「枠を超えた繋がりがもたらす可能性を広げたい」NPO法人アーチ・キャリア代表 井本七瀬さん
働く女性向けに社外メンターを紹介するNPO法人アーチ・キャリア代表の井本七瀬さんにお話を伺いました!
井本七瀬さんプロフィール
出身地:大阪市
活動地域:関西地域
経歴:人材業界でキャリアコンサルタントとして従事。育休復帰後、社内初の時短管理職となる。その後2018年独立。
現在の職業及び活動:NPO法人アーチ・キャリア代表。女性のキャリア支援、大学でのキャリア講座の講師なども行う。
座右の銘:人生は経験
記者 本日は、よろしくお願いします。
井本七瀬さん(以下、井本) よろしくお願いします。
枠を超えた繋がりをもたらしたい
Q:どのような夢やビジョンをお持ちですか?
井本 枠を超えた繋がりがもたらす可能性というテーマがどんな活動でもベースにあります。アーチ・キャリアでは、働く女性を対象に社外メンターを紹介する活動をしていますが、社外であることに意味を見出しているんです。もちろん社内でのメンターも大切ですが、社内と社外では役割が違うと感じています。組織の枠を超えた繋がりということに重きを置いています。
国の枠、世代の枠、性別の枠、地域の枠、そして自分の枠を超えることが大切です。枠のなかにいると知らず知らずに考えが凝り固まり、視野がせまくなってしまいます。自分が出会ってきた人や世界からしか選択肢が生まれないんです。さまざまな枠を超え、繋がりを持てて選択肢が広がっていくことで、みんなが自分らしく楽しく生きてりゃそれでいいやんと思うんです。
出会いによって人生は変わります。そしてその機会・きっかけは誰にでもあるのがいいと思うんです。個人の行動力に頼るだけではなくて、出会いという見えないものがプラットフォーム化されていて気軽に質の高い出会いを得られる世界にしたいですね。
どんなテーマでも枠を外すことに関わりたい
Q:その夢を具現化するために、どのような目標や計画を立てていますか?
井本 現在は働く女性向けに社外メンターを紹介するサービスを提供しています。メンターとはその人らしいキャリアを歩めるように、寄り添い伴走し経験に基づくリアルなアドバイスをしてくれる支援者です。社内でも家庭でも相談しづらい悩みを、安心して素直に話すことで次の行動へ進めるんです。登録メンターは全員現役会社員で、オンライン相談のため時間も場所も自由。悩みや職種に応じて適切なメンターを紹介しています。めちゃくちゃ素敵なメンターの方ばかりなんです。
企業内のマネジメント層にも自社メンバーの育成に社外メンターを活用してもらいたいです。今のマネジャーは多様なメンバーをマネジメントする必要があり、求めるレベルが上がりすぎていて大変だなと感じることがあります。独りで全てを抱え込まずに外部リソースをうまく活用することもこれからのマネジャーには必要な能力ではないかと思うのです。また、これからのリーダーはメンターとしての関わりを学ぶ必要もあると思うので、今後の計画としては、メンター育成の講座も広く提供していきたいです。あとは国を越え海外のメンターに実際に会いに行く「メンターmikkeワールドツアー」も敢行したいですね。
また、別の社会課題に向けたサービスも立ち上げたいです。例えば育児休暇を取得しようとする男性同士のネットワークづくりです。女性の社会進出とまったく同じ道を辿っていると感じます。今ロールモデルがほしいのはこの方々ではないかと。孤独、誤解や葛藤を乗り越えても取得してよかったという人を増やしたいです。いずれは若い世代が年配世代のメンターになるような逆メンターも実現したいですね。
日本の組織風土は同調性・協調性を重視するバイアスがあります。社外に味方をたくさん持つことで、何でもありどうでもありと行動できる人が増えていくと思うんです。当たり前という枠・常識を外すことに対して、どのテーマであったとしても関わっていたいです。
メンターは等身大でチャーミングであること
Q:先ほど井本さんから素敵なメンターを厳選されているというお話がありました。メンターとなる方の人物像はどのような方ですか?
井本 キャリアのバリエーションの豊かさは気を付けているポイントです。不妊治療をしたことがある人、夫の海外駐在でキャリアが一時的に途絶えてしまった人、専業主婦から再就職した方など多様な方がいらっしゃいます。
働く女性の歴史に目を向けると、男女雇用機会均等法が施行されたころの世代は、いばらの道を切り拓くスーパーウーマンでないと残れませんでした。つづいて、仕事と家庭の両立支援が整備され始めた世代は、両立はできても職場での活躍が難しかったです。これからの世代は両立して活躍もできるようになっていきますね。誰もが活躍できるために等身大であることを重視しているので、メンターは「私も同じです、ちょっと頑張れば私もできるかも」と共感されやすい、普通だからこそ素敵という方がいいんです。
「アーチ・キャリア」の”アーチ”には茶目っ気という意味もあるんですよ。私自身が素敵だなと思う人に共通してることってなにかなって考えた時に「チャーミングだなぁ」と思えるかどうかが重要だと気づきました。素晴らしいキャリアをお持ちであっても、失敗談を惜しみなく披露できたり、出会いに常に感謝をし、誰にでも分け隔てなく対応できる方は本当に素敵だと思います。
思い悩んだ会社員時代。
誰もが出会いのきっかけを手にできるプラットフォームを作りたい
Q:夢を持ったきっかけは何ですか?そこにはどのような発見や出会いがありましたか?
井本 私は2年前まで会社員で、新卒で入社して以来同じ会社で働いていました。人材キャリア系の営業職として男女平等で昇進チャンスもあり本当に楽しかったんですが、思いのほか早く結婚して出産することになったんです。そこでどうやって自分の価値を出していくかにぶち当たりました。
それまでは会社から求められることに一生懸命応えることで成果を出してきました。飲みに連れていったり一緒に残業して部下のフォローしたり・・・。しかし、時間の制約ができ、そうできなくなった私はどうしたらいいのだろうかと悩みましたね。昇進のお話も断った時期もありました。
そこで、育休中によくばりに素敵にやっている方で”普通の人”がいないのかと社外の人にたくさん出会いに行ったんです。パワーママプロジェクトに出会い、関西の立ち上げに関わらせて頂いたおかげで、こんなにたくさんいたんだ!と思えました。会社員でも少し先を行く素敵な人たちとたくさん繋がることが出来たんです!その人たちが社外にいると思うだけで頑張れたり、彼女たちからアドバイスを聞きながら正解はないんだと気づきました。
同時に自分がどれだけ枠にとらわれていたのかとハッとしました。日本の女性は母親として社会人として同調性の圧力が大きいですよね。社外に味方がいることで自分らしく働けるようになりました。
私自身は自分から外へ出ていけるタイプだったから繋がりが作れたのですが、そうではない大多数の人がいることも感じました。出会いによって人生は変わります。能力の問題ではなくきっかけがあるかないかで人生が変わるので、誰もがきっかけを手にできるプラットフォームを作りたいと思うようになりました。
そこで2017年度の京都府の事業「メンター・メンティーマッチング支援事業」でメンターを担当したメンバーが中心となり、NPO法人アーチ・キャリアを立ち上げたんです。
二度と同じことを繰り返さない!
Q:その行動の背景にはどのような思いがありましたか?
井本 実は、小さいころにも同じようなエピソードがありました。私は日本の女の子ど真ん中という感じで意見の主張もできない子だったんです。人の目ばかり気にして自分らしくいられず苦しかった記憶があります。小学5年生のとき両親の薦めもあり、インターナショナルスクールのサマーキャンプへ参加しました。海外の学校では意見を言ったら「ナイス!」と言ってくれ、当たり前のことですが、学校の外にも世界があるんだと衝撃を受けました。そこから中学校でも海外へホームステイへ行き、学校以外の友だちができ、高校も違う環境に飛び込むことで徐々に自分自身の枠が広がっていきました。
年月が経ち会社員になり、結婚もしたのですが、今度は仕事と家庭の両立に失敗して「いい奥さんにならなきゃ」「リーダーなのにできていない」などと縛られてしまいました。組織や社会の枠の中で勝手に苦しくなってしまったんです。
「これでは昔の私と一緒じゃない?次に母親という役割が増えるときには二度と同じ失敗をしたくない!」と思い、育休中にたくさん活動したことで、ご縁が繋がりました。
Q:最後に読者の方へメッセージをお願いします。
井本 楽しそうおもしろそうだからやってみようだけでいいと思うんです。それっぽい理由をつけたくなるし誰かのためにと言いたくなるし課題解決を結び付けがちなんですが「おもろそうやん」だけでみんなが動けばいいんじゃないかなって思うんです。最終的にはふざけて生きたいですね。それがめぐりめぐって誰かの役に立てばいいけど、誰かの役に立つことを目指す必要があるのかなって。みんながそれぞれの場で楽しくやることを大事にできればいいですよね。
記者 井本さん、本日はどうもありがとうございました!
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井本七瀬さんに関する情報はこちら
NPO法人アーチ・キャリア
https://archcareer.org
【編集後記】
インタビューを担当した稲垣、山口です。大きな夢を持ちながら目の前の方の生き方に寄り添うよう等身大を大切にされている姿が美しく、私たちもとても共感しました。貴重なお話をどうもありがとうございました!