もっと可能性が広がる機会を提供したい、株式会社LIG 代表取締役 福井宏昌さん

発達障がいのお子さんの成長を運動を通してサポートしている福井 宏昌さんにお話しをお伺いしました。

プロフィール
出身地:富田林市
活動地域:大阪市平野区
経歴:1979年生まれ関西大学卒業後、柔道整復師・鍼灸師を取得し2010年にのぞみ鍼灸整骨院を設立。その後、株式会社LIGを設立し障害児通所支援事業所として2017年に運動療育のかがやき、2018年に運動療育のきらめき、2020年にサッカーに特化したFC.LIGを設立。
現在の職業および活動:
運動療育に特化した児童発達支援・放課後等デイサービスを平野区で3事業所運営。多種多様な体験から自分の可能性を広げられるように子どもたちの長所を伸ばしながら成長をサポートしています。
座右の銘:好きこそ物の上手なれ

いろんな体験を通して好きなことや得意なことを伸ばし可能性を広げていく

Q.どのような夢やビジョンをお持ちでしょうか?

福井宏昌さん(以下、福井 敬称略):障害者福祉支援事業ということで、発達障がいのお子さんの成長を運動を通してサポートをしています。発達障がいの子どもたちは、こだわりが強かったり、不器用さ、感覚異常、コミュニケーションの難しさなど一人ひとり違った特性を持っていることがあります。見た目ではわかりにくいこともあり、変わり者や劣った人と思われやすいこともありますが、いろんな体験を通して好きなことや得意なことを伸ばし可能性を広げていくというのが夢です。

例えば現在の就労継続支援事業所でのお仕事は、職種が限られていることが多いのですが、一人ひとりの強みや好きなことを活かした仕事を増やし、様々な選択肢から選べるようにしていきたいです。

みんなと同じがいい、それができないとダメみたいになると自己肯定感も低くなり、新しいことに挑戦するのが億劫になってしまうなどの二次障害に発展することもあるので、そういう価値観を変える取り組みもしていきたいと思っています。

記者:小さいころにそういう経験しておくと、今できなくてももっとできることがあるという気持ちになり、選択の仕方が変わるような気がします。

人との関わりを大切に

Q.お子さんの可能性を広げることを具現化するために、どんな目標や計画を立てていますか?

福井:うちの事業所は運動に特化しているのですが、運動は運動能力を高めるだけでなく、チームワークや相手と協力すること、人を思いやるといったことも身につきますから、そういったことを意識して関わっています。運動の中でもサッカーに特化した事業所をやっています。

今、ホースセラピーという馬を活用したサポートを考えています。乗馬をすることでの運動能力向上、馬の世話をすることでのメンタル面の癒し効果がありますし、枠にはめられるのがしんどい子でも、自然の中だと楽しく成長していける子がいるかもしれません。それが農業の就労の可能性などにも発展していけばと思っています。
そして将来はその地域に住んでいる人でしかできないのではなく、全国から希望者があればできるようにして、障がい者の入所施設や農福連携、地域包括支援など、いろんなことをチームでやっていくことによって、そこですべてが賄える1つの村みたいな場所や環境をつくっていきたいです。枠にとらわれないことによって可能性が広がればと思っています。

記者:ホースセラピー、私もやってみたくなりました。

相互理解を深めコミュニケーションを

Q.夢に向かって実践する中での基本指針や活動はどのようなものでしょうか?

福井:「楽しみの中からすべての人が可能性を輝かせる社会づくりに貢献する」という理念を掲げていますが、その理念を実現できるのであれば方法はどんなものでもいいと思っています。なので運動と言いながら、いろんなものに派生しています。自分の可能性は、出会ったものの中でしか気づくことができないので、それに出会える場所をたくさん作っていきたいです。今であれば馬に携わっている方や農業関係の方々に会いに行って様々なお話を聞いています。

あと研修事業を取り入れていきたいと思っています。今はテレワークが主流になったり、会社に対する帰属意識が下がってきたり、コミュニケーションが減っていたりと働き方も大きく変わってきています。そんな中、仕事内容が合う合わないは、もちろんあると思いますが、仕事の中での人間関係で働きづらさを感じながらの我慢が蓄積した結果、辞めてしまう人も多いです。そうなると経営者にとっても大変です。
社員同士が思いやりをもって相互理解を深めるコミュニケーションを取れたらいいと思います。それを障害という切り口からやっていこうと考えています。例えば耳が聞こえない人の疑似体験をしてもらうことで、耳が聞こえない人の気持ちやどんな困りごとがあるのかをよりリアルに感じてもらうことで他者理解が進み、障害者のことを認知してもらうきっかけになればと思っています。仕事の喜びがお金だけでなく、この場で働くことだったり人と一緒に協力することの価値を感じられるようになることで、いろんな人の幸福度が高まり、経営もうまくいき、さらに障害者雇用にもつながっていくような働くことへのサポートができたらと思っています。

記者:立場チェンジはどの職場でも大事ですね。

知る、出会える機会をつくる

Q.ビジョンを想い描いた出会いやきっかけは何でしょうか?

福井:誰かに喜んでもらえる仕事がしたいと思っていたので、鍼灸整骨院で様々な方の治療にあたっていました。やりがいをもってやっていたのですが、保険適応の関係もあり理想の整骨院をやるのが難しい状態になり次の目標を探していた時期がありました。そんな時、幼馴染の子供が発達障がいでその話を聞いていたのですが、発達障がいの方に接する機会が少なかったので実際に接しないと分からないと思いました。そこで知的障がいの方たちが行うスポーツ、スペシャルオリンピックスのユニファイドサッカーという知的障がいのある人(アスリート)と知的障がいのない人(パートナー)が同じチームで競技を行うプログラムに参加しました。そこで大きく価値観が変わりました。最初はお手伝いのつもりで行っていたのですが、アスリートの純粋さや穏やかなところ、まっすぐなところに触れて、逆にたくさんのことを学ばせてもらいました。自分自身が助ける側、助けられる側で分けていたのが、一緒にやることによって垣根が取り払われて悔しさ、楽しさ、喜びを一緒に感じられる相棒のような感じに変わりました。みんなで共有した1つの目標を日ごろから一緒に取り組んで達成したことに心から喜んでくれたことがすごく嬉しかったです。
この経験から差別や偏見は知らないことから起こると感じ、知る、出会える機会をつくろうと思い発達障害者の支援事業を始めました。

サッカーに特化した事業所では、地域のクラブチームと合同で練習会を行うことで共にサッカーを楽しみながら相互理解を深め、障害者・健常者という概念のない社会を子どもの頃から作っていく取り組みを行っています。そういう活動から差別や偏見がなくなっていけば嬉しいです。

みんなで何かを達成するというのが好き

Q. そういった出会いには、どのような背景があったのでしょうか?

福井:私は何でもやってみないと分からないという信念があります。まず動いてみようと思ったのが大きいと思います。何かが合わなければ、その子供が悪いのではなく違う方法を考える。子供たちやいろんな人たちとの関わりの中で、こうあるべきとかではなく違う方法を考える「いろんな手段があっていい」という価値観、思考になっていきました。

あとは、みんなで何かを達成するというのがもともと好きです。私はずっとサッカーをやってきたのですが、一人で黙々と走ることは苦手です。しかし自分が今走らないと誰かがしんどい思いをすると思うと、どんなにしんどい時でも走ることができました。鍼灸整骨院の時も「楽になった」とか「助かった」とか言われると、もっと勉強しようと思えました。喜んでもらうことが喜びという感じです。何かをして喜んでもらえて嫌な気持ちになる人はいないと思うので、それを仕事で実感できる場があれば、そういう人が増えるかもしれないです。そういった場や人をいっぱいつくっていければと思います。

記者:どんな環境で何を経験するかは大事ですね。

読者に向けて一言

福井:時流がこうだからみたいに、常識や当たり前を基準にして物事をやるのではなく、自分がやりたいか、やりたくないかを大切にしたいです。その目的が自分のためというよりは、社会のためとか、誰かのためとかであれば自分は頑張れるので、そういう環境になるように楽しいことをいっぱいつくり出していきたいと思っています。僕に持っていないものを持っている人と、もっと面白いものや違うものを一緒に創り出していけたらすごく嬉しいです。

【編集後記】
インタビューの記者を担当した川名です。
福井さんが醸し出す爽やかな風が吹き抜けたような場でした。
年代が同じということもあり、テーマ以外のお話も楽しくさせていただきました。ますますのご活躍を応援しております。

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