「女性リーダーを育て社会のイノベーションに貢献する」日本女子経営大学院代表理事 河北隆子さん

女性リーダーを育成するビジネススクール「日本女子経営大学院」代表理事の河北隆子さんにお話を伺いました。

 

河北隆子さんプロフィール
出身地:東京都
活動地域:首都圏
経歴:1960年東京生まれ。コクヨ株式会社、マンパワージャパン株式会社マーケティングサービス事業部を経て、人と組織のコンサルタントとして独立。大手自動車企業ブランド変革の教育プログラム開発及び展開を7年にわたり従事し、2003年イノベーションアソシエイツ社を創業。2015年1月、日本初、女性リーダー育成の専門のビジネススクール~日本女子経営大学院を開学、現在に至る。
企業、公教育、自治体他多様な産業において、人と組織に関するリーダーシップ開発、チーム開発、組織風土変革、イノベーション支援の実績を多数持つ。人と社会が循環して起こす幸福で共創的な日常のイノベーション創出のために、自由で多様性のあるビジネスに挑戦している。
現在の職業及び活動:日本女子経営大学院 代表理事 学長
イノベーションアソシエイツ株式会社ファウンダー、生涯学習開発財団認定コーチ、ジョージワシントン大学大学院コース修了GIAL認定シニアアクションラーニングコーチ、日本メンタルヘルス協会心理カウンセラー基礎認定、文科省学校力向上検討委員。
座右の銘:Life is short, life is journey.

 

記者 本日は、よろしくお願いします。
河北隆子さん(以下、河北) よろしくお願いします。

 

女性ビジネスリーダーを育て社会のイノベーションに貢献する

 

Q:どのような夢やビジョンをお持ちですか?

河北 誰しも一人ひとりがのびのびと自己実現し、仕事においても成果を生み出しつつ、自分の個性や才能を、生きること働くことに活かし、家庭や地域がもっとハッピーに繋がり、社会が豊かになっていくことを、大真面目に考えています。(笑)

その為には、枠を超え、新しい価値をイキイキと創造してゆけるリーダーが必要です。第1歩として「日本女子経営大学院」という女性リーダー向けビジネススクールを運営して5年目を迎えましたが、真のリーダー、意思決定者になる人を育てることにより社会のイノベーションに貢献したいと考えています。

「自分の未来を創るジブン」を育てる学校である当校は、最高の学び合う場を提供し続け、修了生たちが将来、社会に現実的なイノベーションを起こしていけたらいいなぁ~と、その為の支援もしていきたいですね。

ご縁ある同期が一生の仲間となりながら必要な知見を勉強しますが、学んだことを深堀し内省し意味づけを持ち、日常の仕事に家庭に自分にいかに使っていくかという、経験学習とダイバシティ学習を大切にしています。どんな外部環境に変化しても、何からでも学習し自己成長しアップデイトしていける自分の軸と、思考と行動の連続から習慣ルーティンを掴んでいくことを大切にしています。

女性リーダーが少ないという問題は世界の課題ですね。もっとフラットにイノベーティブになるには女性の学びの支援は当然やらなければいけないことです。政府も動いてはいますが、現実が追いついていない。しかし企業はこの4年でずいぶん変わってきています。女性自身も基盤が整って背中を押してもらえるようになってきている。今がチャンスとふわふわしていた時期は抜け、これからが現実的には本番だと思っています。

 

 

もっと多様性を取り入れていきたい

 

Q:「女性ビジネスリーダーを育て社会のイノベーションに貢献する」という夢を具現化するために、どのような目標や計画を立てていますか?

河北 中期的には二つあります。一つはもっと周囲に多様性のメリットを実感させていきたい。もう一つは、もっと当校に多様性を取り入れていきたいですね。当校はダイバーシティを大切にしています。ビジネスパーソンという事と性別は同じですが実は多様性の宝庫です。多種多様な業種業界であり、職位も肩書も年齢も地域も異なります。組織人も個人起業家の人も役員も若手社員もおり、上司と部下のキャリアの違いを持つ人も、3人の子育て中のママも独身等も同期となり、、、沢山の選択肢をもつ女性たちは、女性というだけで十把一絡げには出来ません。

一つめの「周囲に多様性のメリットを実感させたい」について、以前に修了生の女性3割と優秀な男性7割を対象とし実験的なオープンプログラムを実施した際に嬉しかったことがありました。それは修了生が、事業戦略についてフラットに議論し、異なる視点を投げ、創造的な議論でチームのイノべーションに大いに貢献していたこと。また何より嬉しかったことは、共に学んだ男性達が女性活躍の意味や企業へのメリットを実感したり、無意識に女性のリーダーへの固定概念や前提を持っていたことに初めて気づいたとシェアしてくれたことです。マジョリティ側は頭ではわかるが、なかなか実感を持てずにいることを知っていただけに、管理職層のマジョリティである男性が多様化によるメリットやその実感を得る機会こそが、大変有効な突破口になるのはないかと改めて感じています。

二つ目の「多様性を取り入れていきたい」については、ひとつのアイデアとしてですが、障がい者や外国人、養護施設の方などを奨学生として10%意図的に受け入れること等も検討したいと思いますね。彼女たちは本当はよいリーダー、イノべーターになれるかもしれないところをプラスオンの教育を受けられない現状です。奨学金制度の枠組みを作ってクラウドファンディング等を活用し社会で応援できる仕組みを作りたいです。当校にいる一流企業のリーダーの卵たちにとっても素晴らしいことだし、共に学び合った仲間が一緒に新しい事業を作り出すかもしれない。育った先の社会に貢献できたらとても面白いじゃないですか。

記者 希望になりそうですね、今までの価値観がひっくり返りそうです。

河北 そういう面白いことができる学校にしたい。次世代リーダー育成ですから、単に企業の管理職という立場に短期的に昇格するためだけの育成機関という形は全く考えていません。

 

 

戦略的に女性限定にしている理由

 

Q:その目標や計画に対して、現在どのような取り組みをしていますか?

河北 「なぜ女性限定なのか」という質問をよく受けます。実は戦略的に女性限定にしているんです。

女性のリーダーシップ育成において一定期間の女性限定の環境は、学習効果をより高められます。男性と女性は、リーダーシップという文脈においてはですが、学ぶべきところがあまりにも違います。また、個別の違いは大きいものの性別役割意識や無意識の囚われ等、共通の課題があり、短時間で学ぶなかではとても有効なんです。

例えば、男性は生まれた時からリーダーのように積極的にふるまう事を期待され、そうする事で好感を得られますよね。女性は男性と同等な行動でなく、場や相手の感情を察知し状況を見てサポートの役割を期待され、それにより好意を得られたりします(男女ともから)。ですから、決して相手を脅かさないという保証を示しつつ同化し、その期待に応え一歩引いた行動をとりがちの傾向があるんです。女性リーダーには、リーダーへの期待と女性への期待という二つの相反する期待やバイアスがかかるためふるまい方に対して男性リーダーにはない難しさが存在するわけです。

会社のリーダー管理職研修等で男女一緒に学びますが(各社個別の差異は大きく一概には言えませんが)管理職の役割や知識は得られるものの、女性本人はやや複雑で、リーダーとしての自分軸やリーダー観についての実感、その行動がやや紐づきにくいのです。

 

 

ですからout of boxという概念をとても大事にしています。日常の箱から脱却して、一定期間女性同士のフラットな状態で、相反する期待やバイアスの複雑さから一旦解放され、自分自身を外側から俯瞰してみることで初めて見える発見があるのです。それはこれまで必死に進んできた、仕事、育児、プライベートの人生の踊り場で一旦立ち止まり、未来を創るための有効な機会となります。

なぜ生き、なぜ働くか、キャリアとは、リーダーとは何か、変化する社会とどうかかわるか、自分に引き寄せ考え探求し、自分なりに意味が繋がるためには、会社の日常の中での勉強で改善するだけでは少し足りません。自分の人生や仕事や未来のキャリアを考える場合、国内留学みたいに違う場所で、少しでも非日常から俯瞰的に観察して自己省察することが、次元の異なる大きな学びと成長を導き出すに繋がるんですよ。

 

 

最後に、女性限定ゆえ、多様性の本質が理解しやすいという利点もあります。女性だけだと多様性がないとよく言われるんですけど、女性だけのほうが「こんなに違う!」と気づきやすいこともあります。男性女性がいるだけで、なぜか性別の世界にすり替わって属性で見てしまいがちですが、ダイバシティの本質はそもそも属性でなく、本来は視点なのです。

自分を知り、異なる他者はいかに多様であるかを認識し、違いを使い合うダイバシティ学習はコースプログラムの中で一貫して導入しており、あらゆる授業に取り入れ成功体験を創るように設計しています。多様性の本質が属性にすり替わらずに自らの自己信頼とチームの多様性を実感として掴み、チームの創発や化学反応の成功体験を感じてもらいたいですね。

 

 

自分の本当の使命を考えた

 

Q:その夢を持ったきっかけは何ですか?そこにはどのような発見や出会いがありましたか?

河北 大学卒業後は日本的な企業に就職しました。そこで「そんなにがんばらなくてもいい、女の子はほどほどでいいんだよ。」と言われてモヤモヤしました。そこで「仕事って何だろう?自分はどういう風に生きていきたいんだろう?」と考えるようになったんですね。結婚退職後、人材派遣の外資系企業に入りました。人材育成事業に携るなかで自己開発されて27歳のときに「教育で仕事をする人になりたい」と決めました。

30代前半で独立し企業コンサルティングをしました。人と組織の成長と成果を作り出す圧倒的なイノベーション事例を多数生みだすことができたので自信になりましたね。40代前半で組織風土変革をコンサルティングする会社を立ち上げて、50代前半になったころ自分の本当の使命を考えたときに、政府が政策を掲げ旗を振る潮目が目前に見え、女性リーダーの育成が社会の課題解決になり共存共栄の世界につながるイノベーションのキーになると気づいたんです。

 

 

二者択一ではなく調和や循環が大事

 

Q:その発見や出会いの背景には、何があったのですか?

河北 二者択一ではなくて光と影、相反するものを受け入れ動かすことが大切だと思っています。

昔は選択と集中という言葉がありそれが何でも正しいみたいな風潮がありました。でも経済成長もしたいけど環境も大事じゃないですか。生産性や効率だけじゃなくてハッピーなのも大事。そういうのを調和させていくあり方やり方は本当はとても自然なことです。女性はその点が体に入っていると思うんですね。仕事でも家庭でもマルチタスクは得意だし、マイノリティ経験からダイバーシティマネジメントの感度は当然高いし。リーダーシップとしても指示命令型じゃなくて共有して巻き込むやり方が普通にできる。

記者 女性性・男性性が融合されてダイバーシティですよね。個人、組織、社会も分けて考えてしまっているのは個人の思考だけど本当はすべて繋がっている。

河北 そうなんですよ、みんなわかるんですよね。男女の性差やなど基本、関係なく。期待に応えることだけや他者と比べたり、他者のOKで生きるのでなく、自分のOKこそが大切であることが。遅すぎることはなく、これから自分のストーリーを創っていいことを。子育ても含む自分の成長が企業の成果に繋がり、社会の価値創造と繋がっていくことが。だから無理してアドレナリン出すのでは決してなく、自然体で、自信や誇りを持てるようになります。

当校では修了式のときにリーダーシップ論文を書き優秀者は発表するんですが、見学に来た企業さんから「みなさん組織へのパフォーマンスだけでなく、自分の自己実現や家族の話と社会の価値創造を連動して話すのが特長ですね」と言われました。循環させていくことが女性がわかったら本当に強いと思うんです。働き方と生き方がそもそもつながっているんですよね。

 

Q:最後に、読者の方へメッセージをお願いいたします。

河北 たくさんの受講生がよく連絡をくれます。「益々輝けるように、自分磨きも頑張ります!そして、へこたれず挑戦していきます!また色々とヒントを貰いに行きます!」というメールが来ました。いつも大変励みになります。嬉しいですね。

また、共感してくれる、尊敬する、道を切り拓いた女性リーダーの先輩方、社会を牽引する企業の現役リーダー、起業家の皆さんが、受講生である妹たちに温かく手を貸してくださっています。バトンを送るようにリーダーがリーダーを育てるのです。本当に感謝です。上から下に教えるのではなく、互いに学び合い響き合い育ち合い、循環するように見えますよ。

年に2回開催しているイベントでは、じぶんの可能性を広げたい働く女性にとって陽射しを浴びるような経験になりますので、ぜひご参加いただければと思います。

私という個人については、なぜという気持ちをスルーしない探求心と、なんでも楽しめる天才だと思いますが、そうは言っても・・・失敗も多く、腹が立ったり落ち込んだりすることもありますね。はい、修行は足りないっ(笑)
どんなときも、背筋を伸ばし清々しく生きる事、もっとスマイルで気持ちよく、ご機嫌にに生きたい!と思っています。

読者の皆さんにとっても自分の可能性を広げていくお手伝いができればと思っています。

記者 本日はどうもありがとうございました!

 

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河北隆子さんに関する情報はこちら

●日本女子経営大学院公式web     
 https://wis-japan.org/
●日本女子経営大学院公式Facebook   
 https:www.facebook.com/wisjapan

【編集後記】

インタビューを担当した稲垣、三笠、撮影担当の岩田です。常にイノベーティブに進化を作っていきたいパワフルさの背景には、一人ひとりの可能性を発揮してほしい、その先に多様な人々が活躍できる循環する社会を作りたいという河北さんの熱い想いを感じました。女性だからこそ果たせる役割から境界線を超えた社会づくりが可能になるように思い、未来に希望を感じました。貴重なお話をありがとうございました。

 

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