「生きづらさの連鎖を止める」フリーライター“吉川ばんびさん”

機能不全の家族の中で育ち、生きていくことに対する諦めや絶望を乗り越え、今では既存の社会保障制度からこぼれ落ちる弱者の現状や認知を広げるためにライターとして各メディアで発信する吉川ばんびさんにお話を伺いました。

吉川 ばんびさんプロフィール
出身地:兵庫県神戸市
活動地域:大阪を拠点に、東京や全国でも活動中
経歴:大学卒業後、新卒で商社に入社→司法書士事務所に転職・退職し、ライター・コラムニストとして活動、今に至る。コラムでは、貧困・家族・就職・ブラック企業などについて書くことが多い。
現在の職歴および活動:フリーライター(文春オンライン、東洋経済オンラインなど)
座右の銘:無理はしない

まずは「生きづらさを感じている人の現状」を多くの人に知ってもらうこと

記者 吉川さんはどんな夢やVisionをお持ちでしょうか?

吉川ばんびさん(以下、吉川見えざる弱者(※)について発信して認知度を上げたいと思っています。少子高齢化が進んでいるにもかかわらず、いずれ日本が「生きづらさ」を抱えたまま生きる人たちで溢れる社会になると、労働人口がさらに減っていくことを考えると「この国の未来は無いなぁ」と思います。

そうした生きづらさを抱える人を減らすために、例えば貧困や虐待、機能不全家族などを見過ごさず、親から子へと受け継がれる負の連鎖を止める仕組みを作っていきたい。これはとても大事なことで、たとえ自分一人でもやらなければならないと思いました。
※見えざる弱者:支援が必要な状態であるのに、表面上は普通の人と変わりがないので誰からも気付かれない人。貧困、機能不全家庭、精神的に不安定な人など。


今わたしが取り組んでいること、やりたいことをnoteにまとめましたので、ぜひご覧ください。

「生きづらさの連鎖」を止めるただひとつの現実的な方法

他人事には感じられない

記者 一人でもやらなきゃいけないと思った背景にはどんな想いがあるのですか?

吉川 最初は周りに頼れる人がいなかったですし、そもそも誰を頼ればいいか分からなかったので、とりあえずやるしかないと思ったんです。生きづらさを抱えている方々を支援する活動をしているNPOもありますが、生きづらさが発生してしまう根本原因を取り除く活動をしている方って意外と多くなくて。だから、まずは世間に対して「見えざる弱者」と呼ばれる人たち、その連鎖の仕組みを多くの方に知ってもらって、問題解決をするシステムの基盤を作るということで、とにかく早く着手したいという思いで一人で始めました。

記者 今の活動をされるきっかけは何があったんですか?

吉川 色々ありますけど、ひとつのきっかけとして、ZOZOTOWN の前澤社長が自身のTwitterで、難病を抱えている子どもへの支援をしているのを見たことが大きいかもしれません。。シェア1件につき10円を寄付しますという企画をやっていて、すごい金額が集まったんです。それは本当に素晴らしいことだと思いますし、誰にも前澤さんのことを批判することはできないと思うんです。

ただ、たまたま前澤さんの目に止まって支援を受けられたその子を、私は「選ばれた存在」かのように思ってしまったんです。もちろん、その子は難病で大変苦しい思いをしていますし、私としてもなんとか快方に向かってほしいと願っています。しかし、日本にはまだ難病や貧困、何らかの危険に晒されて命の危機にさらされている人もたくさんいるわけです。私にとって、彼らは「全員を助けることはできないから」という一言で済ませていい存在だとは思えないんです。その「選ばれない99.9%の人たち」が助かる方法はないのか、彼らをどうすれば助けることができるのかということから、私たちは目を背けてはいけない、と思ったのがきっかけでした。

私も元々99.9%側の人でした

幼少期から「生きるのがつらい」と思っていた私より、もっと困っている人はいっぱいいるので、そういう人たちをどうにかできないかなと思っています。

私自身も兄による家庭内暴力、また、そのトラウマに15年以上苦しんでいますが、体調を崩して心療内科に行っても、根本的な解決はできず、薬による対症療法しかできなかったんです。

子ども時代から、夜になったらフラッシュバックを起こして涙が出て朝まで眠れないとか、日常的に暴力も受けていたし、お金も脅し取られていたし、今もそんな症状に苦しめられています。自分がそんな経験をしたからこそ、同じような境遇に育った人たちに対して、何かできないか、と思っています。精神的に不安定な状態で大人になってしまった人たちは、判断能力が著しく低下して、人生において無難な選択を取り続けることしかできないんです。常に暴力を受けていたり、危険に晒され続けている人たちは、毎日勉強をがんばって医者になろうとか、いい大学を出て大企業に入り、裕福になろうとか、そんな余裕はないわけです。


自分自身、「このまま抗うつ剤がないと生きられないかな」と考えたときに、自分でどうにか変わらないといけないのではないか、と思いました。そして片っ端から論文や本を読み漁って、自分のことをひたすら分析したり、思い当たることを調べ続けた結果、私は恐らく子ども時代に、何らかの「愛着の問題」を抱えてしまって、そのまま暗い子ども時代を過ごし、思春期ぐらいから精神的にちょっとおかしくなってきたのではないかと思ったんです。

記者 自力でそこまで調べていくって、すごいですね。

吉川 心療内科医には「ただのうつ病ではなくてもっと複雑な何かなんだけど、何かは分からない」って言われたんです。病院を変えても、「薬を飲み続けて様子を見ましょう」と言われるばかりで、薬を飲んで数年たっても根本的な原因を指摘してくれる先生には出会えなかったんです。
「薬をいつかはやめたいんです」と言ったところ、先生から「出ている症状に対して対症療法をするしかない」って言われたんですね。そうなると、もう自分で考えて、勉強して、自分の体や精神を把握しないと何も変えられないじゃないですか。幼少期の体験に基づく人格形成について、自分でもずっと頭の中で考えていたので、そういう本を読み始めたり調べたりして、ようやくこれだ!っていうのを見つけてきたという感じです。

本来、親や家庭は安全基地

家庭がしっかり機能していて、自分にとって「安全な場所」を確保しながら成長した子どもは、好奇心が旺盛になったり、やりたいことが見つかったり、もっと勉強してこんな職業に就きたい、とか思えるそうなんです。しかし、家庭が「安全基地」として機能してない状態、例えば親から虐待を受けたり、常に家庭内で不安を抱えていたりなんかすると、子どもは生きていくことに必死で、好奇心が生まれることもないかもしれないし、お医者さんになりたいとか色んな所に行きたいとか、行動範囲を広めようなんてとても思えない。

そうすると、経済的な事情もあるでしょうけど、親の言う通りにするとか、みんながやってるようにするとか、受験や就職でも「無難で安全」な選択肢ばかりを取ってしまったり、私みたいに「とにかく家から逃げられるなら何でもいい」とか思ったりして、就職活動なんかも「とりあえず就職できればいい」とハードルが下がってしまいがちなんですよね。ブラック企業しか内定が出なかったけど、就職浪人する余裕もないから仕方がない、みたいな。それを世間では「自己責任」と言われちゃうんですけど、そういう人たちは、頑張りたくても頑張れないんです。

これは一般的な感覚でみなさんが知っていることかと思いますが、何かしらの精神的な問題を抱えてしまっている人ほど貧困になってしまったり、生きづらい環境に身を置くことになったり、親から子へと受け継がれる負の連鎖が出来てしまいやすいんです。虐待を受けて育った人は、いざ子どもを持ったときに自分の父親、母親が「親のロールモデル」である以上、それ以外の育て方を知らないこともあるんです。そういうことをまずは世間一般に認知してもらって、これから先に貧困や機能不全家族の連鎖を止めないかぎり、いつかみんな精神的に追い込まれてしまって、22歳から70歳まで働くのは到底難しいと思うんです。

少子高齢化の時代に、ただでさえ労働人口が少ないのに、さらにそういう生きづらさを抱えた人たちを放置してしまうのは、大きな社会問題になるんじゃないでしょうか。精神を壊して、体調が悪くなってから自分の異変に気づいても、なかなか社会復帰できない恐れもあるので、まずはそこをどうにかしないといけないと思っています。

常に顔色を伺い、ビクビク怯え、安心できる場所がなかった

記者 幼い時、家庭内暴力があったということですが、具体的には、家庭内でどんな辛いことがあったんですか?


吉川 自分の記憶を遡って、思い出せる中で一番古い感情が「恐怖」でした。よく叩く母親で、母のことは好きでしたけれど、とにかく怖かったです。母親も精神的に余裕がなかったと思うので仕方がありませんが、小さい子どもってコップとかちゃんと掴めないじゃないですか、それで飲み物とかをこぼしちゃうと、ビンタが飛んできたりしましたね。

だからいつもびくびくしながら、母親の顔色をすごい伺っていたし、大きい声を出されたらパニック状態になり、うずくまってしくしく泣き出す子でした。とにかく母親の機嫌を損ねたら、叩かれると思っていたのでビクビクしていました。でも、母は母で苦しかったんです。父は育児にまったく関心を示さない人でしたし、兄は気に入らないことがあると私だけでなく母を殴ったり、蹴ったり、お金を盗ったりしましたから。父も母も、子ども時代に機能不全家族で育っているんです。だから、家族というあり方が、分かっていなかったんだと思います。

生きるのもしんどいけど死ぬ勇気もない

記者 社会人になってお家を出られるまで相当辛かったと思いますが、何を原動力に生きていたんですか?

吉川 うーん、生きるのはしんどいけど、死ぬ勇気もなかったんですよ。死んだら楽になれるなぁとは思ってたんですが、私が自殺したら母親は自身のことを責めるだろうし、そこから多分一生幸せになれないだろうし、あんな家庭の状態では、母まで自殺してしまうかもしれない、と思って。そんな感じで、なんとか生きてました。

これを人に話すと「えー」って言われますが、私よりももっとひどい状況の子たちもたくさんいると思うんです。虐待のニュースを見ると、本当にきついです。私でも辛かったのに、それ以上にひどいことされたり、ひどい怪我をさせられたり、亡くなってしまうような事件を見ると、涙が止まらなくなります。

記者 自分の家庭が普通ではないんだなと気付き始めたのはいつですか?

吉川 中学生の時にぼんやり、ですね。兄は元野球部のピッチャーなんですけど、私が中学1年生のとき、兄に至近距離で500mlのペットボトルを投げられて、顔が血まみれになったことがあるんです。
目の上に当たっちゃって、額が割れたみたいで、目の周りもひどいアザになって。でも、学校には行かないといけないじゃないですか。だから、母親からは「恥ずかしいから自分でぶつけたって言いなさい」って言われたんですよね。


それを言われて、初めて「これって恥ずかしいことなんだ、言っちゃダメなことなんだ」と思って、家庭内で起きていることは、大人になるまで、誰にも言いませんでした。普通にこうやって話せるようになったのは大人になってから、とくに最近です。少し前までは、話そうとすると涙が溢れてきて、何も話せなくなってしまいましたから。

理解者を一人でも多く増やしていく

記者 たとえば、「愛着障害」のようなことに対して社会の認知が広がり、「負の連鎖を止めたい!」というばんびさんの思いが実現したら、日本や世界はどんな風に変わると思いますか?

吉川 すぐには実現が難しいと思いますが、周りから理解を得られないが故に助けられない人たちを何とか助けてあげたい!という気持ちがあります。だからこそ、そういう子どもの発達や、幼少期の経験がその後の人生に及ぼす影響に対する知識なんかをより多くの人に知ってもらって、親になる人が子どもに同じことをしてしまわないように気をつけてくれたり、自分の精神の状態に気づいてケアをしてもらったり、そういうことが普通になれば、世の中はもっと良くなると思います。

これから大人になる子どもたちが、生きづらい人生を送るのを未然に防ぐためには、こうした発信をコツコツやっていくしかないんだと思います。虐待をしてしまう親たちは、余裕がないし精神的に追い込まれていることもあって、無意識に自分の親の真似をしてしまうんだと思います。もちろん、単純に自分の感情をコントロールできずに、子どもにイライラしたり、八つ当たりをして暴力をふるってしまう人もいますが。「こうやって育てるもんだ」っていう自分の中の常識を、一度疑問視してみてほしいんです。

でも、ただ日々の生活に追い込まれている人たちがそれを冷静に意識できるかと言うと、それって結構難しいので、それを客観視してブレーキをかけてくれるようなパートナーや大人が周りにいたらいいな、と思います。一人きりですべてを背負ってしまうと、どうしても周りが見えなくなってしまうので。

機能不全家族で、心の傷を負っている子どものSOSに早めに気付いて治療してあげることが何よりも大事です。そんな子ども達のことを理解して、すぐに手を伸ばせる環境を大人たちが作らないといけないと思っています。

今のまま行くと、10年後、20年後には元気に働ける人たちがどんどん少なくなっていくと思うんです。私の今の活動が正しかったかどうかは何十年後にしか分からないし、私が目指している社会を、私が生きているうちに見られるかどうかも分からない。

でも、多くの方に知ってもらうために、とにかく発信していかないといけないと思うんです。たとえばもし私が明日死んだとしても、同じように問題意識を持ってくれる人がこうした活動を続けてくれたらいいと思っているので、「理解者を一人でも増やしていく」という意味でも、本当に泥臭くてもいいから、とにかく私ができることはなんでもやっていこうと思っています。

次世代のために自分ができることをやるのみ

記者 最後にメッセージをお願いします。

吉川 今私が執筆をするうえで大切にしているのは「各世代の生きづらさ」に焦点を当てることです。本質的には共通している生きづらさに対して、それぞれが知識や意見を持つ社会構造が生まれて、みんなが議論できるきっかけになったらいいなと思ってます。

記者 本日は貴重なお話をありがとうございました。

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吉川さんについての詳細情報についてはこちら

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【note】

【Twitter】

【編集後記】
今回インタビューを担当したCallingerの帆足と大槻です。
ご自身の経験をありのまま話してくださる中で深い涙を感じました。誰にも言えない苦悩を抱えながらも生きることに妥協せず、自分や社会と向き合い、動き出す姿勢に感動し、今の日本社会での生きづらさに対して諦めたり、目をそらすのではなく、声を上げることの大切さを感じました。
可愛らしい見た目には分からない、今の社会の矛盾へ真っ直ぐ向き合い、発信する姿はカッコ良かったです。
記事には書けないようなこともたくさん話してくださり話が尽きませんでした。

吉川さんのこれからのご活躍を応援すると共に楽しみにしております。

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