組織の力をたばねる。株式会社タバネル代表取締役社長 奥田和広さん
ご自身が経営者、中間管理職の立場になった時に見えた限界をシリコンバレー式組織マネジメント手法OKRで突破した経験から、OKRを活用する組織マネジメントを企業などにコンサルティングしている株式会社タバネルの代表奥田和広さんにお話をお伺いしました。
出身:大阪府
活動地域:大阪を中心に福岡、東京など日本国内
経歴:1975年生まれ。一橋大学商学部卒業。
幼少期より父がアパレル卸業を経営していたため、卒業後は勉強のために上場アパレル企業の株式会社ワールド、銀行系コンサルティングの株式会社UFJ総合研究所を経験後、父の会社に戻り、1からアクセサリー事業を開始。8年で40店舗170人を超える規模にまで成長させるが、東日本大震災後に倒産。その後、百貨店化粧品ブランドのマーケティング責任者、美容サービスの新規事業責任者を経て、組織マネジメントのコンサルティング企業株式会社識学にて、コンサルティングおよび育成、メニュー開発を担当。
シリコンバレー式目標管理手法OKRを用いた組織強化のコンサルティングとソフトウエア販売を行うため、株式会社タバネルを創業。
座右の銘:Done is better than perfect.
著書:「本気でゴールを達成したい人とチームのOKR」(ディスカヴァー21出版)https://www.amazon.co.jp/dp/4799324616/
「方向性が束ねられていくための組織コンサルティング」
Q.株式会社タバネルという名前はインパクトがあるなと思いましたがどんな想いがあってつけられたのですか?
奥田和広さん(以下奥田 敬称略) 組織の力を束ねるですね。
みんなで一緒の方向を向いて行こうよ、という意味でタバネルとつけました。
具体的にいうと、「方向性が束ねられていくためのコンサルティング」
人を束ねるというよりは、目的に向かう力、夢とかVISIONに向かっていく力を束ねていくというようなイメージです。
その為に、役割としてリーダーがいたり、中間管理職がいたりすると思っています。
そのようなことを含めて株式会社タバネルとしました。
あとは、アクセサリー販売会社を経営していた経験から難しい名前をつけても覚えてもらえないという事があったので、まずは社名を覚えてもらうというという意向もあります。
難しい名前をつけて、◯◯コンサルティングとか、◯◯総合研究所とかしても、多分、覚えてもらえないと思いまして、わかりやすい名前を考えついて、「タバネル」としました。この言葉がまさに会社がやりたいことを体現する言葉だと確信して決めました。
Q.どのような夢やVisionをお持ちですか?
奥田:仕事の夢が私の夢です。会社の理念と人生の理念は違うと言われたりもしますが、私は今の時点では一緒です。
もう少し会社が大きくなって、「会社=奥田」じゃなくなったら変わるかもしれないですけど、会社=私なので今は一緒です。
会社が100%一緒なところから、これから5人、10人となっていった時に、私の意志だけでは動かなくなっていくので、みんなの理想も出てくるのだろうし、そうなると自分の理想だけじゃなくなると思います。
では企業理念はなんなの?というと「組織の力をタバネル」です。
事業を通じて、人の可能性、能力、やり方の違いで結果が変わるっていう実感を得ていたので、これを広げていきたいというのがあります。
私は以前、会社を倒産させた経験があるのですが、
もう一回、何か自分でやりたいと思った時に、倒産させる訳にはいかないという想いが強くあります。
倒産というしんどい思いをする会社を減らしたいと思いますし、中間管理職でももっと活き活きと働く人を増やしたいです。そこが増えれば、組織の上も下も、活き活き働けると思うのです。
組織を大きく動かしていくためのマネジメントを、今後の使命(仕事)にしようと思っています。
記者:目標、目的を決めさせているようで、その仕組みを導入しているような。奥田さんのタバネルの会社のイメージが深まりました。
「チーム、組織に関してOKRは関心が高まってきている」
Q 奥田さんの夢を実現していくために具体的にどんなことをされていますか?
奥田:今はOKRですね。チーム、組織に関してOKRは関心が高まってきているなと思います。働き方への関心も高まっているので、OKRが一つの選択肢になっているなという感じがあります。
実際、OKRの導入事例は増えています。同時に自分たちで自己流で導入してうまくいかなかったから、支援してほしいというお声も多く頂いてます。
「経営者から中間管理職へ」
Q.そもそも、その夢やビジョンを持ったきっかけは何だったのですか?
奥田:生まれた年に父親が中小企業を立ち上げまして、それがアパレルの卸です。
長女、長男、私の末っ子で、なぜか子供の頃から、継ぐなら私だろうと思っていました。
兄は学者、姉は歯医者なので、子供の頃からそういった素養を親が見てたのかもしれないですけど。
経歴としては、アパレルの卸で(株)ワールドに新卒で入って、三菱UFJ総研というコンサル会社に入って、その後父の会社に戻りました。
父の会社がアパレル(百貨店)の卸だったのですが、私が戻った頃には全盛期の売上から半分くらいの時期だったんです。
私はそこから新規事業でアクセサリーショップを0から立ち上げて40数店舗まで広げました。
しかし、私の新規事業が急激に伸びすぎて、体制が崩れてきたという事と、元々のアパレルの既存事業はさらに売上が落ちて、実質経営者と同じような立場でやっていたのですが、結局、東日本大震災の時に会社がダメになり倒産となりました。
その後は、化粧品会社へ就職し百貨店ブランドのマーケティングを担当しました。
経営者から中間管理職になったわけですけど、経営者で組織を動かすのが大変だなと思っていた反面、中間管理職は中間管理職で大変な面があるなと思いました。そう思うと、つくづく組織を動かすことって本当に大変だなと。
私は自分で0から170人まで作った経験もあり、中間管理職の経験もあり、同じ立場で悩んでいる人もたくさんいるので、何かそこの支援ができるだろうと考え出して、その後は組織マネジメントのコンサルタント会社に行き、もともと再チャレンジしたい意欲もあったので、2018年に独立し創業しました。
「真面目に一生懸命働いているけど、活き活き、ワクワク働けない中間管理職」
Q.そこに至るまでにはどのような発見や出会いがあったのですか?
奥田:背景は2つあって、私が中間管理職になった時に、周りや取引先の中間管理職の人とつきあう機会が増えた時に、
上から言われた目標に関しては、すごく真面目に取り組まれている優れた方が多くて、かといって活き活きとしているかと言ったら、真面目に一生懸命働いているけど、活き活き、ワクワク働かれていないなと。
何が違うのかな?と思いました。
私は経営者もやって中間管理職もやっていたので、経営者の時は自分で目的を決めて、そこに対してどこを目指して目標設定しようとやっていたのですけど、中間管理職では自分で目的を決めるということができないんだなという事に気づきました。
目的を作るって本当はすごく大事だなことだよなってずっと働きながら思っていて、そういう中で、OKRとたまたま出会って、これはズバリじゃないかなと思ったのが1つ。
もう一つはUFJ総研の時に、バランスカードというものをやっていたんですけど、バランスカードというのは、ある4つの指標を描かれていて、論理的に積み上げようというものです。でも全部が論理では積み上がらないんです。
やっぱり定性的な部分でも積み上げ必要だよねとという事を、その頃から周りにも話していて、それがOKRだなと自分の中で腑に落ちて、これはすごく理想的な仕組みじゃないかと思って、やり始めたんですね。
記者:OKRとの出会いは、まさにやりたいことと合致したものと出会った!という感じだったんですね。
奥田:そうですね。経営者やリーダーはそれはそれで大事なんですけど、やっぱり次のマネージャー陣が動けないと、企業はよくならないなと、自分が中間管理職をやってよくよく思いました。それを助けるためにOKRはすごくいい仕組みだなっていう実感がありますね。
「倒産というしんどい思いをする会社も減らしたい」
Q.その発見や出会いの背景には、何があったのですか?
奥田:人生で初めての大きな挫折というのがあって、それが倒産ですね。
父の会社でしたが実質経営者だった私が会社を倒産させると決めたので、そこはとてつもなくしんどかったというのはあります。その時は人生の生きがいとして会社をやってきて、それを潰さないといけないっていう事と、さらに父親がずっと続けてきてくれた会社を、私が潰すという決断が本当にしんどかったですね。
お世話になったお取引先さんなんかにもお金が支払えないとか、お客様も含めてそうですし、これまでずっとついてきてくれた部下を裏切る形になるのもしんどかったですね。
さらにいうと、倒産処理してある程度落ち着いてから、再就職する活動をしてたんですけど、この間、他人とほとんど話してなくて、当時が35歳くらいだったので、その後の人生の方が長いのに、ここからご飯が食べられるのかどうかもわからない。
人と話さないことと、今後の人生がわからないという事がめちゃくちゃしんどかったですね。
そこが一番大きな挫折ですね。その後、再就職活動とかやっていく中で、もう一回何か自分でやりたいと思った時に、
倒産する訳にはいかないなっていう想いは強いです。
倒産というしんどい思いをする会社も減らしたいと思いますし、それと、中間管理職の人も、もっと活き活きして働く人を増やしたいとか、そこが増えれば、上も下も活き活き働けると思うので、組織マネージメントを今後の仕事にしようと。どれが決定打というのはないんですけど今はそう思っています。
記者:今そういう涙を活かしながら、会社を広げていこうとされているんですね。
「自分と目的地を繋いでくれるもの」
Q:最後に読んでいる方に伝えたいことありましたら教えてください
奥田: 言いたいことは2つあって、1つは組織づくりをされる方に向けてなのですが、
自分で組織をつくるという時に、「自分の思う通りに人が動いてくれると思う」と思うことは間違いなんですね。リーダーだから言うこと聞けっていうのは通用しないというのを1つ心得といて、じゃあ、何で人を動かすの?という時に、目的と魅力だと思います。
それをどうやってみんなでこまめに考えて、チームのことに意識を向けてどれだけ考えていけるようになるかっていうのが大事だと思っています。そこに対しても支援したいです。
もう1つは大きな夢を抱えているけど、何をしていいかわからないという人に向けて。
理想や企業理念は高く掲げていても、目の前の作業をただやってたり、その作業が意味があるのかもわからないという時はどうするのか。
まさにOKRの考え方なんですけど、理念、VISIONは遠くの目的で、OKRでは3ヶ月後の目的なんです。
遠くの目標を持つのはすごくいいことなんですけど、さらにこの3ヶ月でどんなことが達成できていたら、大成功ですか?というオブジェクティブ大成功の目的を持ちましょう。そうじゃないといつまでも何やっているかわからない状態になってしまいますね。
遠くばっかり見ていると動けないので、近くの目的を立てることはおすすめしています。
OKRは目的と自分の現在地と繋いでくれるものなので活用してほしいです。
これからも活き活きと働く人たち、企業を応援して行きたいと思います。
記者:経営者の立場から倒産も経験しその後組織の中核、中間管理職の立場も経験された奥田さんだからこそ語れる、伝えていける確信があるのだと感じました。本日は貴重なお話をありがとうございました。
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株式会社タバネルのWEBサイトはこちら
https://tabanel-japan.com/about/
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編集後記
今回インタビューを担当した喜多島&山口です。
どんな質問に対しても、シンプルにシャープにさらにテンポよく答えてくださり、会話のキャッチボールも心地の良い楽しいインタビューの時間となりました。これまでの奥田さんご自身の経験をすべて活かしきって、挫折を反転させるバイタリティーでご活躍されている姿に感銘を受けました。これからチーム、組織づくり、リーダーシップに関心が高まる中、益々のご活躍が楽しみです。これからも是非応援させていただきたいと思います。
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