「本来の漢方を日本に広め続けたい」漢方マルヘイ薬局長 丸山運平さん

大阪の道修町で漢方薬局長を務める丸山運平さんにお話を伺いました。

*プロフィール*

丸山運平(まるやま うんぺい)
大阪府出身。大阪を中心に全国で活動中。京都薬科大学卒業後大手漢方メーカーへ就職。その後ドラックストア勤務、中国への語学留学後、漢方マルヘイ薬局に勤め、現在は薬局長を務めている。
座右の名 人間万事塞翁が馬(じんかんばんじさいおうがうま:人の世は何が起きるか分からない。不幸も幸につながることもある)

記者 今の丸山さんの活動について教えてください。

丸山運平さん(以下敬称略) くすりの街と知られる大阪の道修町で漢方相談を受けています。また、北海道から沖縄まで、各地域の漢方薬局や相談薬局の先生たちの勉強会で講師も務めさせていただいています。
 他にも、漢方メーカーが薬局向けに発行している月刊誌にコラムを連載しています。

記者 どんな夢をお持ちですか?

丸山 人間の生命観を含めて本来の東洋哲学的な部分をベースに、漢方の正しい使い方や養生方法を広めていきたいです。
 本来、医学は哲学の一部なんですよ。西洋医学もそうです。今の日本には社会全般にこれといった哲学がないので、ピンとこないかも知れませんが、哲学的な部分をベースとした正しい形で漢方を広めたいですね。 
 漢方は非科学的ともいわれた時代もありましたが、科学や量子論の研究が進んだことで、漢方で2000年以上前から言われてきたことが正しかったと言われるようになってきています。現在ではそういった最先端の科学的な知見もからめて、漢方について伝えています。


記者 そんな丸山さんの5年後10年後のビジョンは何ですか?


丸山 漢方は、死ぬまでやってもわからない「道」の世界だと思っています。5年10年と時間を区切るのではなく、命の限りやるしかないと思っています。柔道、茶道などの「道」と同じなんです。「道」の追求に期限はないんですね。
 2000年前のに「その人あらざれば教えることなかれ。その眞にあらざれば授くること勿れ。是を道を得たりと謂う」(訳:その秘法は教ゆるに足る人でなければ決して教えてはならないし、また真実のある人でなければ其の法を授けてはならない。それを道理をわきまえ、道をえたものと謂うのであります)とあります。
 この書と出会って自分は衝撃を受けました。20年以上前にこれを読んで、今の夢を持つようになりました。その頃、漢方のことをわかったと思っていた自分がいました。でも基本的なことがわかっていなかったことに気づかされました。
 

記者 今の夢やビジョンを描くきっかけになった「出会い」や「発見」はありましたか?

必要な人が必要な時に出会うことがあるみたいですね。その時々に漢方の名医や中国哲学の研究者に出会えたり・・・実は、みんなが神の一部だから、必要な時に必要な人に出会うようにできているような気がします。
 日本の大学でも中国哲学の分野では、漢方のベースでもある中国古代の魂や神という概念を研究されています。ですが、薬学や医学ではそういった話は殆ど出てこないです。

記者 今の日本についてどう思いますか?

丸山 日本の最大の問題は「社会の中に哲学が無いこと」だと思いますね。もともとはあったんでしょうけど。欧米では「学問は全て哲学の一部」という考え方があるのですが、日本にはそれがないですね。
また、中国哲学からみると死ぬことが不幸と決めつけるのも違うんです。あの世とこの世は地続き、あっちで生まれたりこっちで生まれたりするだけ。生と死は一体なんです。
 天寿を全うするという言葉があります。生まれた以上必ず死にます。本来、天から与えられた使命を果たすために生きています。病気にならないことが理想じゃなくて、天寿を全うすることが大事です。

記者 AI(人工知能)時代において「漢方」はどういった役割を果たすのでしょうか?


丸山 漢方はAI(人工知能)では絶対代替できないと思います。
 それは量子論的世界観から説明することができるんですが、いくらデータを集めても漢方をAIが実践することは難しいと思います。
 量子論では世界は、人間が観察することではじめて物質化しているんです。例えば、月は人が見ている時だけ存在しているということです。常に月がある、と思っている人が大半ですが、月はその人が見ているから存在しているというのが量子論的世界観なんです。
 また、この世界は言葉にできない部分のほうが圧倒的に多いじゃないですか。ということはデータ化できない、つまりAIには入力できないから、それはAIにはできないということです。例えば、西洋医学的手法で血液データがこれくらいで、この診断だから、この薬をこれくらい使うとか、そう言ったことはAIにもできると思います。でも、漢方では人間が観察をするというか、主観的な部分が圧倒的に大きいのでAIにはできません。

記者 もうすこし詳しくお願いします


丸山 人間が観察することによって初めて物質化するというのは、全ての物体は細かく分けていくと素粒子から最後は波動になります。そもそもそれらは「波」なんですが、人間が観察することによってはじめて物質として見えるようになるとされています。漢方の世界では気一元論といいますが、この世のすべては“気”で出来ていると考えます。
そう言った点で量子論は東洋哲学に近いと思います。


記者 では最後に読者の方に一言お願いします。


丸山 「養生七分、治三分」ということを知って、実践してください、ということですね。病気を治すためには日々の養生が7割で、治療は3割、という意味です。漢方薬でも新薬でも薬を飲みさえすれば治ります、ということはありません。
 病気を治すのは自己治癒力ですし、自己治癒力は日頃の養生が大事です。どれほど名医にかかっても養生をしなければ治らない、ということを忘れないでほしいです。
西洋薬の世界は極論すれば、“薬は効くけど、病気は治りません”。西洋薬は治しているわけではなく、例えば、糖尿病の薬は血糖値を下げているだけです。それって治っているわけではないですよね。生活習慣を変えないと治らないんですよ。病院で薬を飲めば治ると思い込んでいる人がとても多いですね。
 そう言ったことも含めて知ってもらいたいし、漢方のベースである中国哲学を広めて行きたいです。


記者 道の世界を追求することは人生をかけた挑戦ですね。今後も医学の発展と益々のご活躍を期待しています。この度は貴重なお話ありがとうございました。

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漢方マルヘイ薬局HP

〜編集後記〜
取材を担当した田沢です。2000年前から続く、中国哲学をベースに漢方を日本に広める丸山さん。とても困難な「道」を、運命に委ね、前進し続けていました。終わりの無い「道」の世界、漢方を広めることは日本に新しい哲学、息吹を吹き込み、日本を再興するほど壮大な世界だと感じました。

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