四季折々の日本料理をたやさず繋いでいきたい 料理家 荒木典子さん

伝統的な日本の家庭料理の味を大事にしている料理家・荒木典子さん。日本の四季折々の家庭料理を現代の人たちに伝えていくために日々取り組まれていることをお伺いしました。

荒木 典子(あらき のりこ)さんプロフィール
料理家。
お料理上手の祖母と母の影響で食に関心のある環境で育つ。
出版社で料理本の編集者として働いたのち独立してお料理の道へ。
現在は書籍や雑誌の仕事を中心、企業へのレシピ提供料理店の監修などの仕事とともに、お料理教室を主催。
季節感をとりいれた日本料理と洋食が特に得意。

家庭に伝わっている日本料理の伝統をたやさないように伝えていきたい

Q.どのような夢やビジョンをお持ちですか?

荒木典子 (以下 荒木 敬称略)現在、お料理教室で料理を教えたり、媒体で料理を紹介する仕事をしています。家庭に伝わっている日本料理の伝統をたやさないように伝えていきたいと思っています。

Q.それを具現化するために、どんな目標や計画を立てていますか?

荒木:明治・大正生まれにあたる世代が、実際にお家で作っていた昔ならではの四季折々のお料理を献立としてなるべく紹介するようにしています。
今は料理をする人でも洋食が多くなってきており、洋食が多くなってくると反対に伝統的なお料理、昔はお家で必ず作っていた料理がすごく減っているようです。
日本料理も一緒に作ってご紹介すると難しくないと皆さん実感されます。とにかくこういう風に作ったら作れるんですよということを一緒に作ってご紹介するようにしています。

Q.その目標や計画に対して、現在どのような活動指針を持って、どのような(基本)活動をしていますか?

荒木:お料理教室のメニューを考える時に、季節ごとに合ったメニューにしたり、教室に来てくださった方に季節のお話をするようにしています。
「昔はこういう風にしていたんだ。」という伝統の習慣のお話とか、あとは季節の食材の話をよくするようにしています。
いまスーパーにいくと年中何でも売っているので、旬がわかりにくくなっています。頻繁にスーパーに通っている方であれば、入ってきている野菜がわかると思うので、そういうのを観察してもらったり、あとは食材の旬な時期を伝えています。お話しするだけでなく、実際に料理に取り入れて、美味しいと体験をしていただくと、実際に腑に落ちてお家に持って帰って、お子さんにも話をするようになります。
なるべく、昔私の祖母が言っていた話もとりいれてお話するようにしています。

記者:お仕事をされていて一番嬉しかったことはどのようなことですか?

荒木:「紹介したお料理を実際に作って美味しくいただきました。」とか、「家族に気に入ってもらえました。」など言っていただけることが一番嬉しいことです。
対面の生徒さんや雑誌やテレビなどで存じ上げない方からの意見も時々いただける時がとても嬉しいです。

日本の春夏秋冬を実感し楽しむことで、食材や季節の出会いに感謝ができる

Q.そもそも、その夢やビジョンを持ったきっかけは何ですか?そこには、どのような発見や出会いがあったのですか?

荒木:料理の仕事を始めて、20年近くになります。その前も料理に関わる出版社に勤めていて、料理に関わる仕事をしていました。
その後、自分で料理を作る方に回り、初めは色々な料理を作っていました。
最初は和食よりも洋食が多く、ワインに合う食卓などそういう仕事が多かったです。ある時自分でどういう料理が一番好きか考えていた時に、個人的には和食が一番好きだと思いました。
今は外国でお料理を勉強している人も多くいますし、フランス料理、イタリア料理の先生も沢山いらっしゃいますし、外でも何でも食べれるようになっています。反対に現代はお米を毎日家庭で召し上がらない家庭も多くなっていて、寂しいなと思ったのがきっかけで、和食を伝えていくのが良いんじゃないかと思いました。
私の祖母と同じ、大正世代の人は何でも作っていました。保存食やお寿司、ハイカラなので洋食も作っていて、お赤飯を沢山作ってきていて、その世代は皆そうだと思います。
母の世代は団塊の世代で、洋物に走っている時代でした。世の中の流れで、今の60代から70代の方は食事に限らず洋物へ走った時代だったと思います。
私ぐらいの世代になると、反対に祖母がやっていたことをやりたくなった世代で、古い日本の伝統をいいなと思いはじめました。着物もそうで、母も祖母に育てられているので、お嫁に来る時には着物を作って出してもらっていましたが、母が着るのは入学式の時だけで自分でも着れるかギリギリのところだと思います。私と同じ世代の方々は、着物を着たいと言って、祖母や母の着物を来ている人も多くいました。
その下の世代になると、古い日本の文化や伝統も私たちが伝えていかないとわからない世代だと思います。
祖母の料理を知っている世代は私の世代で最後だなと思います。
「こういうものを食べたことがあるな。」うる覚えでも覚えている私たちの世代が、次に伝えていかないと伝統的な和食が無くなっちゃうなという危機感がありました。
私もまだまだ和食は作れないものも沢山ありますし、教室では梅干しなどワークショップして一緒にやりながら、20年ぐらいすれば上手くなるんじゃないかと思い皆さんと一緒にやっています。
祖母に習ったことなかったので、習っておけばよかったと後悔することもありますが、見様見真似でやってみて、それをみた方がお子さんに繋いでいってもらえたらなと思います。

Q.その発見や出会いの背景には、何があったのですか?

荒木:祖母との思い出です。それに気づいたのも、大人になってから祖母と過ごした時間の貴重さに気づきました。
子供の時を思い出して、今でも祖母が作っていた料理も作ったりするんですけど、保存食のようなものを作るときに、こんなに手間がかかるものだったんだなと気づくことが多くあります。
例えば、栗ご飯についても昔お茶碗に入っている栗ご飯を食べていた時はわからなかったけれど、栗をちょっとでも剥くだけでも本当は大変で、こんな手間で栗ご飯が食卓に残っていたんだなと気づいたのは大人になってからだと思います。子供時代にはわからなかったものを、自分が作るようになって、その大変さに気づかされています。
お料理を習いにくる世代の方には、お子さんたちに日本料理を食べてもらう機会を増やして欲しいと思っています。子供の頃はその貴重さや価値がわからなくても、そのような経験をしていれば大人になって思い出すことができるからです。
私も祖母の料理を食べていた頃は、春になったら豆ご飯、4月になったら竹の子が出てきていて、季節のものに対して子供の時にはありがたみが全然わかりませんでした。けれど子供の頃に経験していたので、春になったら豆ご飯しようって思い出すことができる。そういう経験って大切だなと思っています。
日本の春夏秋冬の季節を実感し楽しむことで、食材や季節の出会いに感謝ができる時期がくると思うので、そのようなことが皆さんにとって大切だなと思ってます。

記者:本日は貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。

荒木典子さんの情報はこちらです。

ホームページ http://arakinoriko.com/

編集語記
今回インタビューを担当した岩永です。お話をお伺いする中で、春夏秋冬の日本の家庭料理の魅力を沢山気づかさせていただきました。私の世代では直で感じることができなかった日本の家庭料理が荒木さんのお料理によって沢山の人たちに伝わっていっていることに希望を感じます。

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