逆境から生まれた商品を通し、新しいお花の価値を知ってもらいたい”悠木農花 代表 鈴木義啓さん
お花を愛し、お花の新しい価値や魅力を追究されている、”鈴木 義啓さん”にお話をお伺いしました。
鈴木 義啓さんのプロフィール
出身地:東京都小平市
活動地域:長野県佐久市
経歴:2004年、Suki Flower Farmを開設。創業当初より自然と共生した「本当にやさしい花」にこだわり、土の力を最大限に活かした花づくりに没頭。その後、農薬や肥料に頼らない自然栽培の花作りに至る。
現在の職業および活動:悠木農花 代表、Suki Flower Farm 代表
座右の銘:「次、いってみよ~う!」
「お花そのものにもっと魅力や価値があると信じています」
Q1、鈴木さんは、どのような夢やビジョンをお持ちですか?
鈴木 義啓さん(以下、鈴木 敬称略)
ぼくは今、切り花と食べることができる生花、そしてお花の加工食材という3分野の商品を生産、販売しています。
ずっと花業界で生きてきたのですが、その中で、お花そのものにもっと魅力や価値があると信じるようになりました。
「お花を使って、お花にしかできないものを作っていきたい」そう思うようになったんです。
それを実現するためには、切り花だけでは難しかったんです。また、食用花を生花で出すというのも花の魅力の一面ではあるけど、そこで終わってしまう。
その中で花を加工してみることにしました。
加工してみたときに自分たちがいろんな付加価値をつけたり、今までなかったものを作り出せると気付いたんです。
そこで生まれたのが、食用花をオイルに漬けてドレッシングにしたフラワー・ドレッシングです。
これだったら、見て楽しむだけでなく、味わうこともできるという新しいお花の価値を伝えることができます。
いまは、この商品を多くの人達に知ってもらうことが、ぼくのビジョンになっています。
「少しでも、お花屋さんに足を運んでくれる人を増やしたい」
Q2、それを具現化するために、どんな目標や計画を立てていますか?
鈴木:目標は、47都道府県、各県のお花屋さん一店舗にフラワー・ドレッシングを置いていただくことです。
また、この商品がきっかけになり、少しでもお花屋さんに足を運ぶ人が増えたらと思っています。
そのために、ぼくら自身が表に立っていろんなイベントに出て、この商品を紹介し、もっとメジャーな商品にしていく努力をすること。
いつでも増量、増産できるしくみと環境を整えることなど、一つひとつ実行しています。
「お花屋さんのリスクにならないように」
Q3、その目標や計画に対して、現在どのような活動指針を持って、どのような活動をしていますか?
鈴木:お花屋さんがリスクを抱えないように、委託販売で置かせていただけないかとお声がけさせてもらっています。
そのような形にすることで、少しずつですが置いてくださるお店が増えていっています。
最終的には、一年中、どこへ行ってもあるという状態にしていきたいです。
「事業が軌道にのり始めたときに雪害でドン底に」
Q4、そもそもその夢やビジョンを持ったきっかけは何ですか?そこには、どのような発見や出会いがあったのですか?
鈴木:今のビジョンを持ったきっかけは、2014年2月14日の雪害です。
大雪の影響で3分の2の施設が破壊されてしまったんです。その時点で花農家としての寿命は終わったと思ってるんですよ。
もう大ダメージで、その年の売上が前年の3分の1ですから。
本当にやっていられない状態でした。ただその中で、生き残った花があったんです。カレンジュラという花です。
(この記事最初の写真、鈴木さんと一緒に写っている花です)
せっかく咲いたのに捨てるのがもったいないじゃないですか。その花を活かす方法がないか必死で考えました。
食用花ということもあったので、ドレッシングの試作を初めました。そして、数年かけて今の状態まですることができたんです。
正直、半分は意地もありましたね。このままだと何で自分は長野に来て、花の百姓になったのか。
いくら自然の猛威だとはいえ、そこで花を全部捨てて諦めてしまうのも、今まで積み上げてきたものが無駄になってしまうと思ったので。
記者:雪害で生き残った花を、ドレッシングにしてみようと思われたのはなぜですか?
鈴木:生き残った花をどうしたら一番活用できるかと考えたときに、まずは保存がきくことを考えました。
それで油に漬けることにしました。
ほとんどの花は水溶性で色味が水に溶けるんです。例えば、青い花のヤグルマ・ギクとかすごく綺麗なんですよ。
でも、日が経つにつれて水溶性なので色が抜けて、青い色が白っぽい花になって、周りの色素がどす黒くなって、とても商品にならないんです。
生き残ったカレンジュラという花は、色が抜けなかったんです。油に漬けたら本当にキレイだし、調べたら栄養価が高い花だったんですよ。
これしかないとヒラメキました。これが発見ですね。
そんなとき偶然、いま一緒に活動しているメンバーの一人が、「これ、けっこう美味しんだよね~」と、たまたまカレンジュラを使ったドレッシングのレシピを持ってきたんです。
そして食べたら美味しかったものだから「じゃあ、これでいこうか」という話になりました。これが出会いですかね。
結果的に雪害がなかったらできなかった商品がフラワー・ドレッシングなんです。
「小さくても良いから、花業界に貢献したい」
Q5、夢やビジョンを具現化していく時に一番嬉しかった時は、どんなときでしたか?
鈴木:自分がやっていることを認めてもらったときですね。
「売れたよ~」とお花屋さんが連絡をくれるときがあるんです。
ぼくは小さくても花業界に貢献したいという思いをもっているので、そのような反応を頂けたら嬉しいですね。
やってきたことが間違ってなかったと思います。マイナスから作り上げた商品なので、なおさらそう思うんでしょうね。
「私(I)の商品から、私たち(We)の商品へ」
Q6、フラワー・ドレッシングを鈴木さんの農園ではなく、悠木農花という組合で販売されているのはなぜですか?
鈴木:ぼくの農園の屋号で売ったら、ぼくの商品になっちゃうじゃないですか。
だけど、悠木農花だと「私たちの商品、みんなの商品」なんですよ。
私の~、「I」ではなく、私たちの~、「We」にしていきたいんです。「I」ですと、自己完結で終わってしまう。
自分の商品のために周りを動かすかたちになってしまうんです。会社で言うと自分が社長でメンバーが部下という関係よりかは、みんなが先頭という方がいい。
だから、悠木農花有限責任事業組合(LLP)を設立して、この名前で売るようにしているんです。
そうしたらみんながやる気になってくれるし、売り先も多彩になるし。みんなでつくろうという考えは、面白いものができるんですよ。
決して、自分が雇うというかたちにはしたくなかった。社長が部下に対して命令するという指揮系統ではなくて、みんながそれなりの役割を担って、平等に利益を分けていく仕組みにしているんです。
いずれ、悠木農花に入りたいという人が増えてくると面白いですね。
鈴木 義啓さんの活動、連絡については、こちらから
↓↓
・Facebookページ
https://www.facebook.com/yuukinouka/
・ホームページ
・note
https://note.com/sukiflowerfarm
【編集後記】
インタビューの記者を担当した小山です。
突然、大雪によって大切な設備やお花をほとんど失ってしまうという逆境を乗り越えて、そこから新しいものを生み出すという意志の強さには脱帽しました。
それもお花への思いがあったからなんだと思います。
私は、鈴木さんの撮ったお花の写真が好きなんです。本当に綺麗に撮れていて、お花への愛情が伝わってくるんですよ。
お花のドレッシングも美味しかったです。
お花の農園の見学も受け付けているそうです。これからのご繁栄を心から楽しみにしています。