時代をよみ外へ車椅子シンガーソングライター朝霧裕さん

今回は、講演や執筆・コンサートで活躍しながら、独自の働き方・生き方を歩む朝霧裕さんにお話を伺いました。

プロフィール:
シンガーソングライター
10万人にひとりの発症率とされ、全身の筋力が発育せず、徐々に弱くなる難病ウエルドニッヒ・ホフマン症(進行性脊髄性筋委縮症)を持ちながら作家、歌手として活動する。
出身地:埼玉県
座右の銘:『心和し気平らかなるものには百福自ずから集まる』『あなたが望む世界の変化にあなた自身がなりなさい』  生活は24時間介助サポートが必要な中「生活保護を受けながら、在宅での執筆や講演、コンサート等で仕事もする」という独自の働き方・生き方をブログやエッセイに等身大につづっています。

写真撮影:三好祐司

『一番のマイナスが一番の武器に』

記者 「どんな心の在り方や認識の変化が今の活躍に繋がっていますか?」

朝霧 「昔は、障害をもつ人の生活や、生活保護制度にも理解が今よりも乏しい時代だったので、介助さんからも『あなたたちはいい身分よね』って言われたり、精神的虐待うけたこともありました。
特にそのころメディアにもあおられて、生活保護バッシングが多かった時期だったのですが、このままでは、だめな自分なんだ、だめな人間なんだ、、、と感じて、3年くらい鬱でお医者さんにいっていたこともありました。そのときはすごくつらかったんですけども、でも、社会の状況が変わってきたのもあり自分も変わりました。私が一人歩けないことで、実際に、介助では、月に約10人の女性の雇用を生み出していて、また、この身体で生きる私だから伝えられることがある。だんだんそれが仕事にもなって。講演などでは武器になってますし、自分の生きるための、心の足場になるというか『がんばるぞ』と踏ん張るときの一番の力になってます。」

『家でひとりぼっちにさせない技術』

記者 「朝霧さんの学生時代は、まだまだバリアフリーがひろがっていなかった時代で、今よりも障がい者への理解が少なかった時代ですよね。しかし、今は駅やデパートなど、どこへでも出かけられるようになってきている。外へ出たくても出られなかった時代を知っている朝霧さんの時代を読む力があったからこそ、今の活躍があられるのを感じますが、朝霧さんからみて、AIが活躍する時代に求められるニーズとは何だと思いますか?」

朝霧 「なんだろうな、でもひとつは孤独を解消するためにAIを使う。
でも、この電動車いすも、AIとはまた違うかもしれませんが、科学技術を障害をもつ人に活かしたものですし、障害が進んで、だんだんと、手動の車いすが、自力でこげなくなったとき『もうひとりで動けなくなっちゃうのかな。』と、圧倒的な恐怖でしたし、中学から高校にかけての一時期、目に見えて障害が進行したとき、揺れ動く心の中を、人には話せませんでした。自力でこげなくなった車いすから、再び、電動車いすに乗り、一人で動けた時の喜びは、一生忘れ得ぬものです。特に、車いすや、寝たきりの方に根底で共通する思いは、ひとつは「動けなさ」です。わたしも車いすを降りたら、自力では、災害時など「這ってでも逃げろ」と言いますが、一歩も動けません。もし、車いすに乗ることも難しく、寝たきりの方であれば、今のわたしの感じている何千、何万倍の潜在的な危機感やストレスを持っていると思う。『圧倒的な動けなさ』を脱する技術。また、もし、ご自身の身が寝たきりなどで動けなくても、スマホのテレビ電話機能とかも今はあるけど、さまざまな、今ある力を使って、社会と、人と、つながりを持つための技術。『動けなさの解消』に、AIも、発展してほしいです。」

記者「朝霧さんの話を聞いているとこれからの時代、障害のあるなしではなく気持ちが外に向くかどうかで世界の広さって変わるんだなぁと感じました。朝霧さんは、どんな美しい時代を創っていきたいですか?」

朝霧 「質問が壮大ですね。身体性にこだわらず、本当に誰もがやりたいこととか、意志、魂の底からやりたいって思ったことがかなえられることが、苦労に苦労を重ねていくのではなくだれもが権利としてかなえられる時代になってほしいですね。
あまりにもありきたりな言葉になるんですが、多様性が認められる時代になればいいなって思うんです。
身体でも、ものごとの価値観でも、違いを、排除しあうのではなく、尊びあえる時代になるといいなと思います。言葉で言うと、すごいきれいごとのようですけど、お互いが大切にし合える。世代が下にいくほど、個人の身体性や価値観の違いを認める心を持っていると思う。何らかの苦労話と一対になっていないとかなわないというのを終わりにしたいです。」

記者「本当にそうですね。特に、”何らかの苦労話と一対になっていないとかなわないというのを終わりにしたい”というお言葉、私も心からそう思います。尊びあえる時代。是非、一緒に創っていきたいです。今日は本当にありがとうございました!」

時代の流れを読めるかどうかが個人の活躍にもつながっていく。

AI時代がすすめば進むほどに活躍をするのに身体性は関係がなくなっていくというのを感じ、大変こちらとしても学び多い時間でした。多くの方に朝霧さんの生き方が届くといいなと思っております。朝霧さん、本当にありがとうございました。


朝霧さんの詳細情報はこちら
コンサート開催情報も!!

オフィシャルウェブサイト
https://yuhasagiri.jimdo.com/
facebook…朝霧 裕
Twitter @dacco3
CD「ファイン」「空の音」(ともに自主製作)他

単著
バリアフリーのその先へ!――車いすの3.11(2014年、岩波書店)他
写真詩集・零(電子書籍版 2011年、水曜社、honto 写真:三好祐司 音楽:奥野裕介)

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