空想あふれる世の中になればいい ショートショート作家 田丸雅智さん

奇想天外で夢あふれるお話を沢山生み出している、ショートショート作家の田丸さんにお話しを伺いました。

田丸雅智さんのプロフィール

出身地:愛媛県

活動地域:全国

現在の職業及び活動:ショートショート作家。2011年『物語のルミナリエ』に「桜」が掲載されデビュー。12年、樹立社ショートショートコンテストで「海酒」が最優秀賞受賞。「海酒」はピース・又吉直樹氏主演により短編映画化され、カンヌ国際映画祭などで上演された。坊っちゃん文学賞などにおいて審査員長を務め、また、全国各地でショートショートの書き方講座を開催するなど、現代ショートショートの旗手として幅広く活動している。2019年「世にも奇妙な物語 ’19雨の特別編」で『夢巻』収録の「大根侍」がテレビドラマ化。(主人公は女子高生に脚色され、主演は浜辺美波さん、敵役は小手伸也氏) 

ショートショートで人生が豊かになりうる

Q1. 田丸さん(以下、敬称略)はどのような夢やビジョンをお持ちですか?

田丸:世の中が、空想であふれるようになればいいな、と思います。
空想があふれて色々な見方ができる人が増えたらいいな、ということでもあります。その手段としてショートショートを広げていきたいです。

記者:ショートショートの魅力はどんなところですか?

田丸:1つの話が5分や10分で読めて、そんな短い時間で違う世界に飛ばしてくれる、ショートトリップというか、連れ出してくれることがショートショートの最大の魅力だと思っています。
1回連れ出されたら日常が違って見えたりします。たとえばコーヒーカップをのぞいたら人がいた、という話があるとするじゃないですか。今までただのコーヒーカップだったのが、その話を読んだことで「もしかしたらこれは異世界につながっているかもしれない」と考えたりします。妄想・空想といえばそれまでですけれど、楽しく色々な切り口で物事が見えるようになるんですよ。ショートショートは楽しいだけでなく実利もあるし、自分で書けばさらに良いですね。ぼくはショートショートで人生が豊かになりうるとずっと言っています。自分次第でありふれた日常が変わるという視点提供ができるのがショートショートの良さですね。

偶然性だけに頼らないで必然性や再現性を大事に

Q2. そのために具体的にされていることはありますか?

田丸:まず書き手としては作品を生み出し続けることですが、一作一作向き合いながら常に生み出していくことです。区切りもないし、何をしたから達成というわけでもないので、これはずっとやり続けたいです。
あとは、これは趣味でもありますがアイデアが枯渇しないようにインプットを兼ねて旅行に行ったり美術巡りをしたり料理を作ったりもします。
アイデアも何もしなければ枯渇していくだろうなと思っていて、偶然性だけに頼らないで、必然性や再現性を大事にしている感じです。たとえば、たまたま思いついたときも「どうして思いついたんだろう」と考えて言語化しておいて、次から意図的にアイデアが生み出せるようになるべく心がけています。ひらめいた原因がシチュエーションだったのかテーマなのか、次に似たような問題に直面した時に同じことを繰り返したくないんですね。
もう一つ、自分自身の執筆活動以外では、ショートショートを広げるための活動をしています。2013年から「ショートショートの書き方講座」と題して各地で講座を行っているのですが、もっと色々な人にアプローチして広げていきたい想いがあります。子供も大人も書くことを通じて、楽しいショートショートという空想の世界を知ってほしいです。
これらの活動の結果、本屋さんにショートショート専門の棚ができたら嬉しいですね。

創作と研究はエッセンスとしては似ている

Q3. そもそもそのビジョンを持ったきっかけは何ですか?

田丸:もともとは、ものづくりや宇宙に興味があって理系の大学に進みました。けれども宇宙は物理数学の世界で、ものすごく高度で「これは自分には無理だ」と感じました。一方でものづくりには依然として興味があったので、その後、学部では環境エネルギー問題を学ぶところに進んで、さらに大学院では、車を軽くして燃費を良くするための材料の研究をしていました。

記者:全く違うことをされていたんですね。

田丸:一見すると、たしかにそうですよね。ですが創作と研究はエッセンスとしては似ていると思うんです。たとえば、本当の最先端の研究にはアイデアが必要です。自分で新しい道を切り開いていかなければならないという部分でも、同じだと思います。とはいえ、物理や数学は法則が支配しているので、それが個人的には「縛りが強いなあ」と感じられました。もちろん今も科学への憧れはありますし、お話を聞く分には好奇心をとても刺激されるのですが、自分がその道を進みたいか、という意味では、違うなと思いました。
小説や物語も「言語」をはじめとして縛りというものはあるのですが、たとえば物理法則を無視しても良いし、自分の空想世界を自由に描けるのがすごく楽しくて物語を書く方を選んだという感じです。

「小説は自分で書いていいんだ」

Q4. もともと文学の世界は身近にあったのですか?

田丸:いえ、特に小学生のころは全然でした。せっかちで活字をじっくり読むということができなくて、小学生の時はほとんど本を読めていなかったんです(苦笑)。そんな中、小学6年生くらいの時に親がショートショートだったら読めるのではないかと勧めてくれて、読んでみたらすごく面白くて、こんなに短くて面白いお話があるんだと衝撃を受けました。そこからはまっていって小学校、中学校、高校と朝読の時間などにショートショートばかりを読んでいました。そして、高校の時にちょっと時間ができたとき、何となくショートショートを書いてみました。友達に見せてみたら面白いと言われて、「小説は自分で書いていいんだ」と驚きに似た発見がありました。それまではハードルが高くて限られた人しか書けないような思い込みがあって、それが外された瞬間で楽しかったです。

さかのぼると幼少時には絵本をたくさん読み聞かせしてもらっていて、それが大好きでした。ときには、読んでもらっている途中でお話を勝手に奪って、つづきを作って話したりもして。作るのがただ好きだったというのではなくて、それを誰かに聞いてもらって、笑ったり良い反応をもらえるのがうれしくて楽しかったんですね。結局今も、その延長のようなものです。自分が思い描いた通りに、なるべく足かせのない状態で物語を生み出して、それを誰かが楽しんでくれることがぼくの幸せだと思っているので、その自分の脳が快楽を感じることをずっとやりつづけている感じです。

創作って楽しいよね、空想っていいよね、という仲間を増やすことを目指しています。そうするとぼくも楽しい(笑)

Q5.「楽しい」を大事にされているのはどうしてだと思われますか?

田丸:楽しくなかった原体験もあって、正直なところ、小中学校では感情的に曲がっていました。いじめられていたわけではないのですが、全体的に目立ったらちょっかいを出されるような雰囲気で、勉強ができることも、なんだか悪いことのような感じで。今でこそ変だったのだなと分かりますけど、当時はそれがすべての世界なので、よく分からなくて。そんな中で、感情が曲がったり、妙なコンプレックスを抱いていたように思います。

記者:思った通りに振舞えなかったのですね。

田丸:当時、そうですね。だから書き方講座にもつながりますが、ぼくは楽しむことを一番大事にしていて、ショートショートを通して多彩な見方があるんだよということを提供できるといいなと思っています。創作って楽しいよね、空想っていいよね、という仲間を増やすことを目指しています。そうするとぼくも楽しい(笑)。
あとは、自分がいいな、好きだな、と思っている人といる、お仕事をするということが楽しく生きるコツでもあるかと思います。自分の心に忠実にするということだと思うんです。いやな気持ちになる場所には別に行かなくてもいいですし、ブラック企業とか昨今色々ありますけれども盲目的にならないで、そうじゃない世界もたくさんあるということに、いかに気づけるかということなんでしょうね。選択肢はないようであるというか、死ぬまで追い込まれてしまうような、そういう社会や環境は良くないな、と思います。ぼくも、どちらかといえば昔は敷かれたレールに乗っていたようなタイプなので、レールからそれるのが今でもとても怖いのですが、勇気を持たねばなとも思います。ルールとか常識って、自分で思いこんで、勝手につけていることも結構ありますよね。もし勝手にひとりで思いこんでいただけならば、気づいたときにそれを外す。そして、もし必要になったらまた自分でつける。そんなことを、日々、意識的にやろうとしています。その意味で、自分の心と向き合ってみるのは大事だと思います。
不思議なものでそういう心がけで活動をしていたら、似たような志の人とたくさん出会うようになりました。素敵な出会いは、今もどんどん増えています。会う人会う人面白い。意気投合して結果的にお仕事にもつながったり、循環しています。本当にありがたいことです。

記者:自分の無意識のとらわれを突破することが「楽しい」にいくことだということでしょうか。田丸さん、今日は貴重なお話をどうもありがとうございました!!

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田丸さんについての詳細情報についてはこちら
↓↓↓
公式サイト 
http://masatomotamaru.com/

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【編集後記】
今回インタビューの記者を担当した見並、戸来です。
ご自身が作品を生み出すだけでなく、書き方を広げる活動の背景には
色々な縛りや常識は案外自分の心が勝手につけている、だから多彩な見方をできる柔軟な心をショートショートで養いましょう、楽しいから!ともっともっとみんなを楽しませたいというメッセージが込められているのだと思いました。これからも応援しています。

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