「誰もが同じスタートラインで生きられる」OVER D-RIVE代表取締役社長 清水一秀さん

福岡の映像会社OVER D-LIVE。誰でも環境によらず、スタートラインは同じで生きられるという思いをもっている清水一秀さん。人柄をもって繋がりをつくっている清水さんのお話を伺いました。

プロフィール
出身地   福岡県
活動地域   福岡県
経歴 専門学校映像制作学科卒業
在学中より番組制作に携わり、テレビ業界に。
1992年福岡支社設立に伴い転勤。地元の番組を手掛けていたが、
通販番組制作に魅力を見出し業務を転換。
2010年に独立し現在に至る。
現在の職業および活動   株式会社OVER D-LIVE代表取締役社長

誰でも同じスタートラインで生きられる社会にしたい

Q:どのような夢やビジョンをお持ちですか?

清水  一秀さん(以下、清水)   カンボジアに映像会社をつくりたいです。カンボジアではいまだに地雷が残っていて、その被害にあった人たちは苦しい人生を余儀なくされています。地雷で手や足に損傷を負った人たちでもできる映像の仕事を提供したいです。

   20数年前に仕事でアジアの国を訪れていました。アジアの国々は、貧しい国、軍事政権で危ない国など、良い話を聞きません。けれど実際は、現地の人たちの笑顔は穏やかで、とても心ある交流をしてくれました。彼らの本性が悪かったり、能力が低いわけでは決してありません。政治的、経済的な問題で、貧しい生活や軍に入らざるを得ないだけなのです。私は胸が締めつけられました。その時から、自分に何かできることはないかとずっと考えていました。

   その後、自分が今後の人生をどう生きていくか考えていた時、私はカンボジアを訪ねて、地雷の除去現場を目の当たりにしました。カンボジアでは生計のために地雷除去の仕事に就きます。いつ地雷を踏むかわからない緊張感、恐怖心。爆発音が轟きます。静まった時に、すぐ近くから音楽が流れてきました。人の住む街がすぐ隣にあるのです。そのコントラストが鮮烈に目に焼きつきました。地雷で障害を負った大人は働けません。その代わりに10歳くらいの子どもがその体を使って稼いできます。私は込み上げる怒りに声を失いました。権力者の暴走が今も負のスパイラルとなって、民間人を傷つけているのです。

ここ数年、ネット、スマートフォン、SNSなど、映像の世界は大きく変わってきました。さらに今、ライブコマースやVRが出てきたことで、具体的にカンボジアに仕事を提供できるイメージが出来てきました。人間は生まれた環境によって人生に差があってはなりません。誰でもスタートラインは同じです。負のスパイラルを断ち切って、誰もが可能性を活かせる幸せな社会をつくることに貢献していきたいです。

繋がりがあればどんなことにでも対応できる

Q:「誰もがスタートラインに立てる」夢やビジョンを具現化するために、どのような目標や計画を立てていますか?

清水   映像の世界は変動が激しいです。スマートフォンやVRの開発は劇的な変化をもたらしています。その変化はまだまだ未知数で、常に動向に意識を張っています。

   その一つとして、ライブコマースに取り組んでいます。思いを持っている農家の方たちを取り上げて、農家の実情や農作物への思いなどを発信します。単に安いものが出回るのではなく、本当に価値があるものが世の中に広まるべきですし、それによって持続的な社会がつくれると思います。

   何をするにおいても、どんな繋がりがあるのかが重要だと思っています。繋がりがあれば、技術や価値が変わっても対応できます。私自身、一人では決してここまで来れませんでした。人との出会いによって引っ張ってきていただいたからこそ今の私があります。だからこれからも繋がりをつくり、大事にしていきたいです。

何を残したのかを確認する

Q:その目標や計画に対して、どのような活動指針を持って、どのような基本活動をしていますか?

清水   家に祖父母の名前を書いて置いているのですが、そこに向かって毎晩手を合わせます。その時に、一日を終えて自分の中に残ったものを確認します。特に思い出す人はご縁ある方として意識に留めておきます。

   もう一つ意識していることが、嫌なことは繰り返さないよう止めることです。だから私は自分がされて嫌なことは人にはしません。また、自分の中の妬み嫉みの感情にはしっかり向き合います。嫉みや嫉みの感情があると良い繋がりはつくれません。周りとの相対比較ではなく、自分との比較を意識するようにしています。

   後は妻と話をしてゆっくり過ごします。内容は何でもないことが多いです。何でもない日常を過ごすことが一番好きかもしれません。

イメージしたものは具現化できる

Q:「誰もがスタートラインに立てる」という夢やビジョンを持ったきっかけは何ですか?そこにはどのような発見がありましたか?

清水   夢を持ってやりたいと思っても、それを現実にするには個人差があります。もちろん思い立ったらすぐに行動できる人もいるでしょう。私は頭の中にイメージはできていますが、実行するには少し時間がかかります。ですが常に意識を張っておきます。そうすると必要な情報や出会いが入ってきます。ただその時は一つのでしかありません。けれど点が増えていくと、やがて点と点が繋がっていき、線となって具現化されていきます。

   点を生み、点と点を繋げていくのに大切なことが、人との繋がりです。私は人と直接会えば、その人が人柄がある方かどうか感じます。今取り組んでいるライブコマースに載っている農家の方も、全員私が直接行ってお話をして、ご参加いただくか決めました。完全に私の判断で、責任は私が取ります。けれど人柄がある方は、波長が合うのでわかります。この人と思った人で外れることはまずありません。そうした繋がりをつくっていくことで、イメージしたことは必ず具現化していけます。

何の能力もないことに気づいた

Q:その発見や出会いの背景には、何がありましたか?

清水   私には何の能力もありません。子どもの頃、父が「鶏口となるも牛後となるなかれ」といつも言っていました。「自分の思いで世界を動かせるように」ということです。私は常に鶏口であることを意識しました。けれど私は大学にも行っておらず、特別な能力は何もありません。経営者にもなろうとは思ってもいませんでした。世界は自分の思いで全く動かせず、鶏口となれるものは何もありませんでした。けれど、人間はこんなものではないはずだと奥底から思いが込み上げてきて、そんな自分を振り切ったんです。その時、人柄があったことに気づきました。

    私には人柄しかありませんでした。そして人柄だけあれば、この世界を動かせることがわかりました。私は鶏口を見つけたのです。そして人柄は誰でも持っています。人間はスタートラインが同じであることを知りました。

   自然と私の中からエネルギーが湧いてきて、私は何でも一生懸命やるようになりました。その思いは人に伝わって、深い繋がりが築けるようになりました。人を喜ばすことができる、人の夢を叶えることができる、それがとても嬉しく、さらに一生懸命になりました。やればやるほど、人間は環境や能力に寄らず、誰もが素晴らしい尊厳性を持っていることを確信していきました。けれど、私利私欲や妬み、嫉みによってその素晴らしさを損なっていることがあまりにも多いです。歴史を振り返ってみても、戦争や侵略によって生まれた傷や歪みは、今もまだ多くの人たちを苦しめています。それを見ると言葉にならない怒りが込み上げてきます。どんな人でも同じスタートラインから可能性を発揮できる生き方をするようにしたいです。

   会社を立ち上げて9年目になりますが、振り返ってみると会社を立ち上げたのも自分のためではなく、本社が経営危機になり社員たちの職を守るためでした。危機を共にしたメンバーの団結力は強く、そんな仲間たちと仕事をすることはとても楽しかったです。人柄だけで走ってきた私を支え、引っ張ってきてくれた繋がりがあったからこそここまで来れました。これからも一つひとつの点を大事にしながら、点が線、線が面、面が立体となっていくまだ見ぬストーリーを楽しみながらつくっていきたいです。

記者  ありがとうございました。スタートラインは同じだと、可能性を見ておられるからこそ、点と点を繋げて線にしていくことができるのですね!

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【編集後記】
今回、インタビューをした小水と曽田、丸山です。
人間の深い尊厳性に確信を持っておられるからこそ、清水さんは尊厳が破壊されていることに深い涙と怒り持っておられるのだと思いました。自分がこの現実を統制できるという人間の本来の力を知り、日々自らの感情に向き合い、何を繰り返すのか心を律している清水さんの生き様に感銘を受けました。
これからも清水さんの益々のご活躍を応援しています!

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