株式会社ModelingCafe 福岡支社代表 ”北田栄二さん”

個人としての成功よりもチームとしての成功を模索し、国内外の世界最高水準の映像制作現場で得た経験・技術をCG(※1)業界へ還元する、”北田栄二さん”からお話を伺いました。

北田栄二さんプロフィール
出身地:
大阪府
活動地域:福岡県
経歴:コンピュータ総合学園HAL 大阪校を卒業。上京し、Modeler/Texture Artistとして株式会社スクウェア・エニックス ヴィジュアルワークス部へ移籍。 2010年から活動の場を海外に移し、3か国を転々とした後、2014年11月に帰国。2015年1月から株式会社ModelingCafe福岡支社代表に就任。
現在の職業および活動:ModelingCafe福岡支社代表、九州デザイナー学院ゲームクリエイター学科特別講師
座右の銘:「一片の淀みなく己が道を貫く」

「マネジメント・教育・経営」

Q1.北田さんは普段、どのような仕事をされているのでしょうか?

北田栄二さん(以下、北田):普段行っている仕事としては3つあります。

1つ目はチームのマネジメントです。
常にプロジェクトが数個同時に走っているのですが、限られたリソースで回さなければなりません。メンバー一人一人にも性格の違いがあるので、うまく仕事を割り当て、気持ちよく仕事をしてもらうための環境創りを行っています。

2つ目は人材教育です。
九州デザイナー学院のゲームクリエイター学科へ、月に1回教えに行っています。優秀な人材を輩出するためにも、20年間の経験で得たノウハウや知識を業界へ還元しています。

3つ目は会社の経営です。
ModelingCafeの中で福岡支社を経営しながら、東京本社の経営も見ています。

記者:会社のことだけでなく、業界全体のことを考えてらっしゃるのですね!

「少数精鋭のチーム作り」

Q2.北田さんが思い描くこれからの夢・ビジョンを教えてください。

北田:少数精鋭のチームで、より良い仕事、楽しい仕事をしていくことですね。分野としてはエンターテインメント、その中でも特にゲームを主軸にしていきたいです。

チームを大きくし過ぎると、管理コスト、教育コストが上がり、仕事の質を保つことが難しくなってしまいます。10~20人の小さなチームで、他社ではできない、日本国内で世界トップレベルの仕事をしたいです。

専門学校時代からCGに関わっていて、CGを道具として使う点は20年以上一貫しています。CGの魅力は、実在する世界も実在しない世界も、何でも再現できることです。

記者:CGを中心とする点は一貫しながら、個ではなくチームでの成功を大事にされていることが伺えます。

「CG業界への還元」

Q3.北田さんの夢を実現するため、どのような目標や計画を立てているのでしょうか?

北田:少数精鋭のチームを作るためにも、これからCG業界に入ってくる若い人達を教育し、優秀な人達を業界に還元していきます。

日本では今、大きな会社が細分化してフリーランスが増え、どんどん馬力が無くなってきています。一方、中国は人口面で母数が多いので質が高いものを量産することができます。

個人では世界で戦うことはできません。日本は、全体としては同じ方向を向いているのにも関わらず、チームとして一緒に取り組めていないがゆえに、大きな仕事を成し得ないという状況があります。

ModelingCafe福岡支社の計画としては、オフィスが手狭になってきたので、2020年の3月までに移転を予定しています。私は5年ごとに計画を立てるようにしていて、2020年4月が5か年計画の終わりなので、1つの区切りとなる可能性もあります。

記者:フリーランス増加は働き方の多様化という意味でメリットとして捉えていましたが、組織で戦うという意味ではメリットばかりでもないのですね。

「自由に何でも創ることができる!」

Q4.北田さんが「少数精鋭のチームで良い仕事をしたい!」という夢を持ったきっかけは何ですか?

北田:「何にも制限されずに、自由に何でも創ることができるんだ!」と気づいたことですね。

きっかけは専門学校に入学し、PlayStation(※2)でファイナル・ファンタジー7(FF7)のグラフィックを見たことでした。それまではダラダラと勉強するタイプで、ただ単にゲームや映画が好きなだけでした。FF7との出会いによって、初めて「CGを作る仕事があるんだ!」ということを知りました。3DCGの可能性を感じ、仕事として目指すようになりましたね。

一番の衝撃は、それまでは2次元のドット絵が当たり前だったのが、FF7では3次元のCGになったことでした。2Dが3Dへと次元が上昇したのです。

また、個ではなくチームとして考えるのは、サッカーをしていたことも大きいです。私だけでなく、私が働いている業界・チームが良くならないと幸せになれません。そのような背景もあり、一人一人の個性を活かしながら組織を創るという、相反するもののバランスを取ることに気を使っています。

記者:CGとの出会い、そしてサッカーというチームスポーツをされていたことの影響が大きいのですね。

「可能性を制限される自分を認識」

Q5.「何にも制限されずに、自由に何でも創ることができるんだ!」と気づくことができた背景には、何があったのですか?

北田:可能性を制限されている自己を認識したことですね。

常に新しいことをしなければ、つまらなく感じ、腐ってしまいます。FF7との出会いによって3DCGの斬新さ、可能性に気づいたのと同時に、それを自分自身に重ね合わせていました。それまでいかに自分の可能性を制限されていたのか、気づいたのです。

結婚して子供が生まれたことの影響もありました。子供の成長の速さを見ていると、自分が全然成長していないように感じ、より成長しようと海外で働くことにしたのです。日本の労働環境は非生産的で、ダラダラ働くのが嫌でしたね。

海外ではオーストラリア、シンガポールなどを契約ごとに転々としました。結果的にハリウッド映画で8本のクレジットを残すことができたのですが、子供のことを考えると、そのまま転々とするより日本へ戻ることを選択しました。

「可能性を制限されている自分」という自己を認識したことによって、天邪鬼な私は「何にも制限されず、自由に何でもやりたい!」と反対に思うようになりました。

気づくキッカケとなったのがたまたまCGだっただけで、もしかしたらサッカーを続けていたらサッカー監督になっていたかもしれません。

自己を認識したことによって、実在する世界も実在しない世界も、何でも創れるCGに大きな魅力を感じ、チームで良い仕事をするという、今の夢にも繋がっています。

記者:以上でインタビューは終了です。

ご自分の会社だけでなく、業界全体のことを考えてらっしゃる点、常に新しいことに取り組み続ける点が本当に素晴らしいと思いました。

本日は貴重なお話、ありがとうございました!

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(※1)CG:コンピュータグラフィックス(computer graphics)。コンピュータを用いて作成される画像のこと。
(※2)PlayStation:ソニー・インタラクティブエンタテインメント により開発・発売されているハードウェアおよびそのシリーズのブランド名、トレードマークのこと。

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【編集後記】インタビューの記者を担当した吉田&風見です。

可能性を制限されている自己を認識したと同時に、CGというバーチャル空間に広がる無限の可能性と出会われた北田さんでした。

今後の更なるご活躍を楽しみにしています。

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