は業界偏らずに繋がれるわけじゃないですか。
世界で4億5千万人のLGBTがいます。『ゆりかごから墓場まで』安心して暮らしていける状態を向こう12年でやる計画です。
記者:とても具体的で盛大な目標計画ですね。愛の大きさが凄い!
Q.この計画に対して、現在どのような活動指針を持って、どのような活動をされていますか?
星:1年くらい前に、中学からずっと一緒だった親友の1人を事故で亡くしました。つい昨日までLINEしていたのに、人って簡単に死んじゃうんだなってすごくショックで。だけど、時間が経つごとに思い出す回数も減っていって、これはしょうがないことだと思うんですけど、亡くなってしまったらだんだんと忘れられてしまう。だから人間として大事なのは、今この瞬間を何のために生きるかだと思ったんです。人であればいつか死ぬ。短い人生を生きる中で、何のために時間を使いたいか、命を燃やしたいかと思ったときに、世界の人たちに向けて、社会を変えるために、自分の1分1秒を使いたいと決断したんです。人類のためになりたいと考えて、逆算して12年で事を成すと考えて今に至っています。
人類を救うとか助けるというよりは、当たり前のことを当たり前にするために、当たり前の事業をしっかりやっていきたい。すべての人が自分らしく生きたいなんて、超当たり前じゃないですか?
善意や支援ではなくて、求める人のために良質なサービスを提供するのは企業として当然で、当たり前のことをやっているだけなんです。
記者:ボランティアではなくビジネスとして取り組むことで、自らさらなる可能性を拡げられているのが伝わりますね。

Q.LGBTだけでなく、すべての人のためにと思ったきっかけは何ですか?
星:自分はゲイなので、ゲイとしての社会課題は感じて生きてきて、中学時代はいじめを受けてほとんど不登校になってました。なんとか運よく自分は這い上がって大学に入学し、ゲイの知り合いもできて、初めてLGBTサークルに入りました。色々なセクシュアルマイノリティの人と接するようになって、自分以外のセクシュアルについて全然分かっていなかったことに気付いたんです。トランスジェンダーの友達に対して「○○ちゃん」って呼んでいたら、実は君付けで呼んでほしかったって後から言われて、全然考えたこともなくて。同じセクシュアルマイノリティでも、知らずに傷つけていることがあるんだ、もっと知る必要があると感じたんです。
そして、これって自分のことをいじめていた人たちも同じじゃんって思ったんですよ。差別って悪意によって成り立つのではなく、構造によって成り立つんだって。
また、サークル内に夏場なのに長袖ばかり着ている人がいて、理由がリストカットの痕がひどいから腕を見せられないからだと知りました。他にも、いつもウィッグをつけている人が、普段は明るい人なのに実はストレスによる円形脱毛症だったとか。今までみることがなかった他の課題がLGBTサークルでは当たり前のようにあって、自傷行為やいじめ、鬱などの精神疾患、ストレス問題とか、一般的な社会課題じゃないですか?LGBTの人たちはハイリスク層なので、これらは社会課題の縮図だと感じました。
だから、LGBTサークルも無秩序にやるのではなく、まずは知ることから始めようってことで、勉強会とかするようにして、はじめはお互いがなんと呼ばれたいか確認するようなことから始めていきました。
傷つける意図が無かったとしても、「知らない」ことから傷つけてしまうこの社会構造の課題を解決したいですね。
記者:とても共感します。はじめから悪意のある人なんて、きっといないんですよね。
Q.自分の中の気付きで終わらせず、世の中のために動こうと思った背景は何ですか?
星:高校までは男性として過ごしていて、大学入るときに1年浪人してお金貯めて、性別適合手術も終えて入校されていたトランスジェンダーの人が大学にいました。その方は、家族から勘当され絶縁関係になり、生活費も学費も治療費も全部自分で稼いでいました。彼女にとってはきちんと正社員として就職して、自立することが夢だったんです。しかし、就職活動の時にエントリーシートに性別欄があり、戸籍の性別や名前を変えていないので、経歴詐称とかになったらどうしようと悩んで、思うように就職活動できなかった。カミングアウトして面接を受けた企業からは「あなたのような人はいないので、他にいってください」と排除されて、そこで自分は相談にのってあげることしかできず、無力だなってすごく感じましたね。
他にもLGBTの人は就職活動に前向きになれない人たちが多く、本来は活躍できる人たちが活躍できないって日本社会においてもすごいリスクだし社会損失じゃないですか。
ただ、しっかりと対応してくれる企業もあるって知って、そう言った企業の情報を発信することで勇気や希望を持って就職活動できる人たちを増やしたいと思って起業したんです。
記者:すごい行動力ですね!その、誰かのためになりたいっていう姿勢は、もともと持たれていたのですか?
星:自分は在日系3世なんですが、祖父母や両親の時代は在日というだけで企業に就職することが難しかったので、自分で起業したり資格を持って専門職になる人が多かったんですよね。そして父親も人権活動をしたり、社会活動をする大人が多い環境だったため、自分もいつか自分で事を起こして人のため、社会のために還元したいなっていうのは子どもの頃から思っていました。
自分は両方の国に帰属意識があり、両方のアイデンティティを大切にしています。嫌韓論、反日感情の間で両方の立場の気持ちが分かるんですよね。
記者:自分の観点に固定せず、相手の立場になって考えることの大切さに気付かされます。
星さん、本日は貴重なお時間本当にありがとうございました!
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星賢人さんの活動、連絡については、こちらから。

【編集後記】
記者を担当した荒牧(写真中央左)、黒田(写真右)、福井(写真左)です。
25歳という若さで世界を見据えて活躍される星さん。
真剣な眼差しで理念を語られる姿と、無邪気に笑う少年のような笑顔。
起業家としても人間としても、とても魅力溢れる素敵なお方でした。
星さんの益々のご活躍とご健勝をお祈りいたします。