ATUホールディングス株式会社 “岩崎 龍太郎”さん
「健常者が障害をつくっている」そう断言する背景には「人を殺す経営」に対する涙、そして「人が生きる経営」に対する熱い想いがありました。障害者雇用を推進し、餓死者ゼロの世界を目指す「岩崎 龍太郎さん」からお話を伺いました。
岩崎さんプロフィール
出身地:栃木県
活動地域:福岡県
経歴:法政大学大学院政策創造研究科博士満期終了退学。警備会社で長年勤務の後、警備業における日本唯一の重度障害者多数雇用事業所、ATUホールディングスを運営。公益社団法人全国重度障害者雇用事業所協会 福岡支部長を務める。
現在の職業および活動:警備会社ATUホールディングスの代表取締役。元・法政大学大学院教授「坂本光司」氏から学んだ「人を大切にする経営」を実践している。
座右の銘:「文質彬彬として然る後君子なり」孔子
「餓死者がいない世界を創りたい」
Q1.どんな心のあり方や認識の変化が今のご活躍に繋がっていると思われますか?
岩崎 龍太郎さん(以下、岩崎) 大切にすべきことを大切にしなくなった時におかしなことが起こります。本来大切にすべきものは、自分であり、そしてその人に関わる全ての人です。
(ATUホールディングス株式会社の)経営理念に書かれている通り、会社の本質目的は社員の幸福のためにあります。ですので、会社は万人が働ける場にします。万人が働ける場にすることによって、世界で考えたら命が救える可能性が大いにあるのです。本来、人がなすべき当たり前のことをするのが、あるべきことだと思っています。
記者 当たり前のことを当たり前にするということが、意外と一番難しいことかもしれません。誰かにとって当たり前でも、それ以外の誰かにとって当たり前でないこともあります。
岩崎 「自然か不自然か、正しいか正しくないか。」という軸でみれば、長く続かない、景気に左右されるようなことをすれば、自然と波が生まれます。その波に逆らって「頑張って業績を伸ばしていこう。」「ヒット商品を出し続けよう。」というのは不自然です。
例えば日本の労働市場は海外のように、人を必要なだけ投入して終わったらレイオフ(※)して労働市場に戻すという環境はありません。その環境が無い状態でレイオフするということ自体、正しくありません。
記者 アメリカだと普通に解雇が当たり前ですね。
岩崎 レイオフされて次の職につくたびに給料が上がるという市場もあります。日本にはその市場が無いのにレイオフを繰り返すこと自体が正しくありません。
記者 なるほど、ありがとうございます。
(※)レイオフ・・・不況による操業短縮などの際に、企業が労働者を一時的に解雇すること。一時解雇。
Q2.これからどんどん人工知能(AI)が活躍する時代になってきます。AIが活躍する時代に、人間にはどのようなことが必要になってくると思われますか?
岩崎 AIは人を幸せにするための道具であることを忘れないでほしいです。
どんなに良い商品だとしても、世に広まらない商品があります。反対に、機能はイマイチだけれど、売っている人がよい商品もあります。どちらが売れるかというと後者です。何に対して価値が付いているかというと、売っているその社員に価値がついているのです。
社員が「生きる」、もっとパフォーマンスを発揮していくことが今後求められます。人が100%「生きる」ことが大事ですね。「活かす」というと、「してやっている」という感じがするので「生きる」です。世の中の人たちが差別も区別もなく生きれば、餓死者はいなくなります。
あと、自分の力の活かし方を教わっていない人が多すぎます。
私は勉強する意味を全く理解できなかったので、頑なに勉強しませんでした。だから高校を卒業するとき、割り算すらできませんでした(笑)
初等教育のとき「何のために仕事するの?」「何のために勉強するの?」と先生に質問したことがあります。そのとき「人の幸せのためにするんだよ。」という回答だったら、勉強したかもしれません。でもそこで言われた言葉が「いい学校に入るため。」でした。「それって何?」と思いましたね。だから勉強しませんでした。
Q3.これから、どのような美しい時代を創っていきたいですか?
岩崎 1日も早く、餓死者が無い世の中にしたいです。
記者 障害者と健常者の差がなくなっていくことで餓死者がいなくなるということでしょうか?
岩崎 最も貧しい国家はその人たちの社会保障ができるはずがありません。彼らは餓死していきます。もし健常者と同じような仕事ができるのであれば、戦力になりますから、死なずにすむんです。障害者はやり方が悪いだけであって、ゆっくり時間をかけてやればできます。
記者 健常者側が相手のことを知らない、関心を持てない現状なんですね。
岩崎 障害者、そして国家間もそうですが、知る努力をしていけば平和な世の中ができます。それが私たちが行っている事業に課されていることだと思っています。
記者 すごいですね!岩崎さんの関心の範囲は、会社の中に閉じていないんですね。人間というものを深く理解しようとされている姿勢を感じました。
岩崎 自分の考え、自分の国が当たり前だと思うこと、それが危険です。
Q4.組織経営について質問です。「ティール組織」という本が日本でブームになっています。岩崎さんが思う理想の組織はどのような組織ですか?
岩崎 大家族主義でいきたいですね。
例えば、誰かの体調が悪く、なかなか出社しなくなったとします。大企業の場合、「産業医さん任せた。」とか「保健士さん任せた。」という話になります。同僚では、仲の良い子であれば行くけれど、仲が良くなかったら行かないです。これ、家族で考えたらおかしいでしょう。
基本、私たちの会社では(出社しなくなった社員の所へ)行くようになっています。それは家族だと思えるからできることです。
家族というのは、財布が一緒なのです。ティール組織でいう、全体性を持った個人をつくろうとするときには財布が一緒じゃないとダメなのです。
企業の在り方というのは「家」から生まれています。それをベースにつくっているから強かったのです。ところが1945年以降、コストや効率重視の会社組織の経営になってしまっておかしくなりました。
人がモノのように使われてくるようになったのです。しかし、人はモノではありません。私は「人が人として生きる。」という当たり前のことを当たり前にやっていきたいです。
記者 やはり、企業経営においても関係性、人と人との繋がりが大事なのですね。お話を伺っていて、まさにこれからの美しい時代を創っていく方だと思いました!
素晴らしいお話をしていただき、ありがとうございました!
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【編集後記】
インタビューの記者を担当した吉田&新原&石橋です。
岩崎さんは広い視野から会社経営をされていることが伺えました。笑いあり、ときに涙ありの素晴らしいお話でした。
今後のご活躍を楽しみにしています。