「常識の枠に捉われずに、介護業界を超えて、全ての人の人生を豊かにしたい」M&M 村瀬和亮さん

死を通して『向き合う』ことを決め、病院勤務・グループホーム勤務・コムスン時代・ニチイ学館時代など様々な経験を積んだ今、介護業界を超えて人が輝く仕組みを作るため、まだ世の中にないものを生み出したいと人の繋がりの中で発想し具現化している、村瀬和亮さんにお話を伺いました。

プロフィール
出身地:北海道旭川市
活動地域:北海道
経歴:札幌総合福祉専門学校→医療法人財団敬和会時計台病院(現カレスサッポロ時計台記念病院)→株式会社コムスン→株式会社ジャパンケアサービス→株式会社ニチイ学館→有限会社ケアアシスト→M&M株式会社
現在の職業と活動:介護系企業を中心にしたコンサルタント業
座右の銘:判断基準は楽しいかどうか      

「『常識に捉われるな』『かっこよく』『面白く』『楽しんで』『真剣勝負だ』

Q. 今の活動についてお聞かせください 

村瀬和亮さん(以下 村瀬 敬称略) M&Mを立ち上げ、コンサルタントとして主に介護会社のフォローをしており、介護施設を運営したい企業のマッチングを中心にしています。
 介護施設を作ってからは、運営指導や人の採用のお手伝い、3ヶ月〜6ヶ月を目処に満室にして黒字を目指すことなどをトータルでサポートします。マネージメント職の研修だったり、離職率の高い施設の課題を具体的にして、入社時のオリエンテーションから育成スケジュールまで作成をし、現場の人が実施できるようにもしています。
 その他に介護福祉士の養成校の講師や、外国人で介護職として日本に来られた方に向けて講師をするときもありますね。英語はできないのでGoogle先生を使いながらですけどね笑。

 M&Mの理念は、「常識に捉われるな」「かっこよく」「面白く」「楽しんで」「真剣勝負だ」です。私は、介護業界を1mmでもいいから良くしたい、業界を変えたいと思っています。
 
 私は、依頼された会社に入るまでに早くても1、2ヶ月かけるようにしています。何度かお会いすることによって、その人の判断基準がわかり、どのようにアプローチして、いつまでに解決するのかを事前に決めることができるのです。僕の仕事のスタンスは、1年経ったら僕がいなくてもやれる仕組みを作ることで、それができなかったら失敗と考えています。依頼された会社に入ってから情報収集を始めると2ヶ月分、クライアントさんは無駄なお金を払うことになりますよね。仮に10ヶ月しか仕事をしていないとなったら、僕としても不完全燃焼ですし、やりきれずに中途半端になったら相手にも失礼です。誠意をもってやるし、理念にもある真剣勝負はそこにあります。
 
私は、出会った人は全員成功してほしいと思っています。人から、「そんなにノウハウを出したら無くなるよ」と言われることもありますが、僕の成功ノウハウで良ければいくらでも出すよと思っています。僕はそれよりもどんどん成長するからいいんです。常に1歩2歩先に行けるようにしていきたいし、もし僕が抜かれたら時は、「それを教えてください」となるだけなので抜かれてもいいと思っています。

「これからあなたは、この死を通して何万人の人を支えるのだから逃げるな」

Q.介護のコンサルタントをするきっかけは、何だったのですか?

村瀬
 高校卒業したらトラックの運転手になろうと思っていたのですが、担任の先生から吉田学園の福祉の専門学校を紹介されました。介護の「か」の字も知らないで入ったら、下の世話・お風呂の世話をしなくてはいけないことがわかってすぐに辞めたくなりました。 けれど、お金を払ってしまったのでしぶしぶ通うことになりました。そんな状態ですから、実習が1年ごとにあるのですが、とにかくやる気がなく全てC評価。実習に行き、「◯◯さんとコミュニケーションとって」と言われると、だるそうに「はーい」と返事をする感じで、それがずっと続いていましたね。 

 僕が変わったのは2年生の実習の時です。4週間という期間で1人の方を担当し、アセスメントをして、介護計画を立て 、ケアをし評価をするという実習で、雨竜町の寿園というところにお世話になりました。ですが、その時に担当した方が脱水症状による肺炎によって亡くなったのです。その時の僕は正直やる気がなく、アセスメントも適当にやっていたので脱水症状を見逃していたのです。僕のせいだと思いました。ただでさえ辞めたいのに、こんな生き死にに関わるなんて辞めたいと思い、逃げ出そうとしました。
 その時指導員の方から、「これからあなたは、この死を通して何万人の人を支えるのだから逃げるな!」と言われ、涙が止まりませんでした。逃げないで向き合うことを決めたのです。これが2年生の9月。介護福祉士の学校は2年制なので、翌年1月の介護福祉士の国家資格に受からないといけないのですが、ここまで僕はまったく勉強はしてこなかったので、模試の成績も125点中の20点とか30点のレベルでした。75点が合格ラインだったので、毎日寝ないで勉強をしました。そこから猛烈に追い上げ、なんとか無事合格し卒業をすることができました。2年目の実習がなかったら、僕はこの仕事はしていませんでしたね。

「様々な向き合いを経験して、自分に関わった人は全員成功させたいと思うようになりました」

Q 「向き合うこと」実習を通して芽生えた思いを抱えながら、どんな経験や学びを積まれていったのですか?

村瀬 急性期の時計台病院では、1日でも早くどう帰すのか?を共通の課題として、多様な症例と向き合いながら、他職種連携を学びました。最初に配属されたのが、脳神経外科・リハビリ科に5年、新しく回復期リハ病棟に入り、合計で8年いました。介護の考え方などはここで学びました。病院は退院したら新しい人が入ってくるスパンが3ヶ月〜6ヶ月と早いので、沢山の症例数を見ることができ、色んな病気の方や色んな考えの方と出会うことができました。 また病院は専門職の集団なので、専門職と対専門職のやり取りが求められ、自分がどのポジションで何をするのかが明確に分かれています。他職種と連携しないと僕たちの仕事はできないので、他職種連携を学ぶことができたいい機会でしたね。
 この経験は今の僕の武器になっています。施設に人を迎え入れるとき、書類1枚しか送られてきません。病名のことが分かっている必要がありますし、書類の記載が優しくない場合には、専門用語が英語やドイツ語で書かれているのです。僕の場合、その紙ベースで判断ができることによって、施設に入る前に環境整備ができ、仕事の効率化やスタッフの安心に繋げることができました。

<グループホーム時代は病気から人生に向き合う>
 時計台病院を退職後、28歳の時、グループホームで管理職としての仕事を始めました。病院の頃は、たとえばその方が認知症を持っていたとしても、内臓疾患などの病気を治すことが優先的になりますが、介護の現場にいくと「認知症を抱えている人と、どう生きていくのか」がテーマになります。

 認知症は治る病気ではないけれど、進行は止められるし、関わり方でどうにでもなるのです。話す時の角度や距離感、その方のバックグラウンドなどをちゃんと分かっていれば、その人は穏やかにちゃんとした生活を送ることができます。
 認知症の方と接する時、家族だと近いから感情的にもなりやすいのですが、専門職というプライドと技術を持って接することによって、穏やかに関わることができるのです。そうすると相手も穏やかに過ごせます。この時の顔はなんともいえない輝きがあるのです。グループホームのなかで介護の奥の深さと出会い、『その人の人生と向き合う』ということを学びましたね。

<組織のマネージメントと向き合う>
 グループホームを退職後、コムスンという会社に入りました。マネージメントと介護のスキルを持って、次は営業を学んだのです。最初は全くダメで、営業先で「こんにちは」も言えず、まともに営業ができるまで3ヶ月程かかりました。また、組織のマネージメントを通して、「伝える」ことを学びました。
 コムスンはたくさんの施設を展開しており、各支店長や各所長に指示をしたことが現場に伝達されていないことがあったのです。考えた末、伝わっていないなら皆の前で言ってみようと思いつき、そこから全職員を集めて伝達をしてみました。そうすると、皆さんちゃんと聞いてくれましたし、しかも週2回ぐらいしか来ていないパートさんがいいことを言ってくれたりしたんです笑
 この経験を通して人は自分のポジションを守りたいし、怖さがあるのではっきり言いたくないけれど、それでは何も変わらないし、組織や企業は走り続けないといけないので、言うべきことは言うことが大事だと気がつきました。
 コムスンを退職し、その後勤めたニチイ学館で一番大きな失敗がありました。入社1ヶ月の時に、僕が言ったことがきっかけで全員から退職届をもらったのです。ここで逃げたら人が辞めて行く、それは嫌だと思いました。私は皆さんの前に1人座り、皆さんから一斉に言われて、「1人ずつお願いします」と1人1人と話をしました。これを通して学んだことは、会社のためを思って何かを伝えなければいけないときには空気を読んではいけない。けれど言った後のフォローでは空気を読まないといけないということです。言った後のフォローをすごく大事にするようになりました。
 さらにコンサルも本格的に行いました。当然数字を求められ、何十億という数字を求められます。帯広や釧路などインフラの整っていない地域でオーナーさんを見つけ、施設を作って行くことや、その土地の経済効果のプレゼンをしに市役所へ行き、地域が活性化していくことが楽しかったのです。ただ、さすがに3年も4年もハードな生活を続けてるとボロボロになっていて、今の経営のベースはここでついたけれど、このままやり続けることが難しいと思いました。そこからニチイ学館を退職し、M&Mを立ち上げることになりました。

記者 専門時代の死を通して、病院で病気を良くすることと向き合い、グループホームで生と死に向き合い、さらに組織運営やマネージメント・コンサルを通して向き合うことを学び、立ち上がったのがM&Mなのですね。

村瀬
 そうですね。カッコよく言っていただいてありがとうございます。

記者
 全員成功させたいと思ったきっかけもニチイ学館時代にあるとお聞きしましたが。

村瀬
 新しい施設を作る時に、能力的にできる部下が3人いるのに、ポストが1つしかありませんでした。2番手3番手になることをその人たちは望んでいない。その話を部下にした時、彼らは嗚咽しながら悔しい!と泣いてたんです。それを見たときの締め付けられる思いと同時に、こう言う人たちを出してはいけない。自分に関わる人間を泣かせたくない、全員を成功させたいと思ったのがきっかけです。それができるようになるのに何年もかかったけれど。

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「ライフプロデューサーになりたい」

Q どんな夢・Visionをお持ちですか?

村瀬 最終的なゴールは、健常者も障害者も楽しめる飲食店です。美味しいお店でも車椅子で入れないことがよくあります。車椅子の友達もたくさんいるので車椅子の人とよくススキノに行くのですが、だいたい行くところが決まっています。友達が「話せるのは楽しいけれど、この店は飽きた」と呟くのを聞いて単純に、「じゃあ、それをやろう」と思いました。
 全ての人の生活を豊かにしたいと思っています。そのために世の中に無いものをどんどん積極的に生み出していきたい。介護だけではなく、ライフプロデューサーになりたいなぁと思っています。

 介護の枠や常識の中だけで仕事をしていたら、人生は豊かにできない。なので「常識にとらわれるな」を理念の最初に入れました。そこがぼやけている段階ではカッコよくないので。輝いている人を1人でも増やしていくことが世の中も経済も潤うし、その仕組みを作ることで生活は豊かになります。「この人かっこいいな、この人みたいになりたいな」と思われる人としてのモデルになりたいですね。 

「普段から『生活の中で負担になるものは何ですか?』と聞いています。」

Q 夢・Visionに向けてどんな取り組みをされていらっしゃるのですか?

村瀬 
世の中にないものを作っていきたいので、常にプランニングをしている段階ですね。今は何かしたいけれど、何をしたらいいのかわからない人をサポートをする事業をしたいと考えています。起業する時のヒントをあげたいなと思っています。
 また、課題分析は当然しますけど、大きすぎて何から手をつけていいかわからない時があります。問題は色んなものが付随して1個の問題になっているので、課題を4分割などに分けてみるのです。そうして、あなたはこの担当と決めることによって1ヶ月で解決しようという動きが生まれます。中から外に向けて解決した方が早いですし、問題解決のやり方が分かればいろんなことが解決できるようになって、従業員の満足度も上がり辞めなくなるし、お客様にも喜ばれるのです。
 
 普段から「生活の中で負担になるものは何ですか?」と聞いています。実際にあった事例なのですが、友達との飲み会である女性にこの質問をしたときに、食事作りと水回りの掃除が負担で週に1度来てくれら助かると話していました。出せる金額をお聞きすると2000円と言われたのを聞いて、「じゃあ、2000円でやります」と。そういうことをやってくれそうな会社とマッチングをして通常5500円が相場の中、2000円でサービスを行ったのです。
 この会社にとっても起死回生の一手で、これを外したら後がない最後の勝負をやってみようと2000円の家事代行サービスに踏み切り、この事業だけで年商1億の売り上げになりました。会社も潤いましたし、サービスを活用した女性は子供や家族と過ごせるのです。そんなピンポイントの仕事が今すごく求められるのです。

記者 まだ見えないニーズを見える化する、意識のコンサルみたいな感じですね。
村瀬 綺麗にまとめていただいてありがとうございます。
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村瀬和亮さんの活動、連絡についてはこちらまで⬇︎
Facebook:https://www.facebook.com/kazusuke.murase

【編集後記】
インタビュー記事を担当した、赤尾・堀江です。
世の中にないものを具現化する。出会いの中で0から生み出していく村瀬さんの姿にこれからの時代の働き方を感じました。ありがとうございました。

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