「食育×ICTで、豊かな人生を」Apple Distinguished Educator 手嶋 英津子さん
西南女学院大学で講師として食育について教え管理栄養士を育成しながら、食育の分野では初のApple Distinguished Educatorとして認定された手嶋英津子(てしまえつこ)さん。明るい笑顔と終わりなきチャレンジ精神の背景をお伺いしました。
プロフィール
出身地 福岡県福岡市
活動地域 福岡県
経歴 大学卒業後、高校、大学で勤務。民間企業の管理栄養士も経験し、病院・福祉施設で月1500品以上の献立作成・管理を行う。現在、企業や病院とのコラボレシピの開発や、授業用食育アプリを全国で初めて開発し、「食育×ICT」を発信中。
現在の職業および活動 西南女学院大学保健福祉学部栄養学科講師、管理栄養士、Apple Distinguished Educator、行動特性診断インストラクター
食育×ICTを活用しながら、食育で豊かな人生を築ける場をつくる
Q:どのような夢やビジョンをお持ちですか?
手嶋 英津子(以下 手嶋 敬称略) 夢は大きく分けて2つあります。
1つ目は、私の強みはやはり食育×ICTなので、この分野で中心となって活動を広げていきたいです。食育に関して取り組んで来られている先生方はたくさんおられるのですが、ここにICTを取り入れる取り組みは今までほとんどされていませんでした。そこに私が小学生向けの食育アプリを開発したこともあり、食育分野で初めてApple Distinguished Educator(以下、ADE✳︎)に認定していただきました。これからもICTを活用してもっと食育を身近に感じていってもらいたいと思います。
2つ目は、「食のことは管理栄養士に聞こう!」という状態をつくることです。管理栄養士というと皆さんはどんなイメージが湧きますか?正直言って、病院にいるか給食を作っているか、くらいではないでしょうか。管理栄養士は、食品、栄養、体の仕組み、病気のことなど総合的な勉強を行い、食の専門家としては唯一の国家資格です。にも関わらず、社会的な認知度や地位が低く、皆さんにとって身近な存在になっていないんですね。
食というのは多くの人たちにとって身近な問題であり、食について聞きたいというニーズはたくさんあります。働き盛りの男性が、病院に行くほどではないけれど健康管理について悩んだり、子どもを持つ親が、子どもの体づくりのために食について気にしていたり。そんな時に、管理栄養士に当たり前に聞けるようにしていきたいと思っています。
そして、ゆくゆくは食育に関してはここに聞けば良いという場のようなものをつくりたいです。そこは管理栄養士を始めとした食育のプロフェッショナルが揃う場であり、皆さんの悩みを聞いたり、こちらから情報を発信したりする場です。そんな食育のプロの集まりをつくることで、今は大学で学生たちを送り出す側ですが、彼ら・彼女らが活躍できる場に迎える側へとなっていきたいです。
新しいアプリの開発、オンラインでの発信を増やしていく
Q:「食育×ICTを活用しながら、食育で豊かな人生を築ける場をつくる」という夢やビジョンへ向けてどのような目標や計画を立てていますか?
手嶋 先日、オーストラリアで開催された、ADEのメンバーが集まるインスティテュートに参加してきました。そこにはアジアやオセアニア地域から志ある方たちが集まって来られ、とても刺激を受けました。そこに参加して、私の役割は、食育×ICTの分野での取り組みをもっと広げていくことだと思ったんです。そのためにはまず自分自身が発信することだと思い、今オンラインでの発信を強化しています。
食育ではこういうことができるよ、といったことを、YouTube、ブログ、Twitterなどで発信を始めたので、これを継続、活性化していきたいです。
また、中高生向けの食育アプリの開発を進めたいと思っています。中高生は部活動や勉強でとても大事な時期なので、食でサポートできるようなアプリを開発したいです。そのアプリが専属の管理栄養士になれるようなイメージです。
直感に従って実践する
Q:その目標や計画に対して、現在どのような活動指針を持って、どのような基本活動をしていますか?
手嶋 直感で降りてきたことは実践することを大事にしています。降りてきても消えていくものもありますが、ピンと来たことはすぐに実践します。これはやったら絶対に楽しいだろうなっていうイメージが見えるんです。
変だと思うんですけど、シャワーを浴びる前後に降りてくることが多いんです(笑)。シャワーの水とともに下りてくるような(笑)。食育アプリもそうで、お風呂上がりに思いついて、すぐに知り合いにやりたいって連絡していました。
私は直感で新しいことをどんどん進めていくので、もしかしたら周りの方に迷惑をかけていることもあるかもしれません。バランスをとりながら、我慢はせず楽しいと思うことはやっていきたいです。
ある本との出会いから世界が広がった
Q:そのような夢やビジョン、基本活動を持つようになったきっかけは何ですか?そこには、どのような発見や出会いがあったのですか?
手嶋 ある本との出会いがきっかけで、世界がとても広がったことが今の私に繋がっていると思います。
東京で一般企業に勤めていたところから福岡に戻ってきて大学の仕事に復帰した時に、初めて自分のゼミを持つようになりました。ゼミの学生たち全員を管理栄養士の国家試験に合格させなくてはいけない。自分のゼミ生に対しての責任感はものすごく重く、どうすれば良いのか悩みました。自信もなかったですし、こう見えて色々気にする方だったんです(笑)。
そんな時、本屋に行った時に、ある本のタイトルがパッと私の目に飛び込んできたんです。
「頭がいい人はなぜ、方眼ノートを使うのか?」頭がいい人はなぜ、方眼ノートを使うのか? | 本の要約サイト flier(フライヤー)マッキンゼー、BCG(ボストン コンサルティング グループ)をはじめとする外資系コンサルタントや、東大合格生。これらの頭がwww.flierinc.com
本の内容を読むとなるほどと思いました。そしてちょうど筆者が福岡に来てセミナーを開く機会があり、思い切って参加したんです。
セミナーの内容も素晴らしかったですが、その後参加した東京の講座で一緒に参加していた方たちとの出会いが私にとってはとても大きなものになりました。全国から多様な方たちが来られており、話すほどに自分の視点が移動して、世界が広がっていきました。管理栄養士という枠が取り払われていったのです。人から人へと繋がっていき、今の私がいます。
お陰さまでゼミ生は全員合格しましたし、その後もみんな合格しています。ですから私のゼミは国家試験だけでなく、ゼミでは学生に多くのことを掴んでもらえるように、ゼミでしかできない体験をすることを大切にしています。
やりたいことはとことん突き詰めていく
Q:「ある本との出会いで、世界が広がった」というきっかけの背景には何があったのですか?
手嶋 以前はICTのことなんて全然知りませんでしたし、自分に自信もありませんでした。管理栄養士になってからも最初は「食」や「栄養」という限られた範囲内の勉強だけに留まっていました。けれど、私は一度興味を持つととことん突き詰めていってしまうんです。負けず嫌いで人と同じことはしたくないし、負けたくない!ってとことんやってしまう。そうして突き詰めていく先に、色んな気づきや、人との出会いがあって、世界が広がっていったと思います。本との出会いもそうで、一度読んだら本当かどうかとことん答えを知りたくなってセミナーに参加したのがきっかけでした。管理栄養士になったのも高校生の時、野球がとても好きだったのですが、管理栄養士の人が選手の側にいたのを見て、それなら私でもなれるかも、選手の側にいけるかもって(笑)。
だけど管理栄養士になってみると、社会的にまだまだ認められておらず、学生たちも、将来管理栄養士になりたい!っていう子は少ないんです。私自身、学生の時に管理栄養士になるか迷ったのでその気持ちはよくわかります。それがとても悔しくて、少人数ではありますが管理栄養士の地位向上委員会も立ち上げました。
管理栄養士の世界では、もしかしたら私は変わっているかもしれません。それが怖い時もありましたし、周りの目を気にしていたこともありました。けれど、私だからこそできる役割があると思いますし、その役割をこれからも突き詰めていきたいです。ADEの先生方にはそれぞれの分野で熱い思いを持って活動されている方が多いので、とても励まされます。
「Life is made of “Shokuiku”」
この思いを掲げ、管理栄養士として世界でも活躍しながら、多くの人たちが食育で豊かな人生をつくっていける場を提供していきたいです。
読者への一言メッセージ
手嶋 やりたいことがあって、それがイメージができたならやったらいいなと思います。失敗はないですから。学生にも我慢せず楽しい方を選択してもらいたいです。やりたいイメージへ向かっていくからこそ、未来は現実になっていくのですから。
記者 やりたいことを突き詰めていく手嶋さんだからこそ、色んなイメージを超えて世界を広げて、食育×ICTという分野を切り開かれたのですね。誰もが食に対して安心して聞ける場のイメージが広がりました。本日は貴重なお話をありがとうございます。
✳︎ADEとは↓
教育 – Apple Distinguished Educator
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手嶋さんの詳細情報はこちら↓↓
https://www.facebook.com/profile.php?id=100002916988659
◯AGEデータブック 数字でわかる老けない食事
手嶋さんが、最近、多くの方に広めたいと思っているAGE。この本の栄養監修をしたり、セミナーの講師もされています↓
◯一汁三菜
手嶋さんのゼミ生が始めたYouTube。英語で食育を紹介しています↓
【編集後記】
今回インタビューを担当した小水と吉田です。
手嶋さんの笑顔と、好きなことをとことん突き詰める姿勢は、こちらも一緒に新しい世界へ引き込まれるようでとてもワクワクしました。
食というのは身近で大切なことでありながら、誰に何を聞いたら良いのかもわからないカオス状態だということがお話を聞いてよくわかりました。「食育とは何か」という哲学を土台に、管理栄養士が食育のプロとして、安心・安全な食のあり方を切り開いていくことが求められているのでしょうね。
手嶋さんの今後の益々のご活躍を応援しています!