「次の世代に笑顔の橋渡しをしたい」 わたしのみらい法律事務所 離婚弁護士 渡邊未来子さん

「子どもに笑顔で育ってもらうことが私の使命」。日本初の養育費保証事業の支援活動をおこない、ご自身の経験を生かしながら人の力となる離婚弁護士、渡邊未来子さんにお話を伺いました。

<渡邊未来子さんプロフィール>

出身地:東京

活動地域:東京

経歴:早稲田大学法学部卒。2000年10月に弁護士登録。夫婦、親子案件の解決に力を入れており、弁護士登録後にチャイルドカウンセラー、家族療法カウンセラー、保育士等の資格を取得。

2019年1月、共通の課題に取り組める異業種とのシェアオフィスで、わたしのみらい法律事務所を開設。相談会やセミナーを開催して養育費保証制度の普及に務めるほか、離婚問題解決協議会、こども支援ネットワーク埼玉等への参加を通じて、ひとり親家庭の支援活動を行っている。

職業:弁護士

座右の銘:神様は乗り越えられない試練は与えない

子どもに笑顔で育ってもらうことが私の使命

記者 渡邊さんの夢を聞かせて下さい。

渡邊未来子さん(以下、敬称略) 子どもがすごく好きなので、子どもに笑顔でいてもらいたいです。子どもが希望をもって、のびのびと笑顔でやりたいことをやっていけて、その子どもが大人になって良い社会を創っていくと、いい連鎖になっていくと思うので、子どもに笑顔で育ってもらうことが私の使命です。次の世代に笑顔の橋渡しをしたいと思ってます。

そのために、お父さんやお母さんが、お子さんを大事にできる余裕をもってほしいと思っています。お子さんはとても敏感で、お父さん、お母さんの状態を察知するんですよ。笑顔になれないまま大人になってしまうと、笑顔を次の世代に橋渡しして繋げるのも難しくなってしまいます。これは実はデリケートな橋渡しだと思っているので、それがきちっとできるようになることが私の一貫した想いで、それを始めたばかりというとこです。

記者 素晴らしいですね!

渡邊 私も一つの家庭の母親として、そういうものをつくっていこうと思ってたのですが、今思うと、仕事としてやるほうに導かれていたのかと思うほど、この立場で良かったなと思っています。人数的には多くの人を助けられるかもしれないし、結果として、社会の笑顔の数を増やせるかもしれないと思っています。自分が家庭をもたないことがほぼ確定して、自分自身が覚悟をした時から、それをより強く思うようになりました。お母さんにならないからといって、何も残さないのは嫌だと思い、その分何かしようと思って。それじゃあ、これを思いっきりやっちゃえばいいね、と。幸い、機会にも恵まれて、今の仕事をするようになりました。

違う職種の5人チームで生かしあう

記者 その夢を実現するために、どのような目標・計画を立てていますか?

渡邊 今はひとまず、ちゃんと自己完結する形でビジネスをしようと思っています。私一人の力でできることは限られていて、同じ仕事を、どちらかというと若い人に興味を持ってやってもらいたいと思っています。このビジネスを聞いた若い人たちに、こんなことをやっている人がいるんだと気づいてもらって、関心をもって部分的にでも取り入れてもらえたら有りがたいですね。
そのために、継続性を持って活動して、まず私自身が事業を安定させることがここ3年くらいの目標です。同じ志を持っている人間と組んでいるので、チームとして軌道に乗せることも、ここ3年だと思っています。

記者 どのようなチームなのですか?

渡邊 調査会社、カウンセラー、不動産、司法書士の方と5人で組んでいます。たとえば、同じ弁護士や、同じ士業の人たちで組んでいることはよくありますが、私たちは違うことができることを生かしてやっていて、それがいいことだと思っています。オフィスのちょっとした雑談でもお互い勉強になって刺激的です。ですので、このチームのスタイルと自分自身の事業をうまく確立することが、この3年の目標ですね。それができれば、自信を持ってそういうやり方を広く発信できると思います。

リアルタイムで対応できるように、常にスマホを持ち歩いている

記者 どんな行動指針で、日々どのような活動をされていますか?

渡邊 私は基本スマホ弁護士なんですよね。パソコンよりもスマホを持ち歩いているんです。お客様のご連絡やメッセンジャー、メールやSMSなど、すごく多いんですよね。リアルタイムでとにかく入れておいてもらっています。すぐ出られないこともありますが、連絡はつながりやすい。家庭内のことは9ー17時に起きるとは限らなくて、むしろ緊急のことはそれ以外の時間で起きるんですよ。そういうことはできるだけリアルタイムで対応できるようにしたいと思ってます。聞くことにためらってほしくないんです。その場その場で解決した方が、相手にとっても、自分にとっても良いので。

二つ目は、苦手だけど頑張っていることとして、 自分のやっていることを発信するようにしています。養育費の事業で一緒に頑張っている仲間も、私が発信するかしないかで変わるかもしれないので。たとえば「養育費のイベントで話しました」とFacebookで書いて、皆にもシェアをお願いしたりしてます。有りがたいことに、皆さんから優しい励ましのコメントを頂いています。

三つ目は、まず先にお客様の話を聞くようにしています。子どもと家族の問題に特化したカウンセラーの資格を取ったのですが、それが傾聴を大事にしているんです。先に話したいだけ話してもらって、スイッチが入ったら、そのまま話し切ってもらいます。私は、お客様が話し終わってホッとなった時に、話すようにしてます。それができると、そのあとは時間がかからなかったり、ストレスなくやりとりできるので、そうしてます。
離婚事件をやっていると、話を聞くの大変でしょう、とよく言われますが、聞くのは苦痛じゃないんです。もともと、両親のお互いへの不満をずっと聞いていたので、そういう話にも耳が閉じないで済むんです。何より、お客様の「ありがとう」の言葉ですべてが吹っ飛びます!

記者 養育費の保証事業というのは、具体的にどのようなものですか?

渡邊 日本初の仕組みで母親支援に取り組んでいます。養育費には支払い義務がありますが、実際には支払われないことが多くあります。話し合いをしたくない、請求したくないというケースや、旦那さんが怖いというケースなど。養育費について取り決めをしていないケースが半分あって、そのさらに半分が約束を守りません。
意図的に支払わないケースでも、様々な理由で支払いが滞るケースでも、子どもの養育に問題が起きないように保証する仕組みを作りました。保証会社が最大12か月分立て替えてくれて、支払義務者の方に支払い請求をします。書面で額を合意し、二人の署名と印鑑があれば保証されます。

両親の不仲の経験を生かして離婚弁護士へ

記者 弁護士になろうと思ったのは、どんなきっかけからですか?

渡邊 父親が検察官で、法律家の業界に私を入れたかったんです。私自身も、弁護士は、色々なトラブルを解決して、人や社会の役に立っていることを感じやすいし、色々な世界も見られるので、いい仕事だと思っていました。あと、この仕事だったら学費を出してもらえると思ったんです。小さい頃から私の両親は不仲で、私は両親の不仲を取り持っていました。大学に行く学費が欲しいと思ったときに、父親が勧める仕事以外で、学費を払ってもらえる自信がなかったんです。少なくとも弁護士の仕事に就いていれば、母親も困らないと思いましたし、最悪自分に手に職があれば、自分を助けられると思ったのもあります。
最初はチャレンジしたくて他の分野もやったんですけど、最終的に今の離婚弁護士に落ち着きました。

記者 そうだったのですね。

渡邊 もう少し話すと、自分が生まれ育った家庭にどこかひっかかりがあって、自己肯定感もなんとなく薄かったんです。子どものとき、私の前で母親が父親のことを批判するとか、泣くとか、ランドセルも持ちだせないまま家から私を連れ出すということがあって、もし両親が私のことを優先していたら、そんなことしないはずと思ったんです。子どもからみると、「私にそういうことをして平気なのね」と思って。
今思えば、親は悪気はなく、いっぱいいっぱいで余裕がなかっただけなのですが、「私が悪いんだ」と無意識に思っていたんです。でも、そう思い続けるのは辛かったので、ノーマルな家庭ではないからこうなるんだと。

それで、こういう家庭をつくれば、こういう子どもが育つはずだということを、自分で証明というか、確認したかったんでしょうね。2回結婚してるんですが、その自分の想いに気をとられて、相手にも理想の家庭というものがあったと思うんですけど、それを思いやってあげる余裕がなかったなと思いますね。だから結婚生活はあまりうまくいかなくて。
でも仕事であれば、一線を引いた形で、自分の経験を生かせる方向にいけるので、そっちだなと思って。2回目の離婚をきっかけに、色々な囚われから解放されたと思いますね。

助けるべきお客様がいたことで、一番しんどい時期を乗り越えられた

記者 渡辺さんが今のお仕事をする決断をした背景には、どんな想いがあったのですか?

渡邊 自分自身が一番しんどかったのは、離婚のことで悩んでいたときで。その時に、助けるべきお客様がいなかったら、乗り越えられなかったと思います。同じように苦しんでいる人が私を待っていると思うと、助けなきゃと。その時ハードなお客様がいたのですが、事務所に行ってうまくいったこともあって。私が必要とされている、私がいるべき場所があると。
お客様に助けられて、この仕事に導かれているような気がしました。こういうチャンスと喜びを与えてもらっているのに、自分のプライベートがしんどいだけで休んじゃだめだと思いました。今の仕事は、自分の辛い経験も生かせる仕事で、これ以外の仕事は今は考えられないです。

記者
 ご自身が一番辛かったときに、人を助けることでそのような気づきがあって、今のお仕事をしようと決断されたのですね。感動しました。本日は、貴重なお話、ありがとうございました!


渡邊さんの活動情報は、こちらから↓↓

◇わたしのみらい法律事務所 
 https://www.sosapo.org/lp/wm_law/

【編集後記】
今回、インタビューの記者を担当した陣内、福井、口野です。辛い経験を乗り越えて、子どもの笑顔を増やすお仕事を使命として生きている真摯な想いに、とても感動しました。また、お客様の話をとことん聞くという姿勢は、まさに、人間本来の可能性と尊厳に確信を抱き、利他の心で人と接する方だ感じました。日本初の養育費保証の支援事業についても、困っている方にはぜひ知ってほしいと思います。渡邊さんのこれからのご活躍、応援しています!

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