子供服のリユースを通して「古い方がカッコイイ」という価値観を広げ、新しいお店の在り方を創りたい 株式会社キャリーオン 代表取締役COO 長森真希さん
大量生産・大量消費が当たり前の時代。子供の成長と思い出が詰まった子供服。まだまだ着れたり、かわいくても、どうすることも出来ずタンスの中にしまったまま、という方は多いのではないでしょうか。そんなタンスに眠った一着一着を、ママの声や思い受け止めながら次の方へ。そんな皆がWin-winするシステムを作られた、長森さんにお話を伺いました。
プロフィール
東京都出身。慶應義塾大学卒業後、海運世界最大手Maersk Line入社。
コペンハーゲンでの幹部養成プログラムMISEメンバーに選抜され、グローバルマーケットでの貿易業務に従事。
その後フリーランスの日英バイリンガルMC/アナウンサー・通訳として主に国際会議やスポーツ国際大会、海外トレードショー等で活躍。
2013年株式会社キャリーオンを設立。国内最大規模の子供服リユースプラットフォーム「キャリーオン」を運営し、これまでに累計40万件以上の子供服を取引。
現在会員は3万人以上。
記者 どうぞ宜しくお願い致します。
長森 真希さん(以下、長森) どうぞ宜しくお願い致します。
子供服業界で、新品と中古がお互いに共存していく時代がきている
記者 今、長森さんがお持ちの夢についてお聞かせください。
長森 弊社では中古の子供服の売買をしています。最近、新品を売る1次流通のショッピングセンターさんからは、「うちで売ってみませんか」と。また子供服のメーカーさんからは、「余剰在庫を一緒に活性化できませんか」など、声をかけて頂くようになりました。以前は、2次流通というと、1次流通から敵対視されるもの、というイメージでしたが、1次流通さんから、どんどん声をかけて頂くようになり、新品と中古がお互いに共存していく時代がきているんだな、と。そこに弊社を選んで頂いているというのは、時代を変えているという事でもあるので、将来的には新品の子供服のお店で、新品と中古の洋服を店頭で一緒に並ぶようにしたい、と思っています。
また、ニューヨークのマンションのように古い方が価値があり、もう一度使うことが当たり前、そんな価値観を一般化したい。今後は物の買い方や使い方も変わってくると思うので、大量生産・大量消費を止めることにも寄与していきたいです。後は、今はまだインナーがメインのオリジナルブランドですが、今後は知見を活かして理想の子供服を作ること、そして海外展開していきたい、というのもあります。
より多くの方にとって使いやすいサービスを作りたい
記者 夢に向かって、どんな目標や計画を立てていらっしゃいますか?
長森 事業の方ですと、「kinico(キニコ)」というブランドの品目を増やしていきたいです。ママの声を集めてシャツタイプのインナーを作ったのですが、ブランドをリリースしたのが2019年1月なので、もっと品目を増やしたいと思っています。
また、より多くの方にとって、使いやすいサービスになるよう、オペレーションを更に改善していきたい、と思っています。中古の売り買いをするのにどうしても避けられないのが、値段をつけ、撮影し、ネットに載せるという作業です。弊社は大規模処理をしているのでスピード化している方なんですが、それでも1着ずつ作業する事は変わらないので、これをもっと効率化できたら、より多くの方がマーケットに子供服を出してくださるでしょうし、ユーザーさんの利便性も上がれば、魅力的な商品をもっと提供できると思っています。その結果、今3万人いる会員さんを、1年後には10万人にしたい。毎日21:00に新商品が上がるようになっているんですけれども、21:00を楽しみにして下さっている方がいらっしゃるんです。より大きな規模の方の役に立つものが作れたら、それは幸せな事だし、そういうものを作ったんだったら、もっと使って貰えるように努力しないと、それはそれで罪な事だと思っています。
人ってやっぱり難しい
だからこそTry & Errorの繰り返し
記者 目標や計画に対して、日々なにか実践されている事はございますか?
長森 スタッフとのコミュニケーションや信頼関係を、今一番大事にしていますね。
私が思っていることをまず半分でも伝えられたら大成功、というベースを必ず持つようにしています。100%は絶対に伝わらないので、半分伝えられたら御の字。その半分の中で、伝えたかった事が分かって貰ってなくても、そういうもんだよね、という割りきりが必要。その前提を持った上で、どうやって伝えきるのかを、一人ひとりに対して手を抜かずに考えるようにしています。後は自分の方が教えて貰っているという気持ちを常に持つようにしていますね。他にも最近身につけた方法として、「私、このゴールに行きたい」というゴールを最初に話し、その後に理由や作業して欲しい事について論理的に説明するようにしています。日々、Try & Errorの繰り返し。すごくシンプルな事だったり、工夫の積み重ねですね。今、30名位の方がいらっしゃるんですが、信頼して任せられるサブリーダーの方が増えてきたので、今後は組織として強くなっていくと思っています。
失うものは、何もなかった
記者 会社を始めようと思ったきっかけや出会いは何だったのでしょうか。
長森 共同創業者の吉澤との出会いがきっかけです。元々、彼の奥さんとは以前やっていた仕事の仲間だったんです。私がSNSに「自分の息子の服が小さくなったので、誰か欲しい人いる?」とか、「チャイルドシートを使わなくなったよ!」というのを写真と一緒に載せていたんです。友達が「いる、いる!」って言ってて。それを見ていた彼の奥さんが「うちの主人がC to Cのビジネス(Consumer to Consumer)で子供服を商売にしたらどうか、と考えているんだけど、ちょっと話聞いてみてよ。」と言われて、吉澤と会ったのがきっかけでした。2013年の年明けくらいから打ち合わせを重ね、2013年の5月に会社を登記しました。というのが美しい方の理由で、もうひとつ理由としては、その頃シングルマザー予備軍で離婚したいと思っていたんです。その後、離婚も成立したんですが、でもそうすると一生仕事をして生きていかなきゃいけない。子供にやりたい事をさせたいと思ったら、色々お金も必要になるので、何かやらなきゃ、何かやらなきゃと思っていた。とにかく何かやらなきゃ死んじゃうと思ってたところに、やるべき事の目標を与えられたのが凄く嬉しかったんです。失うものは何もなかったので、迷うこともなく、気負う事もなく選びました。
記者 会社をされていて、一番嬉しかった事とは何ですか?
長森 (沢山のハガキを見て)これは嬉しいですよね。本当にやってて良かったと思える。このハガキを見ていると、いいものを作ったなと思います。だからもっと広めなきゃ、と本当に思いますね。どのユーザーさんも、やっぱり捨てられてしまうのは嫌なんですよね。皆そう思っていたんだ、って思います。
長森 弊社で買った服を子供達に着せ、その写真をユーザーさんがインスタに投稿して下さっているんです。それを弊社がリポストするんですが、これをやっている間にユーザーさん同士のコミュニケーションも勝手に広がっていっているみたいで、特に弊社で交流の場を設けている訳ではないんですが、「あなたもキャリーオンユーザー?私もキャリーオンユーザー!」と、どんどん広がっている。見ていて、凄く楽しいですよね。
リアル店舗を出すと、来店して下さるんです。皆さん、本当に古着で楽しんでくださっています。古着で1点もの、というところを自分の個性で楽しまれているので、やっぱりリユースってもっと広まっていくべきだし、当たり前として認知されていくべきだな、と思っています。新品が売られているお店で、リユースも一緒に並び、どっちか好きな方を勝手に選べるというのが、理想。子育てのインフラ並みにそんなお店や価値観が広がっていくことを目指しています。
記者 最後に読者の方にメッセージがありましたら、ぜひ!
長森 自分に自信を持つというのは、簡単なようでこれが一番難しいっていうのは重々分かってはいるんですけれども、やっぱりそれにつきると思うんですよね。よく持っている力を活かしてとか聞きますけど、自分の持っている力なんか知るか!と思っていて。それを死ぬ時に知れたらいいんじゃないの?!って私は逆に思うんですよね。案外自分でも分からないと思うんですよ。とにかく降ってきたものをやる。自信の持ち方が分からない方がいたら、私のように何も考えずに、ふらふらと目の前にきたボールを打ち返しながら、なんとなく前に進むというやり方でも前に進むと思っているので、それでもいいんだ、という参考になるかも知れないから、お手紙ください。
記者 本日はお時間を頂き、ありがとうございました。
長森 ありがとうございました。
長森さんに関する情報はこちら
↓↓↓
◇株式会社キャリーオン◇
◇Facebook◇
https://www.facebook.com/makiruinagamori/
【編集後記】
今回インタビューの記者を担当した、住吉と岸本です。沢山のハガキは圧巻でした。キャリーオンさんのシステムは、子供服という枠を越え、沢山のお母さん方の子供への愛情が、次の方へ繋がっていく、そんな思いが溢れたシステムだと感動しました。
長森さんのご活躍、心から応援しております!
この記事はリライズ・ニュースマガジン”美しい時代を創る人達”にも掲載されています。