北海道で“個性がキラリと光るカフェ”MORIHICO.代表 市川草介さん

こだわりのある空間と珈琲で、訪れた人の心を魅了し続ける、北海道では知る人ぞ知るカフェ「森彦」のオーナー、市川さんのルーツにとことん迫ってみました。

■市川草介(いちかわ そうすけ)さんプロフィール
出身地:東京
活動地域:北海道 
北海道造形デザイン専門学校グラフィックデザイン科、東京デザイナー学院インダストリアルデザイン学科両校卒業。大手印刷会社にて嘱託でADを務める傍ら、1996年に森彦を創業。現在はコーヒーロースターブランドを中心として、札幌市内に12店舗のショップを展開。

「茶室から始まった“一期一会”の精神」

Qどんな心の在り方や認識の変化が今のご活躍に繋がっていますか?

10代の頃からカフェオーナーへの憧れを持ち、千利休の“茶の湯の精神・侘茶の世界観”に強く魅了されていたんです。最初は、夢中で作った茶室から端を発し、その中で得た“一期一会の精神”と、“人間関係構築の大事さ”に気づいたことが、この商売を始めたキッカケです。

周りではファーストコーヒーチェーン店が台頭する中、かつて好きだった純喫茶がどんどん街から消えていく事に対して、なんとかならないものかと思っていました。

その時々の現象や、時代の変化の中で自分の中の大義が生まれていき、これが今の活動に繋がってると言えるでしょうね。

「時代が変わったから自分も変わろう」というのはどうも嫌いなタチで、逆のことを言えば「その時代を変える先頭に立ちたい!」というのがあるんです。

「行き過ぎた資本主義」

人間の頭の中では、右脳と左脳がいつも戦っているが、今の社会は左脳中心になっている。だけど、「右脳の声を無視して経済活動をしていると、やっぱりおかしくなりますよ。それが、“行き過ぎた資本主義”じゃないかと。」

本来は、人間が幸せになる為に考えられた資本主義も、資本の蓄積が一つの怪物みたくなり、ある時、人間がコントロールできなくなってしまった。それを取り戻す為にも、右脳の声を聞く必要があるのではないでしょうか。

「これからの世の中を変えていくのは、美意識」

QこれからはAIが活躍する時代と言われていますが、AIが活躍する時代に必要とされるニーズは何だと思いますか?

一言で言えば“クリエイティヴなもの”でしょうね。どんなにAIやロボットができても、人間にしかできないことがある。AIはプログラミングされた世界であり、プログラムを作ったのは人間だから。

「カフェをつくるなんて、AIには絶対できないこと。人間はクリエイティヴな活動(=右脳的な活動)をどんどんしていかないと、左脳人間は本当に仕事を取られるぞ!そもそも労働者ではダメだということです。」

記憶力のバケモノみたいな、学校の今の勉強方ばかりしていては、クリエイティヴな人間は生まれない。大事なのは、そういうものを元にして何をつくるのか?
逆に、勉強なんかしないで野遊びをしてた方が、よっぽど面白いものができるんですよ!

”これからの世の中を変えていくのは、美意識やクリエイティヴな力”これが私の信念です。

「仕事と作業は分けて考える」

従業員にも朝の朝礼では、「仕事と作業を分けて喋ってくれ」と教育しています。
仕事とは自らが考えて行動すること、作業とは既に決まっている行動。日本人は、そもそも仕事をしていない、作業ばっかりしている。

「もっと仕事をしようじゃないか!」

仕事というのは付加価値を生み、給料も上がるわけですよ。しかし、作業ばっかりしてたらAIやロボットに仕事を取って変わられる。なので、「全ての事業はクリエイティヴな活動に変えていかないといけない」と、いつも従業員には口を酸っぱくして言ってます。 

「日本人の持つ欧米コンプレックスを克服し、日本人が大義を持つべき」

Q市川さんは、今後どんな美しい時代を作っていきたいですか?

今は、どんどん美しい時代になってると思いますね。新しい価値観の時代が来たんだろうなと思っています。

欧米人が作った資本主義で、ずっと世界中が動いてきて今も健在だが、“行き過ぎた資本主義経済の揺り戻し”が起きている。それが、一連のサードウェーブカルチャーだと思います。資本主義を目指しても、人は幸せにならないと気づいた人たちが、別の動きをし始めています。

本来は東洋人が持ってた考え方“足るを知る”だったのが、日本自体に大義がない事から迷走を始めました。とにかく欧米というものを習って、彼らのカルチャーを何でも受け入れれば、なんとか世界に通用するぞと思っていたんですね。さらに、経済大国になってからの見失い、そこからの凋落ぶりがひどい。

“日本人でしかできないこと”が本来あって、逆に言えば欧米人たちはそこを尊敬していました。だから、「日本人がこんな欧米文化に毒される姿を、本当は欧米人たちは見たくないんですよ。つまり、日本人自体が大義がないから失ってしまった。今こそ日本人が一番、大義を持つべきではないでしょうか?」 

「一人ひとりが主人公にならなければならない」

美しい時代は、望んでいるだけでは来ない。傍観者ではなく、“当事者として一人ひとりが主人公にならないといけない” これは、民主主義と同じ考えです。
民主主義とは政治の国民参加、しかし、今の日本の民主主義は民主主義ではありません。民主主義とは、権利を自分たちから獲得するものです。

「つまり、参加しないとダメだよ!無関心ではダメだよ!全ての事に関心を寄せましょう」

「テレビやインターネットばかりを見て、スマホばっかりいじってたら、実態をいじれなくなる。リアルな世界にちゃんと住んでください」と言いたいですね。

これは意識の問題で、みんなの意識が変わればすぐに変わる。だから、みんなが主役になることが大事だなと思います。

「やおよろず経済の復活」

Q最後に、市川さんの“大義・MISSION”とは何ですか?

表現するならば「やおよろず経済の復活かな」

今は資本主義経済。これは一神教の国が作った考えで、神は一つだと。だから、これだけの企業が激烈な競争をやって、最後には一社が勝ち残るような、仁義なき戦いをやっています。お客さんにとってみたら選ぶ自由がなくなってくる、そんな戦いはやめるべきじゃないでしょうか。

欧米人の考える会社とは、商品なんです。だから売買をやってるじゃないですか。
しかし、私たちの考える会社とは、欧米人の考え方とは全く違うんです。

私たち(日本)の会社の社とは、社(やしろ)です。

「私たちは、社(やしろ)に集いながら、仕事という神事(しんじ)を行っている。仕事というのは、神事(かみごと)なんですよ、本当は。そこに気がつけ!」という事なんですね。

座右の銘「一事が万事」

Q市川さんの座右の銘とは?

“一事が万事” つまり、「一時をバカにすると、何も成すことはできない。一期一会の精神と非常に似てるかな。今しかないんですよ!今を全力でもって生きること、そうすれば明日は必ず良くなっていきます。」

黙ってても、明日はよくならないから。明日、明日と先送りしてたらダメです。今をどうするか、今の判断・決断・行動が明日を作っていく。みんなすぐに棚上げ、先送りをするから、ゆめゆめ気をつけないとね!」

市川さん、本日は素晴らしいお話をありがとうございました。日本人へ向けた、熱いメッセージをたくさんいただきました。
北海道へ来たら、ぜひ森彦へ足を運んでみてくださいね。

【編集後記】
今回、インタビューの記者を担当した廣瀬と清水です。

市川さんのルーツには、江戸っ子の気風(きっぷ)である「意気(いき・創意工夫)・いなせ・反骨精神」が、あらゆるコメントに溢れていました。
これからもクリエイティヴな人間がどんどん増えていくことを願いながら、共に新しい時代を創っていきたいと思いました。 

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