「気持ちを大切に」ペットシッターMojo Mojo代表 西山早苗さん
ペットシッターとして福岡県内で活躍されている西山早苗さん。飼い主さんとペットとの間に絶大な信頼を築いている背景をお伺いしました。
プロフィール
出身地 鹿児島県
活動地域 福岡市
経歴 短大卒業後、大手ビール会社系列の物流会社に4年勤務。
退社後、ロンドンへ語学習得を目的に留学。
帰国後、福岡の家庭用医療機器・製造販売会社に就職。海外事業部から秘書室勤務となり7年勤務。
退社後、ペットシッターという職業に出会い、2003年7月創業。
現在に至る。
現在の活動および職業 ペットシッターMojo Mojo代表
座右の銘 「晩年に、私の一生は本当に楽しかった!と言い放つこと」
カスタムメイドのペットケアサービスをつくる
Q:どのような夢やビジョンをお持ちですか?
西山 早苗さん(以下、西山 敬称略) カスタムメイドのペットケアサービスをつくりたいと思っています。ペット版の地域包括支援センターのサロンのようなイメージです。
ペットの日常のお世話から亡くなった時のことまで、あらゆる場面で相談してもらえるような立場を目指したいです。又、何かあった時には、どう対応したらよいか相談できるサロンをつくりたいと思っています。
ペットも家族です。歳を取っていく過程を一緒に過ごしていくのですから、場合によっては、人間の家族以上に心の拠り所になり、ペットが亡くなった時にはとても悲しみます。心豊かな家庭生活を送るためにもペットのお世話はとても大切なのですが、ペットシッター自身も、利用者の方もまだまだその認識が充分ではないのが現状です。
ですからまずはペットシッターの育成が必要だと思っています。認知度が低い仕事ですので、数を増やすとともにサービスの質を上げていきたいです。動物が好きで詳しいのは当たり前で、人間に関心を持つことが大切です。飼い主さんが留守の時にご自宅に入らせて頂くので、飼い主さんとの信頼関係の上に成り立つ仕事です。最初は必ず直接お会いしてお話しますし、リピートの場合、鍵は手渡しで受け取りに伺って直接お顔を見られるようにします。一般常識を持って対応し、ペットだけでなく飼い主さんの気持ちも察することが必要とされます。
特に今は高齢化社会で、独居老人も増えています。ご高齢の方々にとってかけがえのない家族であるペットですが、介護サービスでは現状は動物のお世話はできないシステムになっていて、ペットのことをフォローしてくれる体制が整っているとはいえません。
何かあったらこの人に聞いてみようと思えるペットシッターを育成して、必要な時に適切な対応ができる相談窓口をつくり、飼い主の皆さんが安心して豊かさを感じられるような社会にするためのお手伝いができればと考えています。
ペットシッターの育成
Q:「カスタムメイドのペットケアサービスをつくる」へ向けて、どのような目標や計画をお持ちですか?
西山 2年以内にはペットシッターの育成に取り掛かりたいです。そして5年後には自分のサロンをつくりたいと思っています。動物達の健康面に関する相談などにも対応できるようにし、飼い主さんを始めとして関わってくださる人達と協力し、フォローもしていきたいです。
もう一つ、私はこれまで数えきれないほどのペットの死に立ち会い、関わってきました。その時の経験を生かしてペットの看取りの過程をサポートする事業も考えています。
常に自分ごとに捉える
Q:その夢やビジョン、目標計画へ向けて、どのような基本活動をしていますか?
西山 この仕事は観察力が大事です。飼い主さんは毎日ペットに接していますので、ちょっとした変化に気づかないことも多いのですが、ペットシッターは時々会う分、変化に気づきやすいのです。細かなことも見逃さないように意識を向けています。
そして気づいたことを表現する力も必要です。飼い主さんとは必要に応じてメールのやり取りをさせて頂きますし、お世話した内容や気づきを手書きのレポートにしてお渡ししてます。ですが、ペットのことはあくまでも飼い主さん主導ですし、それぞれの考え方があります。相手の意見を尊重しつつ、ペットをお世話するプロとして感じたことをどのように表現して伝えるかということも私たちの力量といえます。
観察力や表現力を育てるには、敏感であることが大切です。そして敏感であるためには、常に物ごとを自分ごととして捉えることが重要です。
自分ごととして捉えてペット達や飼い主さんと接していると、こちらの意見が伝わりやすくなり、より利用のメリットを実感して頂けますし、結果としてペットシッターを選択して良かったと思ってい頂けるようになります。それがこの仕事の面白味でもありますし、ペットや飼い主さんとの信頼関係をつくっていく基本になるのです。
気持ちを大事にする
Q:「カスタムメイドのペットケアサービスをつくる」となったきっかけは何ですか?又そこにはどのような発見や出会いがありましたか?
西山 きっかけはペットシッターという職業に将来性を感じたからです。これは単に動物のお世話を代行するだけの仕事ではないという勘のようなもので、今は確信となっています。
ペットシッターは誕生して間もない職業ということもあり、創業後の10年間はずっと走り続けてきて、気づけば年に3日も休んでいないという状態が続いていました。繁忙期には1日に15件以上の依頼を回っていたこともあります。お勤めをしていた時のお給料よりも稼げるようになるということを目標の一つとしていましたし、創業時に周りの方からペットシッターは仕事として成立しないと言われたことが悔しく、見返したい思いもありました。開業後数年でお勤め時代の収入を超えて、今は仕事として成り立っていますが、それでもどこか自信がなかったのでしょうね、自分の中に欠けているピースを探すかのようにずっと走り続けてきました。けれどそうすると気づかない内に疲労が溜まって思考に囚われて、心を失くしかけている自分に気づいたんです。
もっと自分の気持ちを大事することが今の私には必要だと気づきました。動物と接していると、特にそのことを実感します。動物はただ生きて、その生を全うします。動物を通して、本来の人間の姿、心の在り方に立ち返ることができたのです。「生きる」ということに忠実な姿を見て我に帰る感覚でした。
それまでは仕事上のテクニックを重視していたように思います。もちろんそのことも大事なのですが、これからは心で感じ、心で働いて、ペットも飼い主さんのことも、もっとふわっと包み込むような立ち位置で接していきたいと思っています。
こんなことを考え始めてからペットのお世話代行という狭い範囲に留まらず、もっとこの仕事を通してより踏み込んだサービスができるのでは?と考えるようになり、どんどんアイディアが出てくるようになりました。
自分を認めていないことに気づいた
Q:「気持ちを大事にする」という発見の背景は何ですか?
西山 5年ほど前、体力面の限界が来てフットワークが鈍くなりました。10年間走り続けてきて、体もきつかったですし、売り上げも行き詰まり、気力も出てこなくなったのです。大好きな動物の仕事だったはずなのに、一体自分は何をやっているんだろうと突然虚しさに襲われました。
周りのためにしようと必死で、自分のことを自分で全く認めていなかったことに気づいたんです。もう外に向かって無理をして走るのはやめようと思いました。もっと自分を大切にしなくては!という思いが湧いてきたのです。自分には選択できる自由があり、今までもずっと選択してきた、そして何一つとして無駄な経験はなかったということに気づきました。その時、初めて自分を認めることができたのです。
私がいかに自分をないがしろにしてきたのかを痛感しました。感じることよりも思考に忙しくなって、せっかくアドバイスをしてくださる方々の話を聞けていなかったことが多々ありました。これからは人を受け止め、認める側の視点を持って、気持ちを大切にしながら心で働いていこうと思ったのです。その方が自分らしいのではないかと。
ひたすら走ってきましたが、方向性は間違っていなかったと思います。全ては自分で選択してきたことです。これからの自分の選択がどんな生き方をつくっていくのか、変化が楽しみです。
今の日本を生きる家庭の人たちへメッセージをお願いします
西山 選択できることは素晴らしいことだと思います。自分で自分の人生を自由に選択できる素晴らしさを知って欲しいと思います。勇気が必要ですし大変なこともありますが、それすら自分次第で選択できるのです。守りに入らずやってみて欲しいです。私たちが生まれた日本はそれができる国であり、これからは心の時代になっていく、そんな予感がしています。
記者 自分を認めることができたからこそ、気持ちや心に気づくことができたのですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。
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ペットシッター Mojo Mojo・・・福岡市内を中心に活動しています。
【編集後記】
今回、インタビューを担当した小水と新原です。
優しい笑顔の裏には、自分で自分を認めるという人間としてとても難しいところに向き合う勇気を持っている西山さん。人間には選択できる力があるという西山さんの深い誇りを感じると同時に、だからこそ全てを自分ごととして捉えて、自らの力で人生を切り開いていけるのだと思いました。
西山さんの今後の益々のご活躍を応援しています!