世界の女性に種を蒔きたい「樋口メリヤス工業株式会社 代表取締役 中江 優子さん」

お客様の声に徹底的に寄り添い「かかとをなくした筒状の靴下”つつした”」を開発され、各種メディアでも取り上げられている樋口メリヤス工業株式会社 代表取締役の中江優子さんにお話を伺ってきました。

「つつした紹介ムービー」

プロフィール
出身地:大阪府
活動地域:大阪府交野市(製造直販店)
経歴:1933年に祖父が創業し父が引き継いだ会社を、6代目として倒産直前の状態で引き受ける。そこから多くの困難と向き合いながらもお客様の声に寄り添いメイン商品である「つつした」を開発し、各種メディアでも取り上げられるようになり多くのお客様の足元の悩みを解決する。現在は引き継いだ当初からの目標であった製造直販店も開始し、より多くの方へより良い商品を届けるために活動中。


“世界の女性に種を蒔きたい”

Q:どんな夢やビジョンをお持ちでしょうか?

いま世界を見渡したときに、まだまだ苦しい国が沢山あると思います。なので私は最終的には、そんな国で生活している女性たちが輝けるような種を蒔けるような人間になりたいと思っています。ただし全てをサポートしてしまっては自立する力を奪ってしまうことにもなるので、あくまでも私は種を蒔くだけで、芽を伸ばすのは本人たちだと思っています。そして結果的にその人たちに「ありがとう」と言ってもらうことができたらとても嬉しいです。

そもそも私がこういう風に思うようになった背景には、創業者の祖父の生き方があります。祖父は財産は残さなかった人なんですが、人のために尽くして、人を助けてきた人でした。なのでこの会社が倒産しかけた時に助けてくれた人は「わしは貧乏なときにお前のおじいちゃんに救われたから」と言って祖父が助けてきた人でした。その時はとても嬉しかったです。

そういう事もあり、自分の孫たちが「おばあちゃんみたいな生き方がしたい」と思ってもらえるような生き方を残したいと思っています。なので今でも子どもたちには「お母さんはお金は残さないかもしれないけど、お母さんにお世話になった人がいっぱいあなたに感謝するような生き方をしたいと思ってる」と伝えています。

「一足一色を手作業で作り上げる”つつした”」

“本当に良いものを作って、お客様に届けたい。”

Q:そのためにどのような目標や計画を考えていますか?

私はこの仕事をしてくる中で、繊維業界の色々な側面を見てきました。この業界はある時から、どんどんと大量生産・大量消費に変わっていく流れが始まりました。企業としてはそのやり方でお金がもらえましたし、その方が考えなくていいから楽でもありました。しかしそこに「良い物を作ってお客様に届けよう」という心は感じられませんでした。そこから少し経って、今度は一気に生産拠点が海外に移転していく流れが始まりました。そこからは、これまでただ大量生産/大量消費で仕事していた人たちが生き残る力を失ってしまい、その流れに逆らえず一気に倒産が起こっていきました。

そしていよいよこの会社にも倒産の危機が迫って来て「何かを変えなければならない」と思ったときに、そういった業界の流れを危惧していたので私は「本当に良いものを作って、お客様に届けたい」と思うようになりました。そんな時に昔のお客様が「この靴下がよかった」と言ってくれることがありました。ただその商品は、普通の市場では取り扱っていないような高価な糸を使っていたり、編むことが難しかったり、それを作る機械もありませんでした。しかしお客様が持ってきてくれるということは、「この靴下は良いものなんだ!」という確信が生まれ、そこから現在のメイン商品である「つつした」の開発が始まりました。

そして今となっては、足元に困っている全国の方から多くの問い合わせを頂くようになって、つつしたが多くの方のお悩みを解決できる商品へとなっていきました。しかしそれでもまだ世界には足元に困ってる人がいて、つつしたが届いていない人も多くいます。なのでこの商品をもっと多くの方々のお役に立てる商品に育てていって、世界へも伝えていきたいと思っています。

※つつした誕生の背景「つつした誕生秘話


“自分たちで伝えていく”

Q:そのために現在はどのようなことをされていますか?

そして現在は、それらの商品を自分たちで直接販売するための製造直販店もオープンすることが出来ました。これまでTVにもたくさん出させて頂き、百貨店さんにも声をかけてもらったりしました。しかし実際にお客様へ商品を届けるとなると、商品を理解している人と、そうでない人が販売するのとではやっぱり全然違ってしまいます。なので今はやっと自分たちで直接商品を伝えられるショップをオープンすることが出来てとても嬉しいです。

そして「つつした」は環境にもすごく配慮して作っています。ゴミを出さない作り方をしていますし、百円均一の靴下の10足分はカバーしている自信があります。そんな商品の魅力も伝えながら「もっとモノを長く、大切に」してもらえるような価値観も共有していきたいと思っています。

※つつしたのこだわり「つつしたとは

「大阪府交野市にある製造直販店”つつしたラボ”の様子」

“自分がやらなければ会社の歴史が終わってしまう”

Q:これらの取組みを始めるキッカケはどのようなものでしたでしょうか?

実は、この仕事は元々嫌々はじめた仕事だったんです。そんな私が本気で仕事に向き合うようになったのは倒産しかかった時で、その時にはじめて自分の働き方を考え直し「これではだめだ」と思ったんです。

正直当時の状況から言うと、会社は倒産させたほうが楽ではありました。しかし、そもそもうちの会社が倒産の危機に瀕した理由は、実は得意先の負債が大きな要因でした。なのでこのまま簡単にこの会社を倒産させてしまったら、少なからず取引先の人たちにも同じような思いをさせてしまう状態でした。なので私は倒産させるとしても、まずは何より自分がとことん仕事を向き合って、自分が納得いくまでやりきろうと決めました。


“父親から受け継いだバトン”

Q:そのキッカケの背景にはどのようなものがあったのでしょうか?

あとは父からの影響も大きかったと思います。実は私の父はこの会社を不本意に引き継ぎました。父には他にやりたいことがあったんです。しかし兄と父が亡くなり、19才のときに父が下の兄妹5人を育てないとならない状況に直面しました。当時の父には「外交官になりたい」という夢があり、そのために学校にも通っていました。しかし兄妹5人を支えるためにはその夢を諦める以外の選択肢はなく、学校も辞めるしかありませんでした。その決断をした時、父は悔しさのあまり泣いたそうです。

そんな話を聞いて育ってきましたので、自分がここで簡単に諦めて、そんな思いで父が苦労して築いてきた道を無くすわけにはいきませんでした。なのでとにかく自分が納得できるまでやりきろうと決断することが出来ました。

「”つつした”が作られる裏の風景」

“そんな仕事がいつの間にか使命に”

そのように私は責任感のようなものにかられてこの仕事を始め、続けてきました。それがこの歳になって、いつの間にかどんどんこの仕事が自分の使命に変わってきているんです。やればやるほど「これは私じゃないとお客様の悩みを解決できない」ということを感じるようになってくるんです。何度も諦めかけることもありましたが、ギリギリのところで救われてきました。そういう風に自分にしか出来ないことが絶対にあると思っていますし、誰もが持っていると思っています。なので何事にも諦めずにとことん向き合ってやりきってほしいなと思います。


【中江さんの活動について】

つつしたHP:https://higuchiorder.jp/

つつしたTwitter:https://twitter.com/tutushita

つつしたInstagram:https://www.instagram.com/tutushita/

New!!マスクの販売も開始されました:
肌に優しい オーガニックコットン糸で編んだ「オーガニック3Dニットマスク」
https://higuchiorder.jp/product/organic_3dmask/

製造直販店”つつしたラボ”

【編集後記】

インタビューを担当した冨沢です。このインタビューをさせていただいた時はちょうど製造直販店がオープンしたての頃で、いろいろな取材の電話や訪問があるときでした。そんな中でもとても丁寧に対応して頂き、一言一言を心の奥底から発していた中江さんの姿はとても素敵でした。「いつの間にか使命に変わっていった」この言葉は今の時代に生きる人であれば誰もが受け取りたいメッセージではないでしょうか。ぜひこの記事やつつしたの商品に触れて頂き、中江さんの生き方を通してより皆さんの人生が豊かになるヒントを受け取ってもらえたらと思います。最後までお読み頂きありがとうございました。

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