働きたくても働けない人に働ける環境を。就労継続支援A型事業所 – irodori代表 小島さん

京都市で最もたくさんの人が面接に訪れる就労継続支援A型事業所– irodoriを運営されている小島さんにお話しをお伺いしました。

プロフィール
出身地:京都府
経歴:不動産営業、成年後見事業、市役所での相談事業等を経験。現在は様々な就労困難者を雇用し、ECサイト運営、グラフィックデザイン等の業務を行う就労継続支援A型事業所「irodori」を運営。現在、約40名の社員を雇用(内障害者34名)している。
座右の銘:捲土重来

働きたくても働けない人に働ける環境を

Q:どのような夢やビジョンをお持ちですか?

小島 働きたくても働けない人に働ける環境を作っていきたい。それをビジョン、思いとして掲げています。働きたいけど、障害があることを面接でオープンにできない人。例えば解離性障害(多重人格)とかてんかんの人は本人たちが正直に「私こういう病気なんです」と言ってしまうと採用から遠ざかってしまうので、クローズにして言わずに入るけれども、結局クローズで行くとずっと嘘をつき続けてるみたいでつじつまが合わなかったり、人とのコミュニケーションが難しくなってやめてしまう。オープンにするとなかなか採用に至らない。
 働きたい気持ちはあるのに病気や障害だけで避けられてしまう、そういった人たちに働ける環境を作っていきたいなというのが私の思い、向かってる方向性です。
 ただ、福祉っぽくないよね、とはよく言われます。

記者 確かに、福祉の現場で働いている人という雰囲気はしないですね。

小島 福祉の事業ですが今も自分は福祉をやっていると思っていないです。

記者 ここで働かれている福祉の専門の方達は戸惑う方もおられるのではないでしょうか?

小島 最初来た時はびっくりされますね。こんなやり方があるのか、とか。
ただネットショップとデザインの仕事やっているだけ、一緒に働いている人が障害があるというだけの話なので。
 周りの人と話していると、「障害のある方を支援していてすごいですね」と言われるんですが、普通にできることをやっているという感覚です。

記者 irodoriさんのサイトを見させて頂くと雑貨屋さんのページが出てくるので、どのようなことをやられているのかなと思いましたが、そういうことだったんですね。

(上記irodoriさんの楽天のページ https://www.rakuten.ne.jp/gold/mirise/

小島 実際に”運営しているのはこういう人たちなんです。”と掲載することもできますが、楽天のページには障害者がやっていますと載せていないです。なので消費者からは分からないし、障害があるという特徴なだけで一緒にネットショップの仕事をしています。

記者 そこに小島さん自身の想いがあふれてる感じがしますね。

小島 そうですね。履歴書は見ますがあまり重視しないし、障害の有無もそれほど気にしない。その人が今からどうしていきたいのか、どんな風になりたいのかというのを重視する採用にしています。
もしかすると自分がそうして欲しかったというものを投影しているのかもしれないです。こういう会社に入りたかったとかこういう風に働きたかったとか、10年前の自分がしんどかった時にこういう会社があったらいいなというのをやっているのかもしれません。

障害者の働きたいニーズを満たしていくこと

記者 今後の目標や計画はどのように描かれていますか?

小島 今の34名体制を40名に持っていくことです。20名の店舗が1つ、もう1つの所に10名の店舗があります。それをまず40名体制に持って行きたいなと思っています。
 その後、今やっている就労継続支援A型という事業に加えて、相談事業もやろうかと考えています。相談事業も京都でやってるところが少ないんです。ニーズはあるんだけどほとんど採算が取れないとかで多くのところがやらない。だけど、誰もやらないからやる。
 うちには他の事業所では断られていた人や、行ってたとしても2ヶ月続かなかった、そういう人たちばかりなんですが、そういう人たちがここで1年働けるようになりました。ここで採用しなかったらこの人たちどこで働くの?というような人たちをどんどん輝かせていきたい。そういった形で事業展開を考えています。
 今、年間で130人の方が面接に来ますが、京都で一番面接に来る事業所だ、とハローワークの人が言っていました。
それぐらいパソコンでやっていくということが今の20代のやりたいことだと思うし、時代とともに障害者の仕事も変わると思うので時代にあった新しい仕事を作っていきたい。irodoriだけではできないことがあるから他の企業さんとも事業展開をしていきたいと思っています。
 私自身がこれをやりたいというのではなく、集まっている30人の中にやりたいことがある。それを一個一個実現していくのが私の仕事です。

記者 小島さんの人柄がいいからこその今があるんですね。

小島 大事にしているものの中で、全員で読んでいるエッセイがあるんです。 「一人一秒のプレゼント」(『ありがとうを伝えたい 第二集』芸術生活社)というものなんですが、それに共感してくれるかどうかも選ぶ一つの尺度ではあります。
 仕事ができる人でも、人間性が大事。スキルよりも、ヒューマンスキルを優先しています。それが今のirodoriの、優しさというか会社の雰囲気にあうか、というところですね。

負債を抱え、自殺しようと思った新卒時代

記者 小島さんは元々福祉系のお仕事をされていたんですか?

小島 全く関係のない不動産です。新卒で入った企業は不動産営業で「マンション買いませんか」と投資用のマンションのデザイナーズマンションをテレアポして売ってました。

記者 それがどうして福祉をやろうという風に変わったんですか?

小島 その企業がブラック企業というかブラック上司がいて。自分のキャッシュカードとかクレジットカードを全部預かっていただいて使われて、新卒後すぐに数百万円の借金を背負うようになって。結果的にその企業を辞めてしまったんです。
 ただ負債は全部こっちに残っている。名義も全部自分になっているので、弁護士に相談しても「上司が使ったと言う立証ができない」と訴訟しても勝てませんと言われた。
 3件ぐらい弁護士行ったんですけど全部ダメで。貸した自分が全部悪いんですけど 、違う仕事にもいくんですが、だんだんうまくいかなくなって。
もう自殺しようと思って、和歌山県の三段壁に行きました。

記者 三段壁といえば白浜の近くの景色がきれいなところですよね?

小島 自殺の名所って富士の樹海とか東尋坊が有名なんですけど、僕はちょっと変わってるところをいくんです。死に場所もちょっと違うところで、 東尋坊よりはちょっとマイナーな所を選びました。
 最後にいのちの電話という崖の上にある電話ボックスを超えて、「さあ行こう、もう死のう」と思った時に何か浮かんだものが母親の顔であったり、自分のことを励ましてくれた人だった。死にに行こうと思ったんですけど、「なんでこんな数百万だけで自分が死ななあかんねんって」いうのもあって、踏みとどまりました。
 でも、会社辞めたことも上司に騙されたことも借金数百万背負ったことも親にも、兄弟にも、友達にも言えなかった。「お金貸して」も言えなかったし、自分でどうしたらいいかもわからなかった。民事再生とか法的対応の知識もなくって自分で助けてっていうのも言えなくて、それで自分を追い詰めていった。「誰かに言うぐらいだったらこの社会から消えたほうがいい」そういう風に思って足を運んだんですけどいざ死のうと思ったら、ちょっと踏みとどまれた。
 そのあと、近しい人には言えないけどそうじゃない人には意外と深刻な話をできた部分があって、親にも全部は言えないけど「一旦帰ります」ということで家に帰って、債務の整理もしてその後弁護士にまた騙されるというのもあるんですけど。その後うつ状態になりました。
 今度は家にいると、家にいるのがしんどくなってきたんです。兄弟も両親も働いているのに、自分だけが家にいる。療養のつもりで家に来たのに今度は家にいるのがしんどくなる。だから夜こっそり出かけたり、みんながいる時に出かけたりして、でもこれじゃあかんと思ってハローワークに行くようになって。
 そこで初めて、自分が何をやりたいのかという質問を自分に向けて、考えていったんです。マンションを売れた時も嬉しかったけどそんなに嬉しくないというか、そんなに役立ってる感がなかったから、役立つことを感じられる仕事というので福祉になっていったのかなと思います。
 学生時代もなんとなく就職してその企業なんとなくかっこいいかなぐらいで、不動産の研究をしたわけでもなく。やりたかったわけでもなくて。あ行で一番最初に出てきた「あさがお」という事業所に行ったんですが、初めてそこでちゃんとした仕事を教えてもらって、やってるうちに、「困っている人たちのために自分の力を使っていけばいいんじゃないか」と思ったんです。

記者 そんな経験をされてきたんですね。最初お会いした時は全くそのような雰囲気を感じなかったのでびっくりしました。

価値観のマネジメントから倫理観のマネジメントへ


記者 従業員のやりたいことをやることと、事業を運営していくことの両立はどのようにされているのですか?

小島 価値観はもちろん違いますが、倫理観に働きかけているのかもしれないです。人間だったら障害があろうが外国人だろうが、20代だろうが50代であろうが関係なく持っている倫理観はあると思います。
 好き嫌いや価値観だとバラバラになるのでそれを尊重しながらも、好き勝手とはちょっと違うので、「赤信号は止まりましょう」のような人間なら誰しもが持ってる正しさというか倫理観に働きかけるマネジメントになっているんだと思います。
 もちろん倫理観が全く通じない時もありますし、この1年半やってみて、正しさだけでなく人を包み込む温かさも必要だと感じるようになりました。なので、 優しさや温かさなどの違いを受け入れる多様性や寛容性をすごく大切にしている職場だと思っています。

 それと、社会は障害者と言って腫れ物に触るように接するんですけど、僕は真正面から触ります。そういう人間と人間のぶつかり合いが、 AI 時代だからこそ必要なんじゃないかと思います。「これ言っちゃうと相手傷つけちゃうかな」とみんな言われるんですが、話を聞いていたら「ちょっとあの人の目が気になります」とか結局人間関係の話ばっかりだったんです。仕事の悩みもちろんあるんですが、「じゃあそれ言ったの?」って言ったら本人に言ってなかったりしたので、言ってみたら案外いけた、そんなことが多いんです。自分でブレーキしちゃってる人が多いので、障害があることと悩みがあることはあまり関係がないかなと思います。

記者 倫理観のマネジメントっていうのはすごく深いですね。人と人のぶつかり合いはどうしても避けがちになりますし、自分から行かないと相手もオープンになってくれないですよね。
 その辺りも辛い経験をされてから変化されたポイントなんでしょうか?

小島 人のマネジメントは分からないですが、人の見方に関してはもともとすごくフラットだったと思います。最初についた福祉の仕事が、いろんなところに行ける仕事だったんです。
 入院している方、高齢者の方、知的障害者の方など、いろんな人に会っていたことが今のことに繋がってるかもしれないです。
 一番印象的だったのは重症心身障害者と言われる一番障害の重い人。
身体的には寝たきりで、 知能的には0歳から3歳。まず社会には出てこない人たちです。
 そのような人たちと福祉の仕事で出会ったことで、「自分の幸せとは何なのか」とか「自分で話すこともできない寝返りも打てない重たい状態で。人間は何のために生きるのかな」とかそういうのを考えさせてくれました。こういう人たちとの出会いが自然と自分の変化になってきたのかもしれないですね。

記者 そうなんですね。最後に、重度の障害者の方々と接することで、人は何のために生きるのか、ということを考えられたということですが、答えは出ましたか?

小島 これはもらった言葉ですが、「自分が何のために生きるのか?という質問は違う」と。人生の方から「あなたは何のために生きるのか?と問われているんだと。我々は人生とは何かを問うのではなく、人生から問われている存在なんだと」
 私にとっては、幸せになるためかな、と思います。幸せになるためには、自分にできることで誰かのために動いていくこと、働いていくことが必要です。そういうことができる人が増えていけば社会が幸せになるし、一つのポイントかなと思います。
 自分で動ける人は動けるけど、重症心身障害児者の人は、自分で寝返りをする事も難しい人もいる。喋れたら意思疎通もできるんですが、同じ人間として喋ることも難しい、動くことも難しい。人を笑かすことも難しい。「何のために生きるんやろ?」と思いました。アメリカ人のとある人が、その人をみて「かわいそうや」と言ってたんです。障害が重たくて「かわいそう」という意味だと思っていたら、そうではなく、「この状態で生かされているのがかわいそうだ」と言ってて、「?」と思いました。認知症になる人もおるし、重度の障害になる人もおるし、喋れへん動けへんけど今を生きている。その人はXJAPANの曲を聞いて首を回したりだとか、「快」は感じられる
 感じることがある、赤ちゃんと一緒で、嫌やったら泣いたりする。望んでないのに事故にあってる人もそうですが、そういう状態になりたくてなってる人はいないと思うので、環境を変えることで快楽を感じられるなら、そういう行動で支えていきたいなと思っています。
 自分にできることをやっていくことで自分も他人も幸せになっていく、ということが大事だと思います。

記者 小島さん、貴重なお話ありがとうございました!

小島さんへの連絡はコチラ↓↓

Facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=100022110046002

irodoriHP:https://mirise-irodori.com/top/

【編集後記】

今回インタビューを担当させていただいた平井です。
ご自身が生きるということ、働くということに関して向き合ってこられたことを感じました。誰もが当たり前にチームプレイができる働きやすい未来が見えて、とてもワクワクする時間でした。

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