紙芝居をビジネスツールに! 紙芝居師 藤井 一さん

関西を中心に、紙芝居師としてご活躍されている、藤井 一さんにお話を伺いました。

藤井 一さん プロフィール

出身地 大阪

活動地域 関西

経歴 大学卒業後、アパレル業界において店舗運営、販売促進、マーケティング、財務部門での業務に従事する。2008 年より独立して現職。街頭紙芝居を口演する一方、教育機関、企業等団体において「管理職研修」「プレゼンテーション研修」「話し方研修」の講師を務める。大阪市「西区まちの活力創造プロジェクト」認定事業運営。

ナレーターとして舞夢プロ所属、企業 VP、再現ドラマ、CM 等 出演。

AIにはできない紙芝居

記者 藤井さんは、なぜ紙芝居師として活動されているのですか?

藤井 一さん(以下、藤井 敬称略)
 僕は、AIやロボットにできないことをしようと思って紙芝居をしています。今はなんにでもAIとつけるようになって、AIやロボットでいずれなくなる仕事と言う情報もたくさん出ていますね。
 紙芝居をやっていても、時折「動画じゃダメなんですか」と言われることもあります。でも、15分の動画だったら、見るのに15分かかりますよね。僕は、内容を伝えると言う点に関して言えば、25分の紙芝居を3分でもできるんです。しかも、お客さんに応じてオチも変えるんですよ。AIやロボットにそんなことできますか?話を聞いている時に、瞳孔の開き具合や脈拍や血圧を感知して、この話はウケていないからこの話は変えようというAIが出てきたら、僕は紙芝居をやめます。僕が生きている間にはそんなAIは出ないだろうなと思ってます。

紙芝居をビジネスツールにする

記者 藤井さんはどのような夢をお持ちですか?

藤井 「夢」っていうと優等生っぽいイメージで、自分で吹いちゃうので、夢は無い、といつも答えてしまいます。新しい物好きで色々と興味は湧くし、やりたいこともあるんですが、「夢」という言葉がしっくりこないんです。「夢」とさえ言っていれば、できなくてもいいように聞こえてしまうんです。to do とか as soon as possible という表現がいいですね。
 あえて夢として喋るなら、紙芝居の可能性を開くことです。今は「演じるもの」としての紙芝居が主流ですが、ビジネスツールをはじめ様々なツールとして紙芝居を考え、扱う社会にしたいです。
 今の時代みんなパワーポイントは当たり前のように使うじゃないですか。その代わりに、紙芝居を使って欲しい。
 プレゼンの準備をする際に、一回アナログで書いてみてください。紙でバラバラにしておくと、原寸で全部広げてみることができるでしょう。それを全部テーブル一面に広げて見るようなソフトもアプリもまだ無いんです。画面だと、枚数が増えるほど1枚が小さくなってしまう。アナログでしかできないことです。原寸で広げて、そこに書いてあるワードを見ながら内容を整えていく。コピーライターがやるやり方でもあるんですけどね、それを紙芝居でやってみればいい。
 本屋さんでも、プレゼンの本はたくさん売られています。どれを読んでも結局一緒なんですよ。ただ、それをいかに自分の言葉にするか。それが僕にとっては紙芝居なんです。

記者 確かに、紙芝居でプレゼンというのは、ありそうでない、斬新に感じる方法ですね。藤井さんは実際に、紙芝居を使った研修なども行われているんですよね。

藤井 僕は以前は婦人服売り場で働いていたり、コンサルをしたり、ナレーターとしてデビューしたりと、色々と経験させてもらいました。その中で、表現力研修や話し方研修をしたこともあったので、自分のHPにもその経歴を書いていたんです。するとコンサルティング会社の企画担当者から「研修をしたいんだけどできますか?」と問い合わせが来たこともあります。
 実際に開催してみると、「藤井さんこれはもっとやったほうがいいよ!」と言ってもらえて、会員となっているコワーキングスペースで開催されているセミナーでも話す機会をもらえました。
 そういった経緯もあり、最近 「日本で唯一プレゼンを教える紙芝居師」と名乗るようになりました。

記者 様々な経験が融合していって、紙芝居でのプレゼンや研修というスタイルが確立していったんですね。
 紙芝居を様々なツールとして広めていくために、日々どのような活動をされていますか?

藤井 まず、紙芝居と言うと子供向けなイメージがありますが、大人が酒飲みながら見てもいいじゃないかと思って、かつてバーに行って紙芝居をやったんですよ。その時は所属していた協会から「バーでやるとは何事だ」って止められてしまいました。でもそこをもっと面白くしていきたいという気持ちもあり、その協会からは離れました。
 その後、ご縁があり、松下幸之助歴史館に子供向けコンテンツが少ないということで、紙芝居を提案し、作って披露したんです。自分が絵を描けないので、オリジナルをやろうとはもともと考えていませんでしたが、これをきっかけに、オリジナル作品をもっと作っていくことを考えました。自分で描けないなら描いてもらえばいいということにも気がつき、それをきっかけに終活紙芝居も生まれました。
 するとまた別のところから、こういう原作を紙芝居にしたいんだけど手伝ってもらえないか、という話をいただき、構成などを手伝いました。その流れで作成や実際に紙芝居をやるところまで頼まれる機会にも恵まれ、披露しました。そこでの作品は結構難しい話だったので、子供向けにやって大丈夫かな?と思いながらも打ち合わせをしてやってみたのですが、あえて子供向けにしないほうがいいかもしれない、という話にもなっていったんです。

 紙芝居は、物を伝える時にすごく有効なツールなんです。絵と語りがあって、それを面白く喋る。それを聞く。だから昔は宗教の宣教にも使われたし、戦争中には戦争紙芝居がたくさん行われた。伝えると言うことに関してとても有効な手段なんです。ひたすら色々なところへ行って、色々な人と会って、ひたすら喋って、「それ紙芝居でやるのありだね」というのが増えていけばいいなと思います。

人間にしかできない感覚を表現すること

記者 AIに時代には必要なものは何だと思いますか?

藤井 人間にしかできない感覚を表現することです。場を読むこと、空気を察知してそれに対応することは人間にしかできない、まさに感覚だと思います。その感覚を表現するというのが、僕にとっては語ることなんです。
 語りをする人というと、落語家などもいますよね。本当にお喋りだけで映像をイメージさせる形です。僕は紙芝居師で、紙芝居を教えてもらっていた最初の頃には、先生から「落語家みたいな喋り方はするな」と言われていました。本当は絵が主役なのに、観客が自分をみてしまうからです。
 紙芝居にも考え方は色々あって、読み手は黒子だから後ろに隠れてやるという人や、子供たちの想像力を削がないように抑揚や声色も使わないという人もいます。紙芝居の絵が飛び出すように語るというやり方もある。それらが紙芝居の魅力だと思うし、AIやロボットにできないことで、だからこそ紙芝居をやり続けようと思っています。

記者 本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

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藤井さんについての情報はこちら

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■編集後記
今回インタビューを担当しました、岡田と山口です。
誰もが触れたことがあるのに、いつのまにか触れる機会の減っていく紙芝居。今まで知ることのできなかった、紙芝居のあらゆるツールとしての可能性や、そこへ注がれている藤井さんの想いを聞き、とてもワクワクした気持ちになりました!
今後ますますのご活躍を楽しみにしております!

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