来てくださる海外の方の喜びを一番に考えながら、日本の教育・文化・伝統などの素晴らしさを伝えたい 一般社団法人九州通訳・翻訳者・ガイド協会理事 古川純子さん

通訳ガイドや英語の講師をされながら、通訳ガイドの育成にも力を入れていらっしゃる古川純子さんからお話しを伺いました。

古川純子さんプロフィール

出 身 地: 福岡県

活動地域:日本全国

活  動:一般社団法人 九州通訳・翻訳者・ガイド協会 理事

     Planet English & Manner 代表

     全国通訳案内士

     英語非常勤講師

     Talks on the Planet 代表

記者:通訳ガイドとして、また講師としてご活躍されていらっしゃる古川さん。今のご活動について教えていただけますか。

古川純子さん(以下古川): 西日本を中心としたガイドと、大学で英語の非常勤講師をしています。ガイドになって13年で、後輩の指導もしていきたいと思い始めました。また、2018年4月から有志でガイドや語学関係者のために協会を立ち上げました。

通訳ガイドの正式名称は「全国通訳案内士」といいまして、国家資格なんです。私がガイドになったときは、小泉元首相の「ようこそジャパン」という政策によりガイドの試験のハードルが下がり、先輩たちと比べると資格がとりやすい時期でした。2019年から制度が変わり、ライセンスを持っている人は5年に一度研修を受け更新をしないと資格が維持できなくなりました。そしてライセンスがない人でも有償でガイドができるようになったのです。

記者:ガイドの質が変わっていきそうですね。

古川:そうなんです。私が新人の頃、研修で「ガイドはどこから矢が飛んできてもいいようにしておきなさい」と言われました。現場はどれだけシミュレーションをしても思うようにいかないことが起こります。事前にどれだけ準備しても、突発することに柔軟な対応が必要であることを学ばないといけません。そこで危機意識を持って協会の立ち上げに関わりましたし、優秀なガイドを育てたいと思っています。

記者:後輩の育成にも力をいれていらっしゃる古川さんが、ガイドになったきっかけを教えてください。

古川:好きなことを続けていたら仕事になっていたという感じなのですが、もともと英語の勉強が好きで、中学生の頃に好きになった海外のミュージシャンと話してみたい!いう気持ちがあり、短大も英語学部に進学しました。

そこから社会人になり、結婚、出産をし、しばらく英語から離れていたのですが、子どもが生まれた後、「Hall & Oates」のミュージックビデオを観てステキと思い、 家事をしながら英語の曲を聞いたりして楽しんでました。そのうち英字新聞を取ったりNHKのラジオ英会話を学ぶようになって、英会話学校で知り合った方の勉強会に入ったり、英語を話す仲間とも繋がるようになりました。夫の転勤で熊本にいた時も、コンゴ共和国(当時ザイール)から来ていた熊大医学部生が卒業し帰国するときに医療機器が無い母国に、日本の使っていない医療機器を送りたいということを聞き、送料になる資金を集めるためにコンサートを開催しましょうというボランティアの経験をさせていただきました。当時は留学生のお世話もよくしました。異文化交流にも興味がありましたし、日本だけじゃなく他の国の人の役に立てるというのが自分の中で嬉しかったんです。その流れで現在も、英語で話す集まり“Talks on the Planet”を主催しています。そこで留学生や外国の方に異文化を英語で話してもらい、集まった皆でシェアすることを楽しんでいます。現在はコロナ禍で活動休止中ですが。

そんな中で英語を学んでいる仲間たちが英検準1級、1級と取っていき、英検の次に全国通訳案内士の資格を取るようになっていったので、「じゃあ私も」という感じで英検1級を取り、その後全国通訳案内士の資格も取りました。短期留学には何度か行ったことがありますが海外に長期留学をしたわけではなく日本でネイティブの先生について学んでいたので自分の能力を試したいという気持ちもありました。

記者:長期留学なしに英検1級取得もすごいですが、そこからガイドになられるって更にすごいですね。実際ガイドのお仕事をされてどうでしたか?

古川:ガイドになって新人研修を受けた時に添乗業務もしなければならないと知り、びっくりしたんです。もともと昔はガイドと添乗員は分かれた職業でしたが、私がガイドの資格を取るずっと前からガイドが添乗業務をやるようになっていて、それを知らずにガイドになったので何から何までびっくりしました。ガイドの仕事よりも添乗のほうが大変な仕事ですね。

ただ新人研修を経て、ガイドデビューでアメリカからの団体のお客様に熊本城を案内した時に、グループの中の若い男性が「あなたは僕の中で1番のガイドだ。」と言ってくれて、びっくりすると共にとっても嬉しかったんです。お客様の喜んでくれた顔が自分も嬉しくしてくれる。その後も一生懸命にガイドすると、そのグループみなさんでお別れの時に歌をうたってくださったり、そうやってお互いが嬉しくなる事に喜びを感じました。ガイドに添乗の仕事がくっついてくるとは思わなかったのですが(笑)、やってみたら楽しかったので続いているのだと思います。

記者:古川さんがガイドのお仕事に喜びを感じていらっしゃるのを感じます。何を大事にガイドをされていらっしゃいますか?

古川:下見は行けるなら必ずして「ここでこういう事を話そう。」と段取りを考えます。その通りにいかないことはほとんどなんですが。あとは最初に「どんなものを食べましたか?」ですとか「日本のどういうところを観たいですか?」などいろいろ聞いてみて、そこからガイディングのヒントを得たりしますね。そしてお客様の反応をみながら、こちらがごり押しすることもあります(笑)。例えば博多に東長寺というお寺があるのですが、そのお寺を巡った後に隣の「もち吉」というおせんべい屋さんに立ち寄り、抹茶アイスをおすすめします。アイスクリームはほぼ喜ばれますね。「ハーゲンダッツよりおいしい。」という反応もいただいたりします。

そして新人研修をする際にもお話しするのですが、私は海外からのお客様にとって「親戚のおばちゃん」というスタンスでガイドをします。身内ではあるけれど、そんなにべったりじゃない身内。「おばちゃんが連れていくよ」という感じですね。身内だと思うと「ああ、久しぶりだからここに連れていきたい!」とか「待ってたよ~!」と自分の内面から大事に思うでしょ。自分が大事にされていると思うと嬉しいですよね。そのように海外のお客様の喜ぶ顔が一番にありますね。家族や友達を連れてまた来たいと思ってもらったり、日本の良さを伝えてくれたら嬉しいです。

記者:古川さんのガイドで、日本の旅が親しみやすく思い出に残る旅になりそうですね。古川さんにとってはどんなところが海外の方にガイドをされていて楽しいですか?

古川:日本語を英語に言い換えることは面白いです。英語の構成は「だれが」「どうする」「何を」と明確で、日本語のように曖昧さがないから日本語で話すよりはっきり言語化できます。海外の方でも日本人のように曖昧さや遠慮していることを感じ取る方もいらっしゃいますが、基本的にははっきり全部言わないと伝わりませんので、曖昧な日本語をパッと英語にできたら快感ですね。

日本語で当たり前に使っている「お疲れ様」や「よろしくお願いします」という表現など、英語にはない言葉もたくさんあります。

そういう言葉をその時のシチュエーションに合わせて、英語に変えてピタッと合わせていくのが面白いんです。焼き物の説明やお茶の説明など英語では表現しにくいものを、どう興味を持っていただくかを考えるのも面白いですね。 イメージを言語化するという感じですね。

記者:古川さんご自身が英語を話すことを楽しみながら日本文化を伝えていらっしゃるのが伝わってきます。古川さんから見て、どんなところが日本の良さだと思いますか?

古川:日本に普通にあって外国にはない良さが色々ありますよね。例えばお財布をなくした時にそのままの状態で出てくることが多かったり、安全だったり。そしてトイレがきれいに使われるとか、道にゴミが落ちてない状態とか、見てパッとわかる表面的な目で見た良さの裏側も伝えたいですね。海外のお客様から「なんでゴミが落ちてないんですか?」と聞かれた時に、「学校教育で自分の教室を自分たちで掃除してます。それは禅の習慣で、静かなトレーニングは座禅ですが、アクティブなトレーニングはお掃除なんです。」というような話のところまでお伝えします。ガイドのなりたての時はなかなか言えなかったのですが、簡単に伝わるよう反省を重ねてきました。将来はもう少し流暢な英語で簡潔に深く、伝えたいなと思ってます。

記者:なるほど。目で見た良さの裏側を伝えていきたいんですね。

古川:はい。そういったものを英語で説明するのは楽しいしやりがいがあります。日本は独特な国だと思うんです。険しい山と谷と川があるので簡単に遠くに行けない厳しい地形ですよね。その中でお米を毎年繰り返し繰り返し協力して作ってきた歴史や、長い間鎖国をしていたり。現代では前例がないとなかなか前に進めなかったり。だけどやっぱり他の国に比べたらまだ人を信じれるところがあるところなど、ガイドになる前は普通だと思って口に出して言うことはなかったのですが、ガイドになってからは日本に来てくれるお客様にいつも言葉にして説明します。お客様に対して誠実であったり、信頼してもらえるように自然と努力しています。来てくださったお客様の喜びを一番に考えてます。

語学を仕事にしている人たちのために一般社団法人九州通訳・翻訳者・ガイド協会(以下K-iTG)の立ち上げに関わり、理事もしているので、少しK-iTGのことも紹介させてください。コロナ禍で、外国人相手のガイドの仕事は無くなりました。そこでガイド仲間にどのように過ごしているか尋ねると、やはり仕事再開に備えて勉強をしている方が多いですね。

私たちK-iTGも、活発にオンライン・セミナーやオンライン・ツアーを行っています。コロナ以前からオンラインでやってはいたのですが、現在は本格的な機材を揃えて、事務局をスタジオに変えて、映像や音声をテレビ局に負けないくらいのクオリティーにしています。

また、これまで他の地域のガイド団体とはあまり接点が無かったのですが、数団体とフレンドシップ提携をして、お互いの団体が行うセミナーを割引価格で受講できるようにしました。それからガイドが5年ごとに受講しなければならない通訳案内研修を行う登録団体に、観光庁から全国で最初に認定されました。

このようにK-iTGはポストコロナを見据えた活動を行なっていて、精神的にも語学関係の仕事をする方を支えたいと思っています。九州山口各県、東京に支部もありますので、興味のある方はぜひK-iTGHPをチェックしてください。

記者:古川さんも熱いですが、K-iTGさんにも同じように熱い想いを持っていらっしゃる方々がたくさんいらっしゃるんでしょうね!日本の深い良さをお客様にできるだけ正確にお伝えし、日本を楽しんでもらいたい古川さんの想い、そしてそのような想いを持った後輩を育成したい気持ち、K-iTGに対する愛も伝わってくるインタビューでした。古川さん、今日はお忙しいところ、本当にありがとうございました!

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一般社団法人九州通訳・翻訳者・ガイド協会についての詳細情報についてはこちら
https://k-itg.or.jp/

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【編集後記】 
今回インタビューの記者を担当した永野、岩渕、古川です。
昔からお父様のようにひょうひょうとする人が憧れと古川さんがおっしゃっていた通り、さらりと英検1級やガイド試験合格、その後の新人研修のことをお話くださっていましたが、そのご努力は並々ならぬものがあったかとお察しします。その謙虚さと、ガイドや講師というお仕事に対してのプロ意識が本当に素晴らしく、見習いたいと心から思ったインタビューでした。古川さん、本当にありがとうございました。

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