学生の皆さんが主役。ワクワクドキドキする大学に。 立命館アジア太平洋大学(APU) 学長 出口治明さん

還暦になってからライフネット生命を開業され、数々の著書をてがけ、現在は立命館アジア太平洋大学(APU)の学長を務める出口治明さん。そのバイタリティはどこからくるのかお話を伺いました。

プロフィール
出身地:
三重県美杉村(現・津市)
活動地域:
大分県別府市
経歴:
1948年三重県⽣まれ。1972年京都⼤学卒業、同年⽇本⽣命に⼊社、2006年退職。2008年ライフネット⽣命保険を開業。2012年上場。社⻑・会⻑を10年務める。2018年より現職。
現在の職業および活動:
立命館アジア太平洋大学(APU)学長、学校法人立命館副総長・理事
座右の銘:
悔いなし遺産(貯金)なし。やりたいことには全てチャレンジするのが人生。

「世界を変えるチェンジメーカーの輩出」

Q.どのような夢やビジョンをお持ちですか?

出口治明さん(以下、出口 敬称略) 人間は今、おかれている場所や状況下で、いかに一所懸命頑張れるかどうかが重要だと思います。僕の場合は立命館アジア太平洋大学(以下、APU)をいかにワクワクドキドキする場所に変えていけるか、ということだと考えています。そのためにはリーダーである僕自身がワクワクドキドキする毎日をおくることが大切です。いい組織は先ずリーダーがワクワクドキドキしていないとつくれません。ありがたいことに、連合王国(英国)の高等教育専門誌『タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(Times Higher Education、THE)』では日本国内の私立大学の中では3年連続トップ5、西日本1位に入る評価をいただいていますので、今後も社会的評価を上げていきたいですね。最近の東洋経済によると総合評価で全国17位、全国私大4位というランクをいただきました。
APUは、APU2030というビジョンを掲げており、APUで学んだ学生たちが世界各国に散らばり、リーダーシップを発揮して世界を変えるチェンジメーカーを多く輩出していきたいと思っています。

Q.それを具現化するために、どんな目標や計画を立てていますか?

出口 世の中は常に変わっていくので、通常の経営目標に加え、チャレンジデザインとして毎年その時の課題を抽出して優先順位を決めて取り組んでいます。
どんな組織で、誰が責任者で、いつまでに何をやるを決めることが肝要です。コロナウイルスが典型ですが、その時々ででてくる課題も多様なので、しっかり対応できるようにしています。ダーウィンが「最も強い者が生き残るのでもなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化に対応した者だけである。」と述べています。時々の課題にしっかり向き合い、適応できる組織・企業がこれからの社会に生き残れる条件だと思います。

Q.その目標や計画に対して、現在どのような活動指針を持って、どのような活動をしていますか?

出口 どんな組織においても最も重要なのは「誰が主人公なのか?」を考えることです。僕はAPUの学長ですが、この大学の主人公は学生の皆さんです。学生の皆さんが何を考え、何を期待しているのかがわからないと大学の運営はできません。だから何かあればいつでも僕に話ができるよう、FacebookやTwitterなどのSNSで学生から直接連絡がとれるようにしていますし、学長室のドアは誰でも入れるようにいつも開けています。大事なのは学生の声をダイレクトに聞くこと。学長と学生の間の壁は極力なくすよう努めています。脳科学や心理学の知見によると、興味がなければ単位を取ったら中身は忘れてしまいます。あくまで学ぶ主体は学生、教職員はバックアップをする、これが基本です。人間はそんなに賢くないので学んでも腹落ちしたものがないと、動けない、自分の信念に基づいて行動し続けることが出来ないんです。周りが何を言っても、腹落ちした信念を貫いて行動し続けることが世界を変えるリーダーシップにつながります。

Q.そもそも、その夢やビジョンを持ったきっかけは何ですか?そこには、どのような発見や出会いがあったのですか?

出口 そんなに大きなきっかけではありませんが、たまたまAPUの学長が国際公募されていた時に、誰かが推挙してくれました。僕自身も人生のなかで学長の面接試験を受けることはないだろうと思い、面白そうだなと面接を受けました。ドクターなどの公募基準を満たしていなかったので、どうせ落ちるだろうと思っていたところが受かってしまいました(笑)
そもそも人生の中では、ドラマのような何か大きなきっかけがあるというより、小さな出来事の積み重ねによって人生が変化してくのだと考えています。
恋愛で恋人同士が付き合うきっかけと同じようなものです。
毎日がイエスかノーかのゲーム。偶然があるから世界は変わっていく。
起きた出来事に対して、楽しんでひとつずつ対応していくことが大事だと思っています。

Q.起きた出来事に対して対応していくと考えるようになった背景には何がありますか?

出口 もともと人間が賢くなるには何が必要かと考え、多くの人に会い、多くの本を読み、広い世界を旅して経験を増やすこと、つまり人・本・旅によるインプットが必要だと考えました。それから考える時に1番大切なことはエビデンス(証拠)ベースで考えることです。エビデンスやデータを大事にすることは学問の基本だと思います。様々な事象もエビデンスをもとに議論しないとただの思いつきを語ることになり時間の無駄になります。例えばよく日本人は正直だといわれていますが、これもエデルマンの調査データをみると、企業や社会のリーダーにとって何が大事なのかという問いに、アメリカやヨーロッパは「正直さ」が1番ですが、日本は5番目くらいです。だから客観的なデータを見た時に本当に日本人は正直なのか?という疑問が生まれます。
日本社会は戦後、製造業の工場モデルで国を再建したので、教育もそれに過剰適応して協調性を強調し、強い同調圧力を生む社会を創ってしまいました。今までの働き方は長時間働いて、メシ、風呂、寝るの生活システムになってしまい、社会人になってから勉強する時間の確保が難しい現状があります。こうした社会の仕組み自体が低学歴化をもたらし、考える力を養うことができません。でもこれからはより働き方の変化が求められる時代だと思いますので、データベースで思考し、実践行動する人たちを増やしていきたいですね。

記者 確かに日本人は考える力が乏かったり、曖昧なコミュニケーションをする文化が根強くあるように思います。これからの時代、論理的に考え実践できる人たちが増える必要性を感じましたし、出口学長の学生の皆さんへの愛情を感じました。本日は貴重なお話、ありがとうございます!

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出口さんの活動、連絡については、こちらから↓↓
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http://www.apu.ac.jp/home/

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【編集後記】
インタビューを担当した清水、阿久津、福田です。
日本の教育に対して変化の必要性を感じ、熱意を持って活動しているのが伝わってきました。
これからのグローバル社会に日本人がどう対応していくのか考えていきたいです。

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