「持続可能な社会づくりに向けて、2030年日本人のSDGs理解度100%を目指す」村上彩子さん

「無いものは自分でやる」をモットーに、起業家精神の視点を活かした様々なプロジェクトに取り組んでいる村上彩子さんにお話を伺いました。

出身地:北海道小樽市
活動地域:主に北海道
現在の職業及び活動:株式会社メガスクエア代表・SDGs Action主催・株式会社マックスドナ

「メインが1つあるのではなく、全てプロジェクトベースで考えています」

Q現在の活動をお聞かせください

 私は、以前商社で働いていたこともあり、マルチタスクな働き方をしています。大きく分けると2つの会社を経営をしているのですが、メインの事業が1つあるのではなく、全てプロジェクトベースで考え、私の仕事はどちらかといえばプロデューサーです。

 自分が代表をしているメガスクエアでは、翻訳、通訳、海外マーケティングを行なっています。北海道商品を海外にご紹介したり、貿易のコーディネートをします。一昨年はマレーシアに1年間通いクアラルンプールのスーパーで北海道物産展や現地の企業に向けた食品のビジネス展示会を行いました。
 2つ目は、SDGs アカデミーを主宰し、企業や団体で研修やワークショップを企画しSDGsの啓発活動をしております。ご依頼を受けて講演や講座を開催しています。講座では「なぜSDGsが必要なのか?SDGsがあることでどのような可能性が生まれるのか?」など様々な疑問をカードゲームを通して楽しみながら体験できるようになっています。
 3つ目のマックスドナでは長年雑貨店を経営しており、4月に新しく「エシカル・タイム」というフェアトレード商品、エコ雑貨、自然食品を扱うお店をサッポロファクトリーにオープンいたしました。SDGsのコンセプトを意識した商品をセレクトし、お店作りをしています。「エシカル」とは、「倫理的な、道徳上」という意味なのですが、簡単にいえば「人や環境に優しい商品、サステナブル(持続可能)なライフスタイルの提案」をしています。エシカルスイーツのプリンも自社で工場を作り、製造販売をしています。私達の作るプリンの原料は、北海道で放牧している牛の牛乳と、伸び伸び育っている平飼いの有精卵と白砂糖は使わずてんさい糖を使用して無添加で作っています。

持続可能な社会作りの行動を、誰もが当たり前にしている社会になり、”地球のために今これをやらなきゃね”と主体的になっていることです

Q様々なプロジェクトを通して目指している夢をお聞かせください。

 持続可能な社会を作ることです。その為には、2030年日本人のSDGsの理解度が100%になることだと考えています。
 持続可能な目標(SDGs)とは、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された2030年までの国際目標です。

 持続可能な社会作りの行動を、誰もが当たり前にしている社会になり、「地球のために今これをやらなきゃね」と主体的になっていることです。日本の中でも北海道は、SDGs未来都市が北海道・札幌市・ニセコ町・下川町と4つあるので、北海道民が一番意識しないといけないと思っています。なのでまずは、北海道でSDGs認知度UPを目指しています。世界中の農業や漁業では地球温暖化、環境の変化の影響が出ていて、自然の生態系がおかしくなってきています。先日北海道のある町を訪れた時、近年は養殖ホタテの収量が安定せず、養殖業者の方々が廃業に追い込まれている現状があると聞きました。世界の遠い何処かで起きている事ではなく、私達の身近な場所で起きていることも多くあります。その事実を知ってもらいたいです。
 
 自分たちの子供・孫の世代が成長した頃には、このままいくと地球はどうにかなってしまうかもしれません。私は今しか戻す時はないと思っています。ここから先の自分の仕事は、そこに注力しようと決めています。講座でも話をするのですが、1950年私たちの両親の世代の人口は25億人でした。これが2050年の100年後には、4倍の98億人になると言われています。日本は少子化で人口が減っているので世界の問題に気がつきにくいけれど、このままいくと将来は食料を奪い合うことも考えられます。私達は便利さを求めすぎてこの何十年の間に大量生産、大量消費、そして大量廃棄をしてきました。地球の地下資源をすでに未来の分まで使ってしまっているのです。なので今、地球環境を元に戻していく方に全企業が舵をきらないといけないのです。
 
 私には娘が2人います。孫やひ孫世代の為に今地球に何ができるかを考えていて、社会の問題を解決できる社会起業家がどんどん増えていったらいいと思っています。


「今思えば胸が痛い事が多くありました。だからフェアトレードを通して支援をしていきたいと思っています」

Q持続可能ではないことへ問題意識を持たれたきっかけはなんだったのですか?

 10代から20代の頃は大量生産の時代に仕事をしてきたので、持続可能という意識はありませんでした。私は、15歳から27歳まで海外にいました。香港の高校、大学に通い、そこからイギリス、フランスに住み商社に勤め、27歳で日本に帰ってきました。
 
 商社の仕事を通して、商品を製造している工場に行くことがあり、アジアの様々な国の工場の生産現場を見てきました。中国の工場で役員は私達を接待してくれ、とても豪華な食事をしているけれど、物を作っている作業員は数十円の食事をし、工場併設の寮では3段ベッドで寝泊まりをしていました。当時の月給は3万円ぐらいと記憶しています。それでも、「彼らは田舎にいたら働く場所も少なく手取りは1万円位だけれど、都市部の工場で働くと田舎の家族に仕送りもできて幸せなんだ」と工場の社長から説明を聞いて、その当時は「そうなんだ」と疑問にも思いませんでした。フィリピンの工場付近ではスラム街の様な場所もありました。今思えば胸が痛くなるような生産現場でした。だからこそ今はフェアトレード=公平な取引を通して開発途上国の生産者さんを支援していきたいと思っています。
 
  国際的に18歳未満の子供を労働力として使ってはいけないことになっていますが、南米・アフリカ・インド・バングラディシュ等ではまだ子供達は学校に行けずに労働力として働かされている現状があります。児童労働に限らず、強制労働や人身取引などが今でもあります。これからは企業が、労働力を搾取せず奴隷のように扱っていないことを証明しなくてはなりません。そして私達消費者も、生産過程がどの様になっているのかを知り、買うものを選択していく、それが「エシカル消費」です。

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「無いものは自分で作る」

Q.商社の立場から世界の現状に触れ日本に帰国されて、何を思われたのですか?
 私は、経営のモットーにも繋がるのですが、「無いものは自分で作る」と思っています。2012年にMDGsを知った際にも、今こうして振り返れば「世界30カ国を見てきた私が広めなきゃ誰がやるの」と勝手な使命感を持ったのかもしれません。さらに、「北海道にフェアトレード商品やエシカルなお菓子を買える場所が少ない。それであれば自分でやればいい。」と思い、お店を作り、北海道産のエシカルなお菓子を作りました。

記者 「自分で作る」と自然に思われたのですね。小さい時に憧れた人はどんな人だったのですか?

 小さいときから憧れていたのは、自分の意志をはっきり言うかっこいい女性です。ジャンヌダルクやベルサイユのバラが好きでした。ジャンヌダルクの”世の中を正しい方向性へと革命していくこと”、女性なのに革命していく姿をかっこいいと思ったのかなと。また、親の影響でビートルズを聴いていたのでイギリスやフランスの人権宣言などのヨーロッパの歴史が好きでした。
 あと、小学校の頃に黒柳徹子さんが黒人の子供たちを支援している写真を見たのも衝撃的で、今でも記憶に鮮明に残っています。「SDGsの啓発活動をしたい」という素養はこの頃にもあったのだなぁと感じています。

「常に考えて、生み出し、皆でやろう!持続可能なライフスタイルの提案していきたいと考えています。

Q.持続可能な社会を作っていくために具体的にどんなことを意識されていますか?また私たちが何を意識していくと良いのでしょうか?

 SDGsでは2030年の到達目標として17の項目が設定されていて、それを「世の中の人がみんなで変革しいく」ことを目指しています。なので、その目標に対して一人一人ができることをやればいいのです。ペットボトルからマイボトルに変えることなど、小さなことでも意識をすることが大事です。「個人の意識が1人変わったとしても本当に意味があるのか?」と言われることがあるけれど、その人が政治家だったら政治家としてできることがありますし、企業の経営者であれば社員さんにインパクトを与えることができます。もちろん主婦の方だって子供だって、それぞれの立場でできることをやればいいのです。メディアの方にはどんどん世界の課題を発信して欲しいです。
 1人ひとりが世の中を変えるのです。考えた事を行動すればいいのです。常にイノベーションを起こす思考を作る事が大切で、大きいことから小さなことまで、自分には何ができるかを考えることが大事なのです。
 
 私は、”17項目の17番にあるパートナーシップで達成しよう”という目標が好きです。私ができることは場を作ることです。毎月SDGsの講師をしており、参加者が少ないと会場費などによって赤字になることもあります。けれど、やり続けることで沢山の方にお会い出来て、1人でも多くの方に情報を発信することがきるし、コミュニティが広がっていくのです。SGDsがキーワードでみんなが夢を語り合い、協力者が増えて、壮大なプロジェクトが立ち上がっていく可能性をすごく感じています。「常に考えて、生み出し、皆でやろう」
 
 またSDGsに取り組むボランティア目線に比べて、ビジネスとしてつなげる事例がまだ少ないので、私はそれをやりたいと思っています。人と人を繋げることで違ったものが生まれるので、教授・行政・中小企業・一般消費者など様々な目線で見て、皆で対話をし共感し創造しSDGsに取り組んでいけたらと考えています。個人で動くとすごく時間がかかることもあるので、会社で社会貢献ができるきっかけとして、中小企業でのワークショップに力を入れていきたいです。
 さらに、海外の動向を日本に伝えることをMissionだと思っていますし、若い子に、英語だけではなく世界で戦えるグローバルな人材になって欲しいと思っています。色々なプロジェクトに取り組んでいますが、「サステナブルなライフスタイルの提案」をこれからも推進していきたいと考えています。

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*「エシカル・タイム』サッポロファクトリー内 3条館2階
https://sapporofactory.jp/shop/detail.php?id=185

*Facebook 
https://www.facebook.com/EthicalTimeSapporo

*村上彩子さんの活動 
https://www.facebook.com/ayako.murakami.330


【編集後記】
インタビュー記事を担当した、赤尾・堀江です。「無いものは自分で作る」その意志で人生を切り開いてきた村上さんの姿に、リライズニュースのコンセプトでもある時代を創っていくという姿勢とオーバーラップしました。ありがとうございました。

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