「デンマークの価値観を日本に伝えたい」“Yuka Harikai Drejer / 針貝有佳 ”さん

デンマークで翻訳とライター活動をしているYuka Harikai Drejer / 針貝有佳さんにお話を伺いました。

プロフィール

出身 東京・高円寺生まれ。

活動地域北欧のデンマーク(コペンハーゲン郊外のロスキレ 在住)
※デンマーク: 国民の幸福度が高く「世界一幸せな国」ともいわれる。スウェーデンの西、ドイツの北にある小さな国。国土面積は九州程度。人口は約580万人(兵庫県より多く、千葉県より少ない)

経歴 早稲田大学文学部卒。日本社会への問題意識から社会学に関心をもち、同大学の社会科学研究科(修士)で国民の幸福度が高い北欧(主にデンマーク)について研究。2009年末にデンマーク移住後は、現地で暮らして感じること・発見したことなど、デンマークのナマ情報を発信している。

現在の職業・活動 北欧デンマーク在住ライター・トランスレーター(翻訳)・リサーチャー ライター: 雑誌・ウェブ・書籍などへの寄稿、ラジオ・ZOOM出演など トランスレーター: ホームページ・記事・公文書など多様なジャンルを翻訳 リサーチャー: 日本企業や研究者のリサーチをサポート
今後: デンマークで活躍している作家やアーティストの紹介もしていきたいです。

座右の銘 win (自分) – win (相手) – win (社会) を意識する。

デンマークの価値観を日本に伝えたい

Q.どのような夢ビジョンをお持ちですか?
Yuka Harikai Drejer(以下、Yuka敬称略):夢と言えるのかわかりませんが、ライフワークとしてデンマークにある価値観を日本に伝えていきたいです。実際に住んでみて、デンマークには日本とは違った価値観があることがわかり、日本に紹介したいと思うようになりました。小さい頃から読書をしたり、文章を書いたりすることが大好きなので、執筆や翻訳など好きなことを通じてやっていけたら嬉しいです。

今まで雑誌やウェブには記事を書いてきたので、今後はもう少し長期的に大きなプロジェクトに取り組んだり、新しいことにも挑戦していきたいです。やりたいことはいっぱいあるのですが、たとえば、デンマーク語の本の翻訳出版は1つの夢です。また、本に限らず、デンマークで出会った人や作品を日本に紹介していきたいなと思っています。

あとは、色んな分野のパートナーと組んで仕事をしてみたいです。ビジネス・社会事業・研究・アート・文学など、ジャンルは問いません。私1人でできることは限られていますが、さまざまなジャンルの方と組むことで面白いものが生まれるのではないかと思っています。

Q「デンマークの価値観を日本に伝えたい」という夢やビジョンを実現するためにどんな目標計画を立てていますか?
Yuka:
デンマークのトレンドや動向をリサーチすると同時に、日本のニーズも探っています。また、表層に現れているものだけではなく、事象の裏に隠された核心的なことを探るようにしています。なぜ、ある商品や作品がその国でヒットしているのかを考えることは、とてもおもしろいです。デンマークと日本の価値観は異なります。デンマークでヒットしても、日本人に受け入れられるとは限りません。逆に、デンマークでは普通のことでも、日本人にとっては面白いこともあります。昨今の「北欧ブーム」もありますし、縁あってデンマークという異国の地を知っている日本人として、現地でしか知ることのできない情報・アイデア・価値観などを日本のニーズに合わせて届けていきたいです。

Q.その目標計画に対して、今どのような活動指針をもって、どのような活動をしていますか?
Yuka:
今は、ライターやトランスレーター(翻訳)、リサーチャーとして活動しています。その中で、「自分がやりたいと思えること」にエネルギーと時間を投資するようにしています。自分が向かいたい方向性と合致している依頼は受けるようにしています。また、根っこにある価値観を大事にしています。先ほどもお伝えしたように、物(作品)だけではなく、それが生まれた背景や、生き方、アイデアを大切にしています。

きっかけは、日本社会の在り方への疑問

Q.「デンマークの価値観を日本に伝えたい」という夢ビジョンをもったきっかけは何ですか?そこには、どのような発見や出会いがあったのですか?

Yuka:昔から、日本社会に窮屈さを感じ、疑問を持っているところがありました。特に、働き方や教育などへの問題意識がありました。引きこもりや不登校が多いことは、その人たちだけの問題ではなく、社会にも問題があるのではないかと感じていました。日本社会は、“こうしなくちゃいけない”という意識が強く、生きづらいのではないかと感じていたんですよね。

大学を卒業する頃に一番問題だと感じていたことは、精神的に追い込まれている人が多いという日本の現状でした。そのことが、とても悲しかったんです。何とかしたいと思い、カウンセラーになろうと思ったこともありました。でも、社会にも目が向きました。私は、大学では文学を専攻していましたが、社会を構造的に分析する社会学にも興味を持っていました。今後、日本はどこに向かえばいいのだろう、と模索していたときに “北欧”と出会いました。

自分の人生の方向性を決める出会いでした。大学院で社会学の授業を聴講していたとき、その先生に、自分がやりたいことや考えていることを共有すると、「ヒントは北欧にあるはずだ。北欧社会を知ることで、見えてくるものがあるはず」と言っていただきました。その一言が人生を変えました。

もう一つの出会いは、Flexibility とSecurityを掛け合わせた“フレキシキュリティ (Flexicurity)”という概念との出会いです。これは労働市場に柔軟性と安全性を同時に確保しようとする考え方で、当時、北欧デンマークは理想的な ”フレキシキュリティ” を実現したモデル国として注目されていました。デンマークでは経営者は被雇用者を比較的簡単に解雇できるのですが、失業してもセーフティーネットがあります。また、転職が奨励されていて、転職する人が多く、失業しても再就職しやすい環境があります。また、起業もしやすく、労働市場はとても流動的です。つまり、安全性が確保されているからこそ、柔軟性が生まれているんです。“フレキシキュリティ”という言葉を目にしたときは衝撃で、日本に欠けている概念なのではないかと思いました。デンマークには、日本が必要としている何かがあるのではないかと思いました。そこで、北欧に関心を持ち、大学院で北欧研究をすることになりました。

それで、デンマークの制度や政策を調べて日本に紹介できればと思い、デンマークの労働市場政策について修士論文を書きました。でも、いざ論文を書いてみたら「何か違うという違和感」を感じてしまいました。本当のデンマークを知らない、机上の空論なのではないかと思い、納得がいきませんでした。

その後、研究中に今の夫とデンマークで出会い、今までの追求や夢が叶えられると思い、デンマークで暮らすことにしました。「世界一幸せなデンマーク」と言われるデンマークに実際に住んで、現地の空気感を感じられたのは嬉しいことでした。デンマークの情報を自分だけで止めていたらもったいないと思い、今の活動に至るようになりました。今も暮らしながら、頭の隅で「世界一幸せな国」デンマークについての仮説をリアルライフで検証しています。実際にはパラダイスではないことにも気がつきましたが、それも含めてやっぱり面白いですし、すごい国だなと思います。

Q.最後にメッセージをお願いします。
Yuka:
今まで色んな出会いがありましたが、人生で一番大事なのは「出会い」だと思います。出会うべき人に出会うことによって、人生が豊かに楽しくなると思います。ですので、ぜひ皆さんも出会うべき人に出会ってください。出会い方がわからない場合は、とにかく興味があることに向かうことです。そのプロセスで、同じようなことに興味をもっている面白い人や素敵な人に出会えるかもしれないし、ジャンルは違っても、刺激を受けたり、応援し合えるような人に出会えるはずです。

あと、大事なことは、できるだけ自分に嘘をつかないことだと思います。特に、人生を左右するような大きな決断をするときは、自分の気持ちに嘘をつかず正直になった方がいいと思います。これは案外難しいことですが、自分のなかに妙な違和感がないかどうか、というのは1つの判断基準になると思います。なぜこんなことを伝えたいかというと、私自身の失敗談があるからです。最近、私は自分の気持ちに正直になることで、出会いたい人に出会えるようになり、やりたいことを少しずつ実現できるようになっている気がします。皆さんも、ぜひ自分には正直でいてくださいね。

記者:Yukaさん、今日は本当にありがとうございました。

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※HP準備中です。公開したらお知らせします。

編集後記
気さくにお話いただき、和やかなインタビューとなりました。机上の空論よりも現場であるデンマークを訪れるなど、バイタリティーある行動力も素敵だと思いました。日本社会への疑問については共感することが多く、共に未来について考えていきたいと思う時間でした。Yukaさん、本日はありがとうございました。

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