『日本独立』〜『プライド 運命の瞬間』公開から20年、もう一つの物語が紡がれる〜(後編)

>>前編からの続き

RN:『日本独立』を描くきっかけにもなった『プライド 運命の瞬間』はどのように生まれたのでしょう?

伊藤:『プライド 運命の瞬間』の田中壽一プロデューサーから、東京裁判のことを映画化する企画があるのだけれどどうか?とのお話をいただきました。当初はパール判事を主人公にした企画でした。ご存知のとおりパール判事は、11人の裁判官のうち唯一「被告人全員無罪」という主張をした人物です。私は東京裁判という題材には興味を持ちましたが、主人公はパール判事ではないと思ったのです。

東京裁判という題材を扱うには「肉を切らして骨を断つ」くらいの覚悟で挑まなければなりません。世間の批判は相当あびるだろうし、単純ではない。とにかく自分たちが引き受けた以上は、日本人を主人公にしないといけないという使命感がありました。
そこから改めて東京裁判の資料を読み、東條英機や彼を目の敵にしていた人たちのことも調べ、やはり主人公は東條英機にすべきだと思いました。

その理由は、戦争の罪状はあるにしても、私が思うに東京裁判の一番の狙いは戦前の日本を全否定、つまり日本人の倫理観・美意識を全否定することだったのだと。
そして全否定をする根拠には非近代性をもってきて、さらに日本人の残虐性として南京事件を特に強調させて裁く、ということをしたのです。それもきっちり映画では描こうという決意がありました。アメリカの一番の目的は、戦争で一度日本を負かしただけではなく、この裁判で日本を二度も三度も負かすことでした。その状況下で最後の弁論の口述証書のなかで戦おうとしたのが東條英機であったことを表現したかったのです。

一部の関係者からは「南京事件を入れない方がいい」との意見もありましたが、とんでもない。南京事件を入れない東京裁判なんてありえない。逆に東京裁判の南京事件の議事録を読んでいると目撃証言がほとんどありません。そのほとんどが風聞というのが事実でした。その事実を世に届けたい思いがありました。

RN:今回の映画のなかで「生き残った日本人と死者との会話を断ち、その絆を切り捨てようとする」というセリフが印象的でした。この映画を観た日本人や世界の人に何を1番感じてもらいたいですか?

伊藤:ひとつは、主人公の白洲次郎の言葉です。吉田茂がマッカーサーとの非公式の会談で「日本に軍事力を持たせないなら、アメリカが日本を守ってくれ」と交渉する。吉田にしてみれば、一日も早く占領を終えアメリカが撤退した後に(憲法を)を変えればいいのだと。それに対して、白洲次郎は帰りの車中で「それでは永久平和じゃなくて、“永久従属だ”」と憤慨する。その言葉を伝えたかった。


そして一番伝えたかったのが、今言ってくださった「戦艦大和ノ最期」の著者吉田満との会話のなかで小林秀雄に言わせたセリフです。アメリカは自由な憲法制定を謳いながら一方では検閲によって出版を差し止める。その矛盾を「死者と生き残った者たちの絆を絶つ」という言葉にこめました。
映画を観てくださった方にこのメッセージを受け取っていただけると嬉しいです。

RN:今後日本がどのように変わっていくことを考えていらっしゃいますか?

伊藤:現実には難しいかもしれませんが、アメリカの傘を外れて改めて日本が一つの独立国家としての備えをして、中国・韓国や東アジアとの本当の意味の平和条約・平和同盟というのを実現させていくべきだと考えています。

RN:私たち一人一人が今後の日本について真剣に考えていく時がきていると思います。

RN:伊藤俊也監督の今後の夢について教えてください。

伊藤:詳しい内容はお話できませんが、既に書き終えている脚本が数本あり、それぞれの作品の映画化に向けて、プロデューサーと“策”を練っているところです。

RN:新たしい作品を生み出すきっかけは何がありましたか?

伊藤:日常の出来事や古典と呼ばれる文学作品などから感じ取ったあらゆることがテーマとなり、映画作りの意欲へと繋がります。長年の映画監督としての経験から身体がそのように反応してしまうのでしょうね。

RN:新しい作品、とても楽しみです。活動そのものが伊藤監督の生きざまのように感じました。

最後にリライズニュースの読者の方にメッセージをお願いします。

伊藤:この度、取材を受けたことを大変嬉しく思います。リライズ・ニュースの構想を伺い、今後のご発展を大いに期待しております。

是非、この映画『日本独立』を多くの方に観ていただけたらと思います。
この歴史的事実を描いた作品を、素晴らしいキャスティングで作ることができました。観てくださった方からは「新しい歴史の事実を見られた」という感想もいただいております。
出演者の浅野忠信さん、宮沢りえさんも「目から鱗が落ちました」と言ってくださいました。若い人たちにとっても「ああ、当時はこうだったのか」と思いを共感していただけたら嬉しいです。

 

RN:伊藤監督の当時、日本に何がおこっていたのか事実を伝える決断・思いを感じました。この度は貴重なお話、ありがとうございました。


編集後記

今回インタビューに伺った喜多島、一龍飛です。
初めて映画「プライド運命の瞬間」を観たときスゴイことを知ってしまったと衝撃を覚えました。数年後の今、映画「日本独立」を劇場で観て日本国憲法の背景にこんな出来事があったのかとまた衝撃を覚えました。この2作品を世に生み出した伊藤俊也監督になんとしても直接お話を伺ってみたいと思ったところから今回のインタビューが実現しました。日本の客観的事実を知り自らの人生と交差させどのように未来を創っていくのか。今回のインタビューが多くの人の福音になることを願っています。伊藤監督貴重なお話をありがとうございました。
また、多くの方のご協力のもと今回の記事まで完成しました。ご協力いただいた皆様、ありがとうございました。


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〜日本を代表する演技派俳優の熱演バトル〜

浅野忠信が白洲次郎を、宮沢りえがその妻正子を、そして小林薫が昭和史に残る政治家吉田茂を演じたことで注目を集める本作。 国務大臣・松本烝治を演じる柄本明、内閣総理大臣・幣原喜重郎役の石橋蓮司、元内閣総理大臣・近衛文麿役の松重豊、戦艦大和からの生還者・吉田満役の渡辺大、その他伊武雅刀、佐野史郎、大鶴義丹、青木崇高、浅田美代子、梅宮万紗子、野間口徹といった錚々たる俳優陣が、重厚な人間ドラマを繰り広げる。ナレーションを務めるのは奥田瑛二。

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Profile

1937年生まれ。『女囚701号さそり』(72)で監督デビュー。大ヒットとなってシリーズを生み、『女囚さそり 第41雑居房』(72)、『女囚さそり けもの部屋』(73)を監督する。その後、『誘拐報道』(82)を監督し、モントリオール世界映画祭審査員賞を受賞、国内外で高く評価される。認知症を患う老人を抱えた家族のドラマを描いた『花いちもんめ。』(85)は、日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞。東條英機を主役に東京裁判の全貌を描いた『プライド 運命の瞬間(とき)』(98)は賛否両論渦巻く社会的話題作となった。その他の監督作品に、『犬神の悪霊』(77)、『白蛇抄』(83)、『花園の迷宮』(88)、『風の又三郎 ガラスのマント』(89)、アニメーション映画『ルパン三世 くたばれ!ノストラダムス』(95:総監督)、日本映画監督協会70周年記念映画『映画監督って何だ!』(06)、『ロストクライム-閃光-』(10)、『始まりも終わりもない』(13)など。

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