貧困問題と環境問題を同時に解決しようとするソーシャルビジネス起業家 サステナビリティー・アジア 共同代表 三橋利佳さん

三橋利佳さんのプロフィール
出身地:横浜市
経歴:元バックパッカーであり英語教室を営む母と国際社会学の研究者である父の家庭に生まれる。幼少期から世界中の訪問客がいつも家に出入りしていた。高校時代にオーストラリアに留学、大学時代にフィリピンに留学、卒業後に海外青年協力隊員として、西アフリカのベナン共和国に派遣。帰国して商社、在ベナン共和国日本大使館勤務を経て、大学院に入学し、持続可能な経済開発を学ぶ。2018年にサステナビリティー・アジア(Sustainability Asia)を設立し、共同代表に就任。コーヒー農家が貧しい状況にある一方、コーヒーの果実の皮(カスカラ)が捨てられて環境問題になっていることから、この両方の問題を解決する方策として、カスカラを利用し、お茶などの商品開発をして販売するビジネス、いわゆるソーシャルビジネスを開始した。
現在の職業および活動:Sustainability Asiaにて、カスカラ原料の商品を現地や日本などに販売チェンネルを開拓する一方、国連職員として、東アフリカのブルンジ共和国に派遣され、アフリカでの活動も同時に行っている。また、小学生時代から続けている剣道を生かし、海外への剣道の普及を通じた平和交流活動も行っている。
座右の銘:「継続は力なり」

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Qどんな夢・ビジョンを描いていますか?

三橋:私たちのテーマは持続可能な生産と消費であり、SDGs(国連で採択された持続可能な開発目標Sustainable Development Goals)に繋がっています。ビジネスモデルとして、生産者は良い商品を提供し、消費者は健康に良いものを購入することができ、汚染要素になるものを利用することで自然環境にとっても良い仕組みを築くという、すべてがwin-winの形態を描いています。

私たちは、数年前カスカラというコーヒーの果実の皮に注目をしました。これまで、この皮は現地で捨てられていました。カスカラは酸性が強く、堆肥として使い続けると土が悪くなること、川に放流されると汚染する状態でした。そこで、この捨てられている皮を乾燥させ、紅茶にしたり、粉にしたりしてカスカラを利用することに挑戦しました。これによって、環境問題への貢献とコーヒー農家さんへのサポート、そして消費者に健康的な商品の提供をしています。

カスカラとはスペイン語で、「皮」を意味します。コーヒーが飲まれる何百年前から、中東のイエメンでは、カスカラにスパイス等を加えて「カスカラティー」として飲まれていたのです。私はコスタリカの大学院に在学中、同期がカスカラティーを手にし、そのアイデアをフィリピンに持ち込み、その同期たちと共に修論プロジェクトとしてカスカラを扱い始めました。

カスカラはポリフェノールが高く、抗酸化作用があり、スーパーフードで有名なアサイーの15倍の効果があると言われています。現在フィリピンのコーヒーショップ2店と日本食レストランで販売しています。

カスカラは人の口に入るものなので、人体への影響を考慮し、オーガニックコーヒーを扱う農家さんと提携しています。
「現地にあるもの、彼らの生活に合ったもので副産物を作る」というのが私たちのコンセプトです。コーヒー農家の貧困という問題をビジネスによって解決する、いわゆるソーシャルビジネスを確立しています。

また、コーヒーの木は直射日光に弱いため、影をつくる木を必要とします。そのため、コーヒーの木はもちろんのこと、影になる木の植林もし、微力ながら地球温暖化対策を意識して活動しています。

Qどんな目標・計画がありますか?

三橋:現在フィールドは、フィリピン、ラオス、インドネシアですが、今後様々な国からカスカラを日本に持ってきて商品化する予定です。ちょうどコーヒー生産国のブルンジに2019年の5月から幼少期からの憧れでした国連職員として派遣されるため、国連の経験を積むとともに、そこでもコーヒー農園を巡り、カスカラ可能性を見極めたいと思います。

今後の展望は、日本にカスカラ茶を浸透させることです。カスカラの味と栄養価に自信があるので、身体に良く、おいしいものをハイエンド層に向けて提供する計画です。同時に、カスカラの可能性を見つけ、マーケットをさらに開拓したいと思います。

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Q活動のきっかけはなんですか?

三橋:以前、在ベナン日本大使館で草の根無償資金協力のプロジェクトに携わっておりました。日本からの支援で学校や病院の建設を行っており、多くの人から喜ばれるのですが、ある日、日本の支援で建設した病院から外に出ると子供を抱えた女性が歩いていたので「普段この病院使ってますか?」とフランクに話しかけたところ、「お金がないから使わない。」と返事がきました。診察は無料なのですが、薬にお金がかかるためです。現地の人には建物だけではなく、現金収入が必要なため、現地でビジネスを起していく必要があることに改めて気がつきました。

それから持続可能な経済開発を学ぶため、大学院に通うことになるのです。大学院の卒業プロジェクトとして、同期と一緒に、コーヒーショップと農家さんの協力を経て、カスカラティーを作り、農家さんへの収入向上になるスキームを提案することに成功しました。そのプロジェクトは後輩に受け継がれ、カスカラのマーケット調査等が行われました。

大学院を卒業後、ソーシャルビジネス立ち上げの第一弾として、フィリピン人の友人二人と共に、フィリピンの無農薬農家さんから野菜やフルーツを買い取り、スムージーを作る屋台を出店しようとしました。しかし、友人同士の相性が合わず、仲間割れを起したため、実現に至りませんでした。

その後、大学院の後輩からカスカラによる事業化のお誘いがあり、現在のソーシャルビジネス立ち上げとなります。
私のバックグラウンドは国際協力でして、脆弱な人たちが自立し、健康で必要最低限の生活ができるようにサポートしたいと思っています。

コスタリカでコーヒー産業界の底辺には途上国でコーヒー生産を支える農家が身近であったこともあり、彼(女)らは非常に苦しい生活を強いられていることを知りました。調べると、コーヒー農家には、商品価格の1%~3%の収入しか得られず、90%以上は仲介と大手企業が得る仕組みになっています。この現状を少しでも変えていきたいと思います。

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Q活動の背景はどんなことだったのですか?

三橋:小学校1,2年生の頃、父とテレビのドキュメンタリーを見ていました。内容は詳しく覚えていないのですが、サハラ砂漠で5歳頃の女の子が裸で立っているシーンがあり、それが衝撃的で脳裏に焼き付いていました。

私には家族もいて、服も着ていてご飯もある。もし私がアフリカで生まれていたらこの女の子のようになっていたのかと考えたことを憶えています。このテレビの情景がある一方で、世界中から両親の友人が家に来ており、その中にはアフリカから来る人たちもいました。ですが、その人たちは服を纏い、スーツを着ていた人もいました。それにとても陽気で感情豊かで、テレビに映るアフリカと家に来るアフリカからの人達のギャップは何だろう?と疑問に思っていました。その疑問もあり、小学校の頃からアフリカに興味を持ち、実際にアフリカで生活してみたいと思い始めました。

これは、数年前に知ったストーリーなのですが、母は意図的にアフリカから来る人達を家に呼んでいたようです。なぜかというと30年程前、日本人主催の女性だけのインターナショナルパーティーがあり、日本人のお母さま方は西洋人だけに料理を運び、アフリカ系のいわゆる黒人たちは会場の端で突っ立っていたそうです。それを見た母は、子供達にはこのように肌の色で差別する人に育ってほしくないということで、アフリカからの友人を家に多く呼んでいたみたいです。

記者:アフリカのギャップというのは、どのように捉えていましたか?

三橋:最初は本当に疑問でしかなかったですね。中学高校になるにつれて、これが格差というものであることや、汚職、先進国や途上国の関係、奴隷や殖民地など様々な歴史があることを知りました。そこで貧富の格差を最小限に縮められたらいいなと思い始めました。その目的は、今も変わっておらず、使命感のように感じています。 

海外への一人旅を始めたのが高3の時で、今までに70以上の国に旅をしてきました。そこで思うのが経験と自信がものをいうことです。自分の目で見て感じない限り納得がいかないですし、肌で物事を感じ、現地の人と交流を楽しみたいです。母も40年前のバックパッカーということもあり、私に一人旅を勧めました。自分で生きていくには、自分で決めて自分で行動しなくてはならないため、判断する力を育てようとしたそうです。
父は国際社会学の研究者なので、個人と社会との繋がりや、援助、国際問題等々、様々なテーマでディスカッションをし、育ってきたので、父の影響もすごく大きいです。

また、小学生の頃から剣道を続けているのですが、剣道を通じて平和に貢献できればよいと思っています。剣道には、まず礼に始まり礼に終わる、礼儀作法から入り、相手を尊敬し、思いやり、そしていかに美しい有効打突ができるか常に模索する、向上心の育成があります。チャレンジ精神を持ち、周りをよくしていこうという人が少しでも増えるといいのではないかと思い、海外でも広げていきたいと思います。

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記者:自分が何をしたらいいのかわからない、先が見えないそういう時代を生きている若者にメッセージをお願いします。

三橋:道はいくらでもあるのでチャレンジし続けることが大事であると伝えたいです。そこで、もしチャンスがあれば掴むこと一歩踏み出すことです。特に日本人は慎重な人が多く、道は一つだと思っている人が多いように感じます。希望する組織に落ちたらどうしようと考え、悩む人もいますが、落ちたら落ちたで、他の道を考えればよいと思います。遠回りする良さも必ずあるので、遠回りをして視野を広げてみてはとアドバイスしたいです。そして自分で考え込まずに色んな人に話を聞いてみるのも一つです。また、日本だけでなく海外に目を向けてみるのもいいかと思います。最近は、日本に閉じこもる人が多く、日本の中で満足している人が増えていると耳にします。確かに日本で満足するのもいいですが、外国との繋がりなしでは日本は存続できません。島国であるからこそ、他の国々を見て、比較し、視野を広げてみてください。

記者:海外の留学経験を活かし、環境問題と貧富の格差への問題意識を繋げ、日本とアジアを繋げて事業を展開されていることに感動しました。元気に益々のご活躍をお祈りしています。今日は、貴重な機会を有難うございました。

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三橋利佳さんに関する情報はこちらです
↓↓↓
【三橋利佳さんが共同代表を務めるサステナビリティ―アジアHP】
https://sustainability-asia-org.webnode.com/

【三橋利佳さんが代表を務めるサステナビリティ―アジア Face Book】
https://www.facebook.com/SustainabilityAsia/?hc_location=ufi

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【編集後記】
取材を担当させていただいた大場、高山、森川です。たとえ、文化が違っても海外の方々と繋がって、新しい事業の開拓にチャレンジする姿勢が素晴らしいと思いました。海外平和交流活動に役立てている日本の伝統文化としての剣道と三橋利佳さんが重なり、一途にチャレンジをする姿が、侍のように感じました。今後の活動を応援し、世界のために、日本を一緒に元気にしていきたいです。

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