誰かの役にたちながらカカオの良さを広げたい ここます増田恭子さん
子どものころからボランティア活動に興味のあった増田さん。大好きなチョコレートを通して、カカオの魅力と共に誰かのためになる仕事にしたい、と日々奮闘されています。
プロフィール
大学卒業後、CAとして航空会社に就職、各地のチョコレートショップ巡りをする。その後、飲食業界、広告代理店などを経て、NGO職員としてフィリピンに移住。独自にカカオのリサーチを行う。帰国後、2019年に「ここます」をオープン。
Q.今こうなったらいいなと思ってることはありますか?
増田恭子さん(以下、敬称略):元々このお店は、フィリピンの農家の救済というか、カカオを買い叩かれているの知って、もっと適正価格でもっといい環境で良いカカオを作ってもらえるようになったらいいなと思ってはじめました。お店でたくさん利益を生み出して、農家の方たちにフィードバックをして設備や技術をきちんと提供して、より品質の良いカカオを作ってもらうという循環がうまく作れたらと思っています。今のところは生産者と直接、適性な価格で取引をしているという状態です。
Q.そのために何か計画などを立ててますか?
増田:そうですね、計画、というか、日本でフィリピンのカカオはまだ知名度が低いので、それを売ってあげたいと思って始めたお店でもあります。チョコレートを、というよりはカカオ豆の販売をもうちょっと広げて、たくさんの人に知ってもらったり、カカオを買っていただくことによって、スキームが出来てくると思うので原料としての提供を広げたいです。
記者:現地のフィリピンではなく、なぜ日本でお店を開こうとなったんですか?
増田:外国人である私がむこうでビジネスするのはなかなか難しいのと、現地でカカオを自分で作ってチョコレート屋さんを始めてしまうと「同じパイを取り合う」じゃないですけれど、現地の人の競争相手を増やすだけになってしまいます。それよりも日本でフィリピンのカカオ豆を売って欲しいという現地の人たちの声もあって、日本で開くことにしました。
記者:なるほど。なぜフィリピンのカカオなんですか?
増田:はじめにフィリピンに行った動機は「カカオの木が見たい」というものでした。日本人が食べているものは、ほとんど輸入しているものじゃないですか。例えばカカオとかコーヒーはどこから来ているかというと、地球の裏側からわざわざ持ってきて、その間にどれぐらいのエネルギーやお金を使っているかと考えると、環境にも良くないし経済的にも不合理です。あまり知られていないけれどカカオはアジアでも作っているんですね。フードマイレージ(食物の輸送距離)のことを考えると同じアジアのカカオを見に行った方が地球の裏側に行くよりもいいじゃないかというのがありました。それと、フィリピンは英語圏なので自分もコミュニケーションをとりやすいかなと思ってフィリピンにしました。
Q.大事にしていることは何ですか?
増田:食品なので、食の安全ですとか、健康に良いということもありますが、体にいいからって美味しいと思えないものを食べる必要はないと思うんですね。結構「ヘルシー」というところにみんな重きをおきがちですが、美味しくなくても食べればいいかというと、私はそうは思いません。
体はメンタルに繋がることがあるので、美味しくないと思うものを我慢して食べるよりは美味しいものを食べた方が最終的には全体的に良くなると思うので、美味しくて体に良い物というのを提供したいと思います。
記者:大事ですね。増田さんはカカオの魅力がどんな人に届いてほしいですか?
増田:カカオの魅力を知らない人全部に知ってほしい(笑)。貧困農家の救済という目的だけを達成するなら、カカオ豆を輸入して業者に売るだけでいいと思いますが、わざわざ店舗を構えているのは多くの人にカカオの美味しさ、魅力を知ってもらいたいからでもあります。
記者:たかがチョコの材料というだけでなく、色々な効果があるんですよね。
Q.そもそもこのお仕事を始めようと思ったきっかけは何ですか?
増田:元々チョコレートが好きでした。また、子どもの時からボランティア活動にも興味がありました。ちょうど私が子どもの時に、「24時間テレビ」や日本財団で笹川さんがCMしたり、『We Are the world』のプロジェクトとか、利益ある人が苦しんでいる人に分け合う文化ができてきた時期だったかなと思います。自分の人生の中でも、少しくらいそういうことに時間を割く時があってもいのではないかと思っていました。広告代理店で働いていた時にスポーツイベントの担当だったのですが、その中で一番楽しかったのはチャリティ活動でした。フィリピンにカカオを見に行った後、偶然現地スタッフを募集するNGOを見つけ採用していただきました。現地の貧困の問題を目の当たりにし、自分のために頑張れない私でも人のためになら頑張れると思い、できることをしたいと思ったのがお店をはじめたきっかけです。
記者:増田さんの、人のために何かしたいと思う気持ちはどこから来ていると思いますか?
増田:何かしら、それぞれみんな頼られて嬉しかったりとかあると思うんですね。脳の仕組みとして、自分がやってあげることが自分の存在価値になるようなシステムになっているって本で読んだんですけれど、まさに誰かのために働くというのも自分の人生の中でやりたかったのですが、結局自分のためなんですかね(笑)。
記者:でも自分がそんなに役に立てたと思ったら嬉しいですよね。私も小さい時、なぜアフリカの人は食べ物がないんだろう、なぜ私は彼らに比べてこんなに豊かなんだろうと、格差に切ない思いがありました。
増田:ジレンマみたいなものがありますよね。フィリピンで NGO 活動していた時に、そこを立ち上げた方が「お金や食べ物、洋服というのは、すぐなくなってしまうけれど、勉強は一生その人の中に残るものだから、学業のチャンスを与えてあげることが一番本人、その国にとって良いことだ」とおっしゃっていました。その時、貧困で学校に行けないというのが子どもたちにとって一番辛いことなのかなと思ったんですね。
記者:当然受けられるべき権利が受けられない、という感じですね。
増田:そうですね。栄養不足の問題も無視できませんが、平等に学校に行かせてあげたいという思いが強くあります。
後は、カカオがお金にならないからとカカオの木を切り倒して他の換金できる木を植えてしまう人がたくさんいて、カカオが世界的に足りなくなることが懸念されている今、そういった悪循環を取り除いておいしいチョコレートをたくさん食べられるようになったらいいなというのもあります。
記者:子供たちを学校行かせたいと思いとカカオへの愛がさせるんですね。
今日はお話を聞けてとてもよかったです。どうもありがとうございました!インタビューは以上になります。
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ここます
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【編集後記】
インタビューさせていただいた見並です。
お店を2019年にオープンして、2年目から人を増やして外に販売していこうというタイミングでコロナになってしまったと、すごく大変な時期に起業された増田さん。輸入業というコロナ禍では色々大変なことが起こりうる時でも、「できたら一生この仕事をしたい」と笑顔でお話しくださったのが印象的でした。増田さんのお店のカカオのドリンクは心もこもっているためか、とってもおいしかったです!