「美は恐怖である」フリーヘアメイク 小林恵さん
フリーランスのヘアメイクアップとして活動されている小林恵さんにお話を伺いました!
小林恵さんプロフィール
出身地:東京都
活動地域:首都圏
経歴:1996年メイクアップアーチスト学院を卒業後、某ヘアメイクプロダクション入社。山野美容専門学校を経て、ヘアメイクプロダクションを退職。2015年よりフリーランスとして活動を開始。2019年より(株)GOOD SUN運営のCURRYメンバー、同safranヘアメイクチームに参加。
現在の職業及び活動:フリーランスのヘアメイクアップとして活動中。
座右の銘:Life is beautiful
記者 本日は、よろしくお願いします。
小林恵さん(以下、小林) よろしくお願いします。
現在 大切にしたいこと
Q:どのような夢やビジョンをお持ちですか?
小林 長年仕事と子育てを両立してきましたが、子供たちが成長し自分自身と向き合う時間がつくれるようになりました。子供たちは大切な同志です。時にはアドバイスをしてくれたり相談相手になってくれるまでになりました。
これからはもっと視野を広げて、今までになかったチャレンジをもっとしていきたいと思っています。そのためにもお仕事、プライベート問わず人との繋がりをより大切にしていきたいです。
現在から未来へ
創作活動もチャレンジしていきたいですね。今までも作品撮りはしてきましたが、もっと煮詰めた濃いものを創りたいです。和をテーマにしたものにも興味があります。創作活動はカメラマンさんやモデルさんと話をしながら創り上げる縛りのないものです。ひとりではなく自由な発想の中から生まれたコラボレーションは楽しいですね。スチール写真だけではなくこれからはムービーも取り組みたいですね。
ほかにも、将来的に海外でお仕事をしてみたいですね。流線型の日本の曲線美ではなく、海外には左右対称の美があるのでその感覚の人と作品を創り上げてみたいです。
もうひとつは美容介護です。従来の介護は衛生面を保つカットカラーの美容師介護が主ですが、メイクやハンドマッサージネイルなどの美容介護をしていきたいです。入園されている方でも手鏡は持っていらっしゃる方が多いのです。女性はいつまでも女性ですからね。心と体の双方から介護をすることで、一日でも気持ちよく過ごしてもらえたらと思っています。介護の資格が必要なのでいずれは頑張って取得したいです。
「美は恐怖である」
みなさんは「美しい」と聞いて何をイメージされますか?
私は「肌に触れることは人の心に触れることだ」だと常に思っています。若い頃は私は自分は今こういう状態なんですと相手にアピールしてしまっていたんですが、あるときにふと「相手の方には私の状態は関係ない」と気付いたんです。メイクをされる人の心に触れないと何も引き出せないんだとわかり、そこから仕事が楽しくなりました。
かなり前になりますが、日常で「美しい」という言葉に触れる機会が増えました。世の中に広がり始めたんですね。でも本当の美しさとはなんだろう?と常に考えていました。ふと旅行先で自然の雄大さの中に美しさを感じました。ゆったりと優しい時間を過ごせたのです。しかし一方で、人間は自然に太刀打ちできないなと。災害など時に恐怖に変わります。美しさと恐怖が表裏一体なんです。自分の気持ちの中で「美しさ」を掘り下げてもそのように思いました。アンチエイジングは老いに対する恐怖ですし、何かにチャレンジする恐怖もあります。怒りには苦しい自分がいてそれは恐怖心から来ています。
その恐怖心に自ら気付いて認めて、受け入れたときに人は美しくなれると思うんです。無理をして一歩踏み出さなくてもいいんです。そういう自分を自分自身で受け入れること。それが人生100年時代に一番大事なのではないかと感じています。
フリーランスのヘアメイクチームをスタート
Q:その夢を具現化するために、どのような目標や計画を立てていますか?
小林 美容業界では今、師弟関係が崩れている状況があります。昔は働かざる者食うべからずの時代でしたから月3万ももらえなかったりしましたが、今は法規制もありそれが許される時代ではなくなりました。一方できちんとアシスタントを持てるほどゆとりのあるアーティストが少ないです。師弟関係が崩れているので、迷子になる若い人がたくさんいます。実際には現場力がないのが問題だと感じています。天才レベルの技術を持っている方は別ですが…
世代間ギャップもあり、若い人はアシスタントになろうと思わないし、逆に雇おうと思う人もいないという悪循環が起こっています。
記者 小林さんにとっての現場力とはどのようなものですか?
小林 ヘアメイクをして撮影するとき、まったく同じ現場は二度とありません。そこで今ここでやるべきことをやれるのが現場力です。人間関係を理解し、先回りして現場のスムーズな流れをつくることです。
若い人が困ってることに耳を傾けたいし、気付いてないことに気付かせてあげたい。人と人との関係から創りあげる現場力を磨いてほしい。それがダイレクトに報酬ややりがいに繋がってくるからです。このフリーランスのヘアメイクチームでワクワクするような関係をつくっていきたいですね。みんなが得意な分野を情報交換できたり、アドバイスし合えるようにしたいです。手探りしながらですが建設的な仲間が集まるようなチームにできたらと思っています。
毎回現場に入ると、とても謙虚な気持ちになれます。現場まで他のスタッフさんがしっかり準備をしてきてくださっているのがひしひしと伝わってくるからです。その気持ちを大事にしていきたいですし伝えていきたい。そのうえでプロであることを意識してほしいんです。そのためには私自身が背中を見せていかなければなりませんね。
記者 小林さんが思うプロとは?
小林 作品の仕上がりが良かった時ですね。あとは現場に入ったときにスムーズに進められてメイクルームで良い状態を作れた時です。プロフェッショナルとは諦めないことだと思います。
答えがない仕事だから可能性を追いかける
Q:活動に対する基本指針はどのようなものですか?
小林 先ほどお話しました「肌に触れることは心に触れること」です。
また基本方針にあたるかは解りませんが気をつけている事としては、事前リサーチをし過ぎないことにしています。著名な方やモデルさん俳優さん。。。たくさんの方々とご一緒させていただいていますが皆さん”人”であることには変わりません。先ずは自分の気持ちをフラットにして接するように心がけています。
また、終わりがない、答えがない仕事なので、逆に答えが出たときには私の仕事が終わるでしょう。マニュアルは自分の首を絞めるだけです。どこまでも可能性を追いかけています。現場でのいろいろな制約はありますが、毎回人も環境も変わり続けるので新鮮です。
記者 小林さんにとってヘアメイクの魅力的なポイントとはなんですか?
小林 メイクをしたキャストさんに喜んでもらえたときですね。お誉めの言葉をいただいた時は嬉しいです。ものすごく単純な性格なので(笑)。
また、現場で一つの作品を創りあげる醍醐味ですね。広告を主としているので映画やドラマのように何週間、何ヵ月も生活を供にすることがありません。はじめて現場でお会いする方もいらっしゃるので常に新たな気持ちで皆さんとチームで作り上げていく楽しみがあります。一人では得られない楽しみ、チームという目に見えないパワーは何とも言えない達成感や充実感がありますね。
Q:夢を持ったきっかけは何ですか?そこにはどのような発見や出会いがありましたか?
小林 高校生の時に、大学に進学して教育免許を取るか美容免許を取るかを迷っていました。当時お客さんとして数件美容室を回り予約し、自分が実際にカットしてもらって一番よかったお店でアルバイトをしました。その後母が倒れ、一度は美容の道を諦め飲食店に就職しました。ちょうど飲食店で働いている頃に姉が結婚することになりました。自宅で和装の支度をしての挙式でした。披露宴も終わり二次会に行く前に姉がとあるリクエストをしたのです。当時は私も驚きましたがスタッフの方が快く引き受けてくださり、生花をドレスに縫い付けてくださったのです。楽しそうにお仕事をしているスタッフの方の姿を見て「ウェディングの仕事をしたい!」とピンときたのがきっかけです。姉の結婚式での光景が忘れられず学校を調べ貯蓄を切り崩してメイクアップ学院に入学しました。アルバイトを掛け持ちしながら「いつかヘアメイクになる」という信念だけは持ち続けていました。
メイクスクールに通いながら運良くヘアメイクプロダクションから声をかけていだだき、アシスタントからスタートしました。美容師免許も必要だと思い、ヘアメイクスクールと少しだけ期間は被りましたが通信で通いながら美容師免許も取得しました。アシスタントを経てブライダル広告等のお仕事をいただけるようになり、まさに寝ずに働く日々でしたね。
その後プライベートでも様々な困難なことに遭遇し辛い時期もありましたが、今はその経験も血肉となったのだと思えるようになりました。このジェットコースターのような人生を思う存分楽しんでいきたいです。
ヘアメイクをするときに生きていると感じる
Q:その発見や出会いの背景には、何がありましたか?
小林 何度もやめようと思っても続けてこられてたのは、中学時代の挫折が大きいです。バスケットボール部だったんですが、入部の段階からレギュラーになれるかもと言われていたのに結局辞めちゃったんです。その挫折が強く印象に残りました。事務所に入ったときも毎日やめてやると思いましたが、辞めちゃったら何も残らない、続けていくことが積み上げていくことに繋がると思い直しました。
記者 小林さんの続けていきたいと思う源はどこから来ていますか?
小林 ヘアメイクをしているときが一番生きていると感じるんです。ヘアメイクをする度にメンタルが強くなっていくのを感じます。肌に触れるのは信頼関係が必要ですからね。実は私が癒されているのかもしれません。
節目節目で助けてくださる方に出会ってきたのも続けていきたいと思う源です。
続けていくことで恩返しになればいいなと願ってます。
Q:読者の方へメッセージをお願いいたします。
小林 美しさは誰にでもあるので、自分の中の色んなマインドを受け入れることが原点でありスタートです。そこから踏み出さなくてもよいので、そういう自分でいるということを大切にしてほしいです。
また近くにヘアメイクなりたいと思う方や困ってる方がいれば、お声かけくださいね。
記者 小林さん本日はどうもありがとうございました!
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小林恵さんに関する情報はこちら
https://safran-3.jimdosite.com/member/
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【編集後記】
美は恐怖という相反するものを受け入れながら今ここを大事にする小林さんの姿勢こそ、これからの時代に必要とされるあり方だと感じました。また若い世代への熱い思いを語る姿もとても印象的で、小林さんの熱量のもとにたくさんの方が集う未来が想像されました。今後のますますのご活躍を期待しています!貴重なお話をありがとうございました。