境界領域は自分を見直す場所になる/陰陽哲学者 高桑 智雄さん

フリーランスでマクロビオティックの陰陽セミナー講師やNPO法人棚田ネットワークに携わり活躍されている高桑 智雄さんにお話を伺いました。

高桑 智雄さんプロフィール                                

出身地:神奈川県逗子

活動地域:東京、日本各地

経歴:1970年生まれ。2001年にマクロビオティック日本CI協会に入社し 、桜沢如一の陰陽哲学に感銘を受ける。故・大森英櫻のアシスタントを担当した後、フリーランスとして独立。2011年より 桜沢如一資料室の設立・運営に携わる。編集・執筆に「マクロ ビオティックの陰陽がわかる本 」「マクロビオティックムーブ メント」など。

現在の職歴および活動:マクロビオティック日本CI協会、桜沢如一資料室室長、NPO法人棚田ネットワーク事務局長

座右の銘:境界線を生きる

善悪の対立から陰陽の調和へ

Q:高桑さんが思い描くこれからの夢を教えてください。
高桑  智雄(以下高桑 敬称略):
善悪二元論ではなく陰陽一元論という物事の見方があることを多くの人に知っていただくことで、人類の意識の変革を起こしていきたいと思っています。

例えば、戦争が起こるにしても根底にあるのは自分が正しい、相手が悪いといった善悪二元論です。そこには、確実に反対側があるんですね。反対側にとっては自分が正しいし相手が悪い、そうすると正義と正義の対立になってしまいます。二分法でこちらが正しい、こちらが悪いという考え方をやめましょう、平等に物事を見ましょうということはいくらでも言われるし、スピリチュアルや宗教の世界でも言われています。

しかし、実際にはHow toがない。そこに物事を全て陰と陽でみるマクロビオティックという考え方があります。善悪ではなく、陰性の遠心力と陽性の求心力という2つの宇宙のエネルギーが交差して我々の現象を生み出しているという東洋的な陰陽哲学です。

それを身につけていくと、すべての現象は陰と陽のエネルギーが調和する様に動いているので、対立していたものを調和にもっていける。対立から調和へという根本的な考え方の違いが生まれてくるので、必然的に戦争やある種の対立が解消されてきて、人類意識がシフトしていくと思います。

食事を通して陰陽エネルギーを感性で理解する

Q:具体的にはどのような方法で、その様な本質的な変化をつくられているのでしょうか?
高桑:
具体的な方法論としては、マクロビオティックは食事を入口にしています。食事はすべての宇宙や環境の集合体であり、陰と陽が組み合わさっています。そして毎日の食事の中から陰陽を取り入れて調和する訓練をすることで、その様な意識が自然に湧き起こってくるというのが本質的なマクロビオティックの世界観です。

そこでマクロビオティックの陰陽の考えを講座などを通して普及することを行っています。以前は1年で1〜2講座だったのが、2018年から開催する機会が増えて、半年で40講座を務めました。現在は3週間で15講座ほど開催し、急激に増えています。

それは時代の要請もあると思います。善悪二元論に根差した西洋文明の行き着くところに来てしまっている。物質文明が極に達している中でこれからは東洋の陰陽的な考えにシフトして行く。そのシフトして行く中での役割みたいなものが出てくるので、色々なところからお声がけいただいているのかなと。時代の転換期には大切な価値観なんですが、それを語れる人がいるかというと、あまりいないので役割がまわって来ているのだと思います。

元々マクロビオティックは、桜沢如一が1920年代に創始して世界に広めていったもので、その過程の中で陰陽調和論が意識されています。善悪から陰陽という考え方にシフトするのはなかなか難しいです。実感しないと分からない、だから食事があるんです。マクロビオティックの食事をしていると、陰陽エネルギーが腑に落ちてくるんですかね。この食べ物を食べれば冷えてくるとか温まるとか、食べ物によって体の変化というものが感じられてくると、やっぱり陰陽があると気付いてくる。人間の心も全部がそうなってくると段々と深まっていくので、マクロビオティックは食べ物が大事なんです。陰陽論だけがやりたいという方がいますが、陰陽論だけやっても体が陰陽ということを感性として理解ができないと、頭で考えていると難しいところがあるんです。

陰陽からみる棚田の世界

Q:高桑さんは棚田の活動もされてますが、棚田も陰陽哲学と繋がる点があるのでしょうか?
高桑:
陰陽哲学と棚田も通じてきているところがあると思います。
例えば、砂丘の風紋やシマウマの縞、水面の波紋なども全て実は2つのエネルギーがつくっているものなんです。数学理論でチューリングパターンといいますが、拡散が速いエネルギーと拡散が遅いエネルギーがぶつかって反応することで波ができて、それがシマウマの模様や波紋、うろこ雲など自然界の連続した曲線を作っています。

まさに遠心力である陰性と求心力である陽性の絡み合いがその模様を作っているとなると、地滑り地帯にある棚田は上から下へ流れる拡散的なエネルギーと、人間が下から抑制するエネルギーが絡み合っていくと、自然と自然界のチューリングパターンという形で曲線が連なる模様になるんです。それは、正に自然の陰と陽の働きに対して、人間が調和しているからその様な模様ができる。

棚田は自然のエネルギーと人間のエネルギーがある種のチューリングパターンで調和している。陰陽の調和というところの、ひとつのシンボルとして成り立っていく。別々にやっていたマクロビオティックと棚田の活動が陰陽を通して統合され、融合していくと感じています。

その様な、目に見えないエネルギーの世界や形というものを陰陽などのツールを通して、みなさんに伝えて行くことにある種の使命感を感じています。

思考から感性へ-陰陽バランスの逆転-

Q:高桑さんがマクロビオティックや陰陽哲学に関心を持ったきっかけは何だったのでしょう。その背景にはどんな出会いや発見がありましたか?
高桑:
子どもの頃から、自分で料理を作ることが好きでした。母の手伝いをしながら高校や大学の時は家庭料理をつくっていました。その一方で、大学の頃から哲学的な考え方・神話学・宗教学・民俗学・人類学が大好きでした。偶然にも結び付くとも思わなかった家庭料理と哲学的な世界が一緒になっているのがマクロビオティックの世界でした。

マクロビオティックを知ったきっかけは、奥さんが偶然に東北沢のマクロビオティックのセンターを見つけてくれたことでした。
結婚前に二人とも老舗のハーブ屋さんで働いていたので、そこで私もハーブの仕事をしながら自然治癒や自然療法、ハーブ療法や古代療法などを神話学や宗教学の延長線上ですごく興味を持ちました。彼女はハーブ、私は料理ということで自然療法プラス料理がマクロビオティックだということは、彼女の中にもあったんだと思います。中でも、自然療法でどういう自分の表現ができるかとなるとハーブではないなと思った時に、マクロビオティックに自然に入っていけたというのはあると思います。

それと結婚した当時、お互いにヒーリングや癒しということがテーマだったこともあり、彼女の誘いでレイキを受けたことが新たな自己形成のきっかけとなりました。

頭で考える癖があり、知的に物事を考える学者肌のところがあってマクロビオティックも陰陽にしても当時は頭で理解していたんです。
感性の自分と思考の自分がいて、何だかんだ思考の自分が強かったのがひっくり返って、感性と思考の陰陽のバランスが逆転して安定しました。すごく論理的で知的な物言いをしますが、全部感性で捉えたものをデジタル処理するときに思考を使うようになりました。

自己を越境して、境界領域に生きる楽しみ

Q:その発見の背景には何があったのでしょう。幼い頃から近い感覚を持たれていたのでしょうか?
高桑:子どもの頃は何も考えていなかったですね。大学時代バンドをやっている時に、宇宙と繋がる意識というか、トランス状態が感覚的にありました。自己の消失というか、エゴや自己が一瞬に消失してしまう感覚みたいなものがあって。そういうことが自分を導いている、それってどういうことなんだろうと民俗学や宗教学などからヒントを得て求めていくうちに深めていったという感じですね。

元々、自分に自我を持たないといけないということに、違和感がどこかあったんだと思います。自分をしっかり持ちなさいとか、自分らしく生きなさいと言われることがすごく違和感がありました。自分らしさって何?自分て何?と思うところがありました。

だけど、完全に自我を消失して宇宙的な世界にいくと、ある種の宗教家やスピリチュアリストみたいになってしまう。そこもやはり自分の境界線のテーマがあって、完全な神の世界や無限の世界にいくスピリチュアルで陰性な生き方でもなく、社会の中で軸足を持って自己を確立して陽性な自分の中で名を馳せたりするのも違う。
自己を消失した無限の世界と自己の現実の世界の境界線上にいて、その二つの世界を仲介する役割として中間領域にいることが楽しい。

今の世の中は、二分法で集合体の中に入るか出るか、出ることはレールを外れて自ら死を選ぶ様な価値観になってしまう。境界線の中で行き来する生き方は無限に、仕事もスキマ産業的なことをやれば生きていけるものです。
生まれ育って築き上げてきた意識の形が強烈なので、そこから境界領域に出ていくことで、自分を見直してまた戻って行くこともできる。境界線を生きるということができる様になればもっと楽に生きられるのではないかと思います。

わたしの生き方は、自我の消失というか自我がない訳ではないですが、自分という枠組みが溶けて越境していくことの楽しみがあり、昔から境界領域が大好きでした。棚田もある意味山と里の世界の境界領域なんです。自己の境界線を越えていく、自己の境界線を行ったり来たりするというのは新しい楽しみではないかと思います。
陰陽哲学と出会う前から無意識的にその様な感覚があって、最終的に中間領域に生きるという生き方を陰陽という言葉で説明できるようになりました。

季節の巡りの様に、どんな時代も楽しんで生きる

Q:これからどんな美しい時代をつくっていきたいですか?
高桑:
今の時代も十分美しいし素晴らしいと思っています。そして、すべが変化していく宇宙が美しい。そのことに気づくことが最大の意識の転換になると思います。今も宇宙は変化しているし、どのようにでも変化していくし、この変化の法則こそが美しいのです。四季も冬が悪いとか夏がいいということではない。時代もひとつの季節なんですね。その季節の巡りを楽しむというのは、季節だという認識があるから。春があるから冬を楽しめる様に、今の時代も常に次の時代へと変化しています。時代が季節の様に思えるのも陰陽の理解があってこそなんです。陰陽で物事を捉えられるようになると、どんな時代もこの瞬間を楽しんで生きることができると思います。

記者:
本日は貴重なお話をありがとうございました。

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高桑 智雄さんの情報はこちらから

高桑 智雄さん Facebook
https://www.facebook.com/tomoo.takakuwa

【編集後記】
今回、記者を担当しました久保真弓、小田原千草、目黒秀綺です。
高桑さんの本質と現実の間で境界線を生きる生き方、その中枢にある思想を今回お聞きすることができました。これからのAI時代の急速な変化の時代、生き方を模索する時により本質的な観点から意識の変革を起こす大切なキーワードを頂いた気がします。
高桑さんのこれからの活躍を心から応援しています。

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