合同会社MAZDA Incredible Lab CEO 松田孝さん

プログラミング教育をトリガーに、教育観自体の大きな変革を志されている、松田孝さんにお話を伺いました。

松田孝さんプロフィール
出身地:東京都
活動地域:東京都、石川県、群馬県、全国各地
経歴:東京都公立小学校教諭、東京都狛江市教育委員会主任指導主事(指導室長)をはじめ、東京都の小学校校長を3校歴任。2019年4月より合同会社MAZDA Incredible Labを立ち上げ、代表に就任。
現在の職業及び活動:合同会社MAZDA Incredible Lab CEO、総務省地域情報化アドバイザー、金沢市プログラミング教育ディレクター、小金井市教育CIO補佐官
座右の銘:「雲の如く
雲の如く、高く
雲の如く、輝き
雲の如く、とらわれず」

Society5.0の社会に向けた学びの場

記者:松田孝さん(以下、松田 敬称略)はどのような夢やビジョンをお持ちですか?

松田:Society5.0の社会を生きる資質、能力を育む学びの場を広げていくことです。

Society5.0は、コンピュータが創り出すサイバー空間と現実のフィジカルな空間が渾然一体となった社会です。子供達はそんな社会を主体的に生きていかないといけないのです。そこで生きていくためには、物理的な空間とサイバー空間にはどのような関係性があって、それぞれどのような特徴があるのかをしっかり理解しておかなければいけません。

プログラミングそのものを子供達に教えるという発想ではなく、プログラミングをトリガーにして、いかに新しい学びを実現できるのかを考えています。そのための場が学校でもいいし、総務省が進める地域ICTクラブのような場を実現できればと思っています。

プログラミングは新しい表現メディアであり、その技術があれば自分の思いをコンピュータを介して実現することができます。つまり、人間が表現できないことを表現することができるのです。

また、プログラミングは現代の砂場遊びでもあります。砂場遊びは幼児時代、教育的に意味がある活動だと言われていますが、子供に砂場遊びを教える人はいません。砂場遊びによって子供達が自ら知的で情緒的な気づきを得ることができるように、プログラミングもトライ&エラーが簡単にでき、気づきをシェアすることができます。

GIGAスクール構想をキッカケに学校に入っていく

記者:「Society5.0の社会を生きる資質、能力を育む学びの場を広げていく。」という夢を具現化するために、どんな目標や計画を立てていますか?

松田:国が始めたGIGAスクール構想をキッカケにしながら、学校現場に入っていきたいです。

令和2年4月に著書「学校を変えた最強のプログラミング教育」を出版する機会があり、その本について講演する機会があるでしょう。また、国がGIGAスクール構想を打ち出し、令和5年までに全部の公立小中学校に1人1台の情報端末と高速通信ネットワークを整備する計画を立てています。これらは、ICTを活用した新しい学びの在り方を広める絶好のチャンスだと考えています。

※YouTube動画
「学校における1人1台端末環境」非公式プロモーション動画〜学校を変えた最強のプログラミング教育〜

地域で学ぶ場を創っていく

記者:松田さんは現在どのような活動指針を持って活動していますか?

松田STEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics)の知識を子供達が自ら獲得し、プログラミングを通して社会を主体的に生きていくコンピテンシーを育む場を地域に開きたいです。

記者:地域で学ぶ場の候補としてはどのようなところがあるのでしょうか?

松田総務省が地域ICTクラブを、2020年に17か所、2019年に23か所、合計40地域、つくっています。この地域ICTクラブを主軸にしながらネットワークづくりを行っていくことに加え、民間にも学ぶ場をつくりたいです。「教える」という発想ではなく、「子供達が自ら学びにくる場」です。

今、20万人不登校の子供達がいます。不登校というより登校拒否です。現行の学校制度やその内実に違和感を感じ、何かおかしいと思っている子供達が学校に行かないことを自ら選択しているのです。そういった子供達にそれぞれの興味で主体的にSTEAMSを学ぶ場を開いてあげれば、自然と学びの場に集まってくるのではないかと思っています。

子供達が学んだことを振り返って書くことで、AIが「こういうことを学んだらもっと楽しいんじゃない?」とリコメンドしてくれるシステムがあれば、子供達は主体的に学んでいきます。AIとのやり取りだけではなく、学ぶ場にはメンターがいて、直接コミュニケーションを取りながら行います。

プログラミングを通した子供達の学ぶ姿が素敵だった

記者:そもそも「Society5.0の社会を生きる資質、能力を育む学びの場を広げていく」という夢を持ったきっかけは何ですか?そこには、どのような発見があったのですか?

松田通常の授業では5分も集中して授業を受けることができなかった子供が、プログラミングの授業では90分集中して学んでいるのです。プログラミングでの子供達の学ぶ姿がとても楽しそうで素敵だったのです。

36年間教員をしてきて、私なりに「子供達にとって良い教育とは何だろう?」ということを考えてきましたが、実現できませんでした。それが、プログラミングによって簡単にできてしまったので、最初は意味がわからず不思議でした。

小金井市の前原小学校で校長を務めていた最後の3年間は、周りからの反発もありながら、プログラミング授業を推進して最後には教職員とは「このような学びの在り方、教育の在り方があってもいいんじゃないか。」という、意思疎通が図れるようになったと思っています。

私はプログラミングという新しい学びを上手に教えたいわけではありません。プログラミングの学ぶ姿をコアにしながら、これまでの教育観や学習観を全部ひっくり返したいのです。多くのプログラミング教育を導入する学校は、まずは先生達ができるプログラミングの教え方を広めようとしています。しかし、先生達ができることが重要なのではなく、子供達がSociety5.0の社会で生きるためにどのような学びが必要かを考えることが重要なのです。

私がしてきたことは、これまでの教育観とは全く異なるので、疑問を呈する人もいます。そのような人達は自身が否定されているように感じるのでしょう。しかし、ニュートンの万有引力の法則を積み重ねていっても、アインシュタインの相対性理論には到達しないように、必ずパラダイムシフトが起きます。つまり、日本の教育がSociety3.0で成功してきて、それを工夫改善したとしても、Society5.0にのし上がる新しい学びができるわけではないということです。パラダイムシフトに立ち向かう勇気があるかどうかが問われています。

子供達が主体的に学ぶ良い授業をしたい

記者:「プログラミングでの子供達が学ぶ姿がとても素敵だった。」という発見の背景には、何があったのですか?

松田:アナログの時代から評価研究をそれなりに真面目に?してきたため、子供達が主体的に学ぶ良い授業をしたい思いが強かったことです。

例えば、集団教育の中で色々な考えが共有され、ブラッシュアップしていくような展開の授業をつくることがあります。子供達全員が課題に対する考えをノートに書き、授業が終わって全部集めて、次の教科の授業が始まるまでに印刷用の紙に、子供達の考えを全部私が書き写していました。そして印刷して、次の時間に配って読ませていました。しかし、この一連の作業は時間も労力もかかって、とてもじゃないけれど毎日なんかできないのです。

それが今は、テクノロジーを使うことで一発でできます。アナログの時代に、一生懸命良い学びをつくりたいと思っていてそれをうまく具現化できませんでした。しかし、ICTを通した学びの姿がそれを簡単に変えたので、これは使わないといけないと思ったのです。

記者:今日は貴重なお話を、本当にありがとうございました。

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編集後記

今回インタビューの記者を担当した吉田&夢野です。

インタビューを通して感じたのは松田さんの「真っすぐさ」でした。いくつかの質問に対する回答に一貫性がありましたし、その一方で新しい変化を受け入れる柔軟さも持ち併せてらっしゃると思いました。いくら反発を受けようとも、自らの姿勢態度によって理解者を増やしてこられた実践行動が素晴らしかったです。プログラミングによる教育観の変化をこれから多くの人々が受け入れることによって、子供達の可能性が広がっていくことがとても楽しみです。(吉田)

今後の更なるご活躍を期待しています。

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