多拠点時代・分散型時代における新しいチームのかたちを創る 株式会社SWAT Lab共同代表 矢野 圭一郎さん

AI時代においてコロナの影響もあり、ますますデジタル化の流れが加速しています。そんな中これから来る多拠点時代、分散型時代における新しいチームのかたちを創ることをビジョンに掲げ、Web3.0の発祥地であるベルリンで事業をされている矢野さんにお話をお伺いしました。

 

矢野圭一郎さんプロフィール

株式会社SWAT Lab 共同代表 矢野 圭一郎

中学、大学時代をドイツで過ごす。

Salesforce、Google等外資系IT企業で法人向けクラウドの事業開発を経て2015年よりベルリンを拠点に拠点を移し活動。オープンイノベーション支援事業を行うInteracthubを2017年に設立。2020年より株式会社SWATLabを設立し”分散化時代の新しいチームのかたちを創る”をビジョンに、世界のトップ開発者をリモートチームしてチーム化、見積をAIアルゴリズムで自動化するプラットフォームの開発に取り組む。

スペイン IEビジネススクール にてMBA修了

ドイツ、エストニアでBlockchain関連事業を起業経験あり

共著書 ”ネクストシリコンバレー”「次の技術革新」が生まれる街」 日経BP出版

 

Q:どのような夢やビジョンをおもちですか?

矢野圭一郎さん(以下、矢野敬称略):生まれた国や人種や地域の価値観に縛られない自由でロケーションフリーな個人が世の中に大きなインパクトを生み出せる世界をつくれるよう、事業を通して少しでも貢献できればと思います。

現状は決して個人が自由に世界中で事業をできるとは限らず、生まれた国や人種によってできるビジネスの幅があります。ドイツでも成功している経営者は白人が多く、成功するのは白人系、あるいはユダヤ人系とよく言われています。

そのような生まれた国や人種の縛りは海外で事業をしているととても強く感じています。

そういったものを超えて、人間が自由に活動できるというのは、次のステージですごく重要になっています。

 

Q:それを具現化するために、どんな目標や計画を立てていますか?

矢野:まずは事業として成功することが大事だと思っています。

元々ドイツやエストニア等で会社の起ち上げをゼロからした経験があるのですが、2020年7月から株式会社SWAT Labという会社を日本法人で起ち上げ共同代表として活動しています。

SWAT Labの目指すのはこれから来る多拠点時代、分散型時代における新しいチームのかたちを創ることです。世界のトップ開発者のDBを構築中で、リモートチーム派遣ができるサービスです。

将来的には検索と見積機能を強化して、世界中のトップ人材がどこにいても様々な企業のITプロジェクトに参加できるようなものを目指しています。

私は現在ドイツのベルリンを拠点にしており、共同創業者は東京に在住しています。

まずは日本での事業の拡大が中心で、より実績の出しやすい領域でビジネスをつくっていきたいと考えており、すでに日本の一部のベンチャー企業やトップ企業との繋がりもできています。

欧州を代表するスタートアップ都市であるベルリンでは、コロナ以前から法人もセールスチームもドイツ国外にある現地スタートアップが一般的で働き方だけでなく、リモート法人、リモート開発というのは当たり前でした。ヨーロッパは通貨や規制も多種多様で規制の厳しいEUをあえて避けて法人をつくったり、税金の安い国に事業拠点をおいたり早いうちから国を跨いだ”いいとこ取り”をしており、そういった様子をみて、ロケーションに関係なく優秀な人が活躍できるようなプラットフォームを作りたいと感じていました。まずは事業をしっかり軌道にのせて、ユーザーに価値を感じてもらえるサービスに育てていきたいです。

 

Q:その目標や計画に対して、現在どのような活動指針を持って、どのような(基本)活動をしていますか?

矢野:基本はどのスタートアップもやっているような地道な活動と信頼の積み上げ活動ですね。

ピッチイベントに出たり、ウクライナ等東欧に開発センターを持つ企業を提携したり、様々な地域と話しますが殆どオンラインで営業からパートナーシップ、資金調達までやってきました。

将来的にチームはオンラインが基本で四半期に1度世界のどこかの都市でオフサイトミーティングをするといったブレンディッド方式のチーム文化を作りたいと思います。リモートとリアルを両方取り込んで、働き方を進化させたいと思っています。

目下目先の実績作りが大事ですが、長期の目標やビジョンがないと良い第三者を取り込んだ良いビジネスは作れないのでバランスが大事だと感じます。

 

記者:日本人として海外で事業をすることで意識されていることは何ですか?

矢野:あまりローカルの中に入っていかないというのが大事だと思っています。

例えば、ドイツに馴染むためにドイツ人の会社やビジネスに合わせて、彼らのやり方になってしまうと、色々と難しくなってくるんですね。

日本人の中でも海外で事業をするときに現地に馴染まなきゃという発想をする人がまだ多いんですよ。生活面では必要になってくることもありますが、ビジネスにおいてはできるだけ世界の共通のフレームワークに近いもので進めていくことが大事だと思っています。

 

 

記者:今コロナの影響もあり、日本に置いてもデジタル化が重要だと思いますが、日本がデジタル化に向けて一番変化させないとならない点は何だと思いますか?

矢野:日本で素晴らしいと思うことは食べ物やインフラなどのハード面ですが、逆に弱点は多様性がないところです。先進国の中で日本ほど人種の多様性がない都市はないと思います。

そのような環境だと何かサービスを作ろうとしたときに、デザインが偏る傾向があります。

逆にアップルなど色々な背景を持っていること人たちが使うことを想定しているソフトウエアは限りなくシンプルに近くなります。

日本はそのような発想がないので、マニュアルや無駄が多くあり、そのことが非常にネックだと思います。

 

Q:そもそも、その夢やビジョンを持ったきっかけは何ですか?そこには、どのような発見や出会いがあったのですか?

矢野:私は中学時代もベルリンで過ごしましたが、そこで感じたのは文化や歴史は、表向きはきれいな面がありますが、受け手側によって偏見を助長するということでした。

私も日本人を含むアジア人に対する偏見による差別を受けましたし、当時はドイツの統一直後ということで西ドイツ人が東ドイツ人を差別する場面もよく見ました。そういう偏見や差別は世界中にあります。なので、なぜ人は生まれた環境を選ぶ事はできないのに生まれた環境で差別や偏見と戦わないといけないのかと思っていましたし、広い意味でマイノリティ文化に興味を持つようになりました。

大学時代の夢はジャーナリストで、メディアを通して影響力を発揮するのがそうした世の中の不条理を解決できるものと考えていましたが、私が社会に出た当初はブログやEコマースやソーシャルメディアの黎明期でITの方が今後圧倒的に影響力を持つことが見えたため、IT系ベンチャーや外資系ITのキャリアに路線変更しました。例えば私が過去働いていたGoogleのようなグローバル企業は文化などのバックグラウンドに対する偏見が非常に少なく、同じルールで結果を出せば良いのでビジネスはある意味フェアな世界だと思いましたし、そうした多様性を戦略的に取り込む企業は世界に大きな影響を与えています。

東京でビジネスパーソンとしてのキャリアを中断して海外に出たのは、Google在籍中に当時の上司がMBAを持っていた影響で、スペインのMBAプログラムに参加し、そこで色々な国々で会社やNPO団体をサクッと起ち上げたり売却したりする同僚をみて、国際的に活躍できる起業家を次のキャリアにしたいと考えたのが切っ掛けです。ヨーロッパの起業家があつまるベルリンに戻って自分でビジネスをつくってみたいと思いました。ベルリンはアートや音楽等表現の世界最先端を行く街で、そこでたまたま当時DJグループを結成して活動していた今の共同創業者と知り合いました。

 

Q:その発見や出会いの背景には、何があったのですか?

幼少期から現在に至るまでの経験を経て、全体を通して感じることは、色々な仕組みが一見国際化されて世界は小さくなったように見えますが、人の移動とファイナンスは今でも国の規制に大きく制限されていると感じます。

外国で事業をやる場合に外国人は現地のファイナンスが大抵使えないので苦労します。ビジネスをする上で特に規制や制限や法律やルールなどハード面が与える影響は大きく、そういったところを変えて超越したものをつくっていきたいと思っています。

一方でオンラインのコミュニケーションや仕事環境は加速的に良くなっているので、チームや会社のあり方は過渡期で大きなチャンスのタイミングだと感じていますし人の移動と国を超えたファイナンス革命はWeb3.0時代に取り組むべき興味深いテーマです。

今I TのトレンドであるWeb3.0の中心はベルリンです。アメリカのシリコンバレーは構造的な限界もきていると考えていて、世界でも優秀なエンジニアもベルリンやウクライナにいるということも聞きます。

物理的な移動は最小限で、世界のいいとこ取りを最大限にするのがこれからの働き方でそうした時代に合った仕組みを創ることが目標に近づく第一歩だと考えています。

まだまだチャレンジャーですが、チームで実績をつくっていきたいです。

 

記者:矢野さん、貴重なお話ありがとうございました!

 

矢野圭一郎さんの活動についてはこちらから↓↓↓

●株式会社SWAT Lab
●日経BP出版 ネクストシリコンバレー(矢野共著)
https://www.amazon.co.jp/dp/B082TZPKHK/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1

●サイバーエージェントキャピタル Monthly Pitch登壇
https://monthly-pitch.com/2020/06/swat-lab/

●創業手帳 令和の新しい働き方100秒ピッチ優勝
https://www.youtube.com/watch?v=HlZYiJadz3Q

●創業手帳 欧州のテクノロジーとアートの中心ベルリンで活躍ー矢野圭一郎氏に聞くリモートワーク仕事術
https://sogyotecho.jp/remotework-interview/

●日経Bizgate コロナ渦で戦う世界の日本人起業家
https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO6499367014102020000000?fbclid=IwAR27PftXG80w8eQFwgUiAGYc7rTttH2Xz7d9QIDzIGKn2l7Tzfeo7HrbZMQ&page=2

●X Hub Tokyo 東京都/デロイト主催 欧州のスタートアップエコシステム活用法
https://x-hub.tokyo/event/4725

●スイス大使館主催ブロックチェーン先進国・スイスの最新技術動向とビジネス導入に迫る
https://peatix.com/event/1530652?lang=ja

 

編集後記

今回インタビューを担当した、岩永と磯原です。海外で活躍されている矢野さんの話をお伺いしとても刺激を受けました。今までの国や人種、法律やルールなど既存の秩序が古くなり、これからの時代において必要な新しい動きがスタートしていることを感じました。これからの矢野さんのご活躍がますます楽しみです!

2020-10-22 リライズインタビュー(矢野さん)

 

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