問題提起をすることで寛容性のある社会へ 「美術手帖」 ビジネス・ソリューション プロデューサー 田尾圭一郎さん

最近、アート×ビジネスをテーマに街づくりが行われることが増えています。自治体や企業と協力し、アートプロジェクトの企画・運営などに携わっている田尾圭一郎さんのお話を伺いました。

プロフィール
出身地:
東京
活動地域:東京
経歴:1984年東京生まれ。国際基督教大学を2006年に卒業後、美術出版社「美術手帖」ユニットにて活動。 
現在の職業および活動:美術出版社「美術手帖」ユニット ビジネス・ソリューションにて、アートプロジェクトの企画など
座右の銘:ルールは壊すためにある

「言語を超えていけるのがアート」

Q.どのような夢やビジョンをお持ちですか?

田尾圭一郎さん(以下、田尾 敬称略) アートで社会課題を提起し、実装させることで世の中をより良くしたい、という夢を持っています。社会問題を提起することで、20年後、30年後、40年後の日本、世界に貢献できるプロジェクトをしていきたいです。今だったら2020年東京オリンピック・パラリンピック、2025年には大阪万博など世界的なイベントがあるで、自分が何をできるのか考えています。
アートは抽象度が高く、具体的な言語をあまり用いないので、「こういう問題があるよね」という投げかけの答えを、鑑賞者それぞれが探すことができます。身近な相手や地球、気候なども考える幅が広がり、状況に応じて柔軟に行動できる寛容性が、日本に高まることを祈っています。

Q.それを具現化するために、どんな目標や計画を立てていますか?

田尾 5ヶ年ぐらいの計画を立てて、アクションを起こすこと、実行することを大事に取り組んでいます。
例えば大阪万博は、日本が主体として発表する場に世界中から人が訪れる、すごいチャンスだと思っています。
1970年大阪万博で展示された岡本太郎の《太陽の塔》は、50年経った現在でも影響力があります。今、50年後にどうなっていたいのか考えるときでもあると思います。現在流行り言葉のように使われている革新的な言葉は、実はアートの世界で十何年も前に提起されていた・・・というのは少なくありません。自分が今、20年後に使われる単語を発明できているかと思うとまだまだなので、先人たちに追いつきたいですね。

Q.その目標や計画に対して、現在どのような活動指針を持って、どのような活動をしていますか?

田尾 企業や自治体などの団体とアートプロジェクトを進行するのが、基本的な活動です。アーティストは問題提起を指針とし、ビジネスマンは問題解決を目的としているので、ベクトルの違う二つの方向性をまとめるのが難しいですね。
その中で大事にしているのは、どうしてもアートプロジェクトで展示会を無事に成功させることやイベントを上手に運営する、といった具体的なゴールに目がいきやすいですが、そうではなくて、アートとして何かしら問題提起することをゴールにしていこうと、意識しています。

Q.そもそも、その夢やビジョンを持ったきっかけは何ですか?そこには、どのような発見や出会いがあったのですか?

田尾 昔から自分に社会課題などへの関心があったのか?と聞かれたら無かったですね。しかし、今の仕事に就き、アートに関わり、プロジェクトをつくっていく中で、ただイベントだけをやっているのではダメだなと思いました。そう思ったきっかけとしては、いろいろなことが重なってはいますが、子どもが生まれたことは大きかったと思います。
この子が大きくなった20年後、30年後の社会はどうなっているのか?など未来の社会問題をより具体的に気にするようにはなりました。
お腹が空いたとか、眠たいだとか、まだ言葉も話せない子とどうやってコミュニケーションをとっていくのか?と考え実践することが、想像力や寛容性のトレーニングになっています。
例えば、「世界平和にしたい」と言ったら多くの日本人は同意はしてくれると思いますが、「では実際にどうやって?」となると答えは人によって異なり、実践していく人は少なくなります。アクティビスト(実践する人)を増やすためにはより具体的に、どう行動していくのかを考えるきっかけが必要なので、そこをアートプロジェクトが担っていければ、と思っています。

Q.より具体的に社会問題を考えるようになった背景には、何があったのですか?

田尾 もともと大学の時にリベラルアーツを学んでいたのがありました。クリティカルシンキングという考え方で、いかに今ある学問や知恵を疑うか、というのが考え方の出発です。
ある「当たり前」は何故なのか?もともと1人ひとりが持っている「当たり前」の内容や理由は違います。同じ国の人でも考え方の違いもありますし、他の異国に行けば、空間認識や歴史認識がそもそも全然異なります。その違いをどう超えていけるか。アートの挑戦でもあると思いますね。

記者 ニュースを見ていると色々なことがありますが、世の中で起こっていることが自分ごとになっていくことに、アートがとても重要に感じました。貴重なお話、ありがとうございます!

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【編集後記】
今回、インタビューを担当した清水と播磨です。

本質的な話からアートが社会における役割など、面白い話がたくさんありました。
またこれから地域活性や街づくりが行われる中でアートが大きな役割を果たしていくことを感じました。
これからの活動も応援しています!
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