誰もがしなやかに働き、変化できる社会を創りたい 株式会社ルバート 代表取締役 谷平優美さん

学校や大企業では男女の差を感じることはなかったなか、子育てを通して日本の中にはまだまだ男女の役割意識の強さやインフラの遅れがあることを実感。そんな違和感が自分の子どもが大人になる時には感じないような社会を創るため、発信し続けている谷平さんにお話を伺いました。

プロフィール
早稲田大学卒業後、総合人材サービス会社で新規事業立上げ・執行役員を経て、 株式会社リクルートエージェント(現リクルートキャリア)入社。
WEB企画・マーケティング、法人営業を経て退職。出産前後には専業主婦やフリーランスも経験。サロン講師、就職講座講師やキャリアカウンセリングをしながら、無理ない子育て中の働き方を模索するも待機児童となり認証保育園を利用しながら活動。2012年にママハピを創業。ママ向けイベント・マーケティング、おしごとフェア、女性活躍支援などを運営。
2018年、株式会社ルバートに社名変更、時短ママたちによるジョブシェア体制で事業運営。
2児の母。

子育てをしながら働く事に、日本はベースとしてインフラがない

記者 どうぞ宜しくお願い致します。
谷平優美さん(以下、谷平) どうぞ宜しくお願い致します。

記者 今お持ちの夢や目標を、お聞かせ頂けますでしょうか。

谷平 私がこの会社を立ち上げた理由は、自分自身が子育てをする中で感じた違和感を発信したいと思ったことがきっかけでした。待機児童を2年以上経験し、少しずつスライドして無理なく働こうと思っても、そこで得た収入は全部保育園代に飛んでしまうくらい、お金がかかる。そもそも入れない上に、認証保育園に入れても凄くお金が掛かってしまう。家事育児の女性負担が高く、子育て中、孤独感を感じたり、ノイローゼ気味になることもありました。そんな社会を何とかしたいと思いました。子育てをしながら働く事に、日本はベースとしてインフラがないと感じて、何か発信できることはないかと思いました。
 私自身は男だから、女だからといった会話がなく、仕事や収入においても差がない総合職として働いていました。人材業界におりましたので、管理職の半分が女性であっても当たり前だったんですね。ところが日本では、まだまだ女性が家事・育児をするべきである、という文化が時代に合わずに根付いているのもあり、色んな課題も絡んで、女性がしなやかに変化し続けるというのが遅れている、と感じる事がありました。なので、そういったことが話題にもならないような社会を、娘が大人になる前に創っていきたいと思っています。
 また主婦の小遣い100万円から始めた会社でしたので、本当に小さな牛歩でしか中々進む事が出来ないのですが、組織は小さくても影響力を持てるよう、色んな方と協力しながら発信力を大きくしていき、少しでも社会に貢献していく、というのが私の目標です。

記者 目標に向けて、どんな計画をお持ちですか?

谷平 今年5月からやっと7期目に入るのですが、今は全員が子育て中の時短社員なんです。時間制約のある人が働き方×働きがいのバランスが良く、会社とも win-win の関係でいられる仕組みをつくりたいですね。そのうち子どもが小学校高学年や中学生になる時に、稼働時間を増やしたい、というニーズも出てくると思います。そういった時に、受け皿になってあげられる状態を作りたい。
 例えば今は扶養内を希望する人が多いため、稼働時間70~80時間が最大という人が殆どですけれども、100時間、120時間にしていきたいと希望する人がどんどん出てきた時に、それに答えてあげられるようにしたい。でもその為には売上利益をあげていかなければいけない。ですので、ママや女性を支援しながら、社員の希望を叶える事業との両立をしていきたいと思っています。
 ただ、まだまだ基盤が弱いので、会社として強くなっていくという事が手段として大事かなと思っています。

会社も働く人も嬉しい仕組みを作れるかが経営者の手腕

記者 仕組みを作るのは、中々簡単ではないと思うのですが。

谷平 失敗の連続です(笑)。最初はそれまでの価値観から、フルタイムで働ける優秀な方を採用したくて、お給料をいっぱい出すので来てください、残りはアウトソースにして在宅の業務委託に任せる体制がいいだろうと思っていました。でもその結果、負荷の高い中心人材で疲弊する人が続出。寄り添って面談したり、助けたつもりでしたが、みんな疲弊、諦めてしまうのは、私の今までの論理を押し付けすぎていた、という事に気づいたんです。ただ、時短社員だけで事業が回るはずはないと思っていたので、2、3期目から時短社員によるタスク分散型にする話は出ていましたが、非常に怖くて、踏み出せませんでした。
 でも私が第2子出産の時に、社内でNo.2の方が独立することになり、何かを変えなければ会社が潰れてしまう!と思ったんですね。それでやっと一歩踏み出したのが5期目なんです。5期目にようやくジョブシェア体制に変え、同時に様々な変革を始め、結果的にその体制で事業が上手くいくようになりました。
 結果的に決断に3年位かかりましたが、それらを通して会社も働く人も嬉しい仕組みを作れるかが経営者の手腕として大事なんだな、という事を痛感しました。また中小企業でも優秀な女性を活用できる、そして時短社員集団にもきちんとやりがいを提供し、売上利益が上げられるんだという証明ができた事は、一つ成果だと思っています。

見切ってしまうと私のやりたい事が出来ないので、諦めずにチャレンジし続けた

記者 決断に3年かかったと仰っていましたが、社員の方への信頼や愛情、そういうのが積み重なっていった3年だったようにお聞きして感じました。

谷平 経営者って誰しも働く人が幸せになる仕組みを作りたいと思って起業するんですけれども、殆どの人が上手くいかないんですよね。私自身もママを活用した仕組みを作りたいと思って起業しましたが、いくら愛情をもって育てても辞めてしまうというところに、凄く葛藤があったんです。思いがあって起業したのに、仲間が幸せにならない仕組みでは自分も苦しくて。当時は私にも今の10倍以上の業務がありましたし。でもそこでママは使えないって見切ってしまうと私のやりたい事が出来なかったので、諦めずにチャレンジし続けました。私達と同じような会社は殆どないので、ロールモデルがありません。色々試してみるしかなかったので、諦めずに挑戦してここまで来れたっていうのは、ひとつ良かったかなと、思います。勿論、企業は生き物なので、今後はどうなるか分からないですけれども。一つ社会に提案できる成果かな、とは思っています。

自分で何とかしよう文化を廃止する

記者 一番苦しかった事はどんなことだったのでしょうか?

谷平 変革にあたり色々行った事があるんです。例えばタスクを全部エクセルで一覧化し、細分化して、運営マニュアルを作りました。私の頭の中にあったものを全部可視化し、細かい業務もそれを見れば今後入ってくる人が分かりやすいように整備した、というのがあります。他にも、その人しか持っていない資料を全部無くして、サーバーで全てやりとりする、顧客とも共通アドレスでやりとりする、社内チャットで細かい情報も共有する等、全て透明化する形に変えました。
 そういった変革の中で一番伝えてきたのは、「自分で何とかしよう文化を廃止する」という事です。自分が次の出勤日でやればいいとか、何とか気合で残業すればいいとか、そういうのは絶対止めて欲しい、と。「自分で何とかしようとする文化を止めて、チーム協働を」と伝えてきました。「あなたが出来ない時は、チームや私に振ってください。次の出勤日ではなく、明日出勤する人に引き継いで。本筋でないことに時間をかけすぎないで。」と。それが結果的にはお客様にはスピード納品になり、お客様満足度になる。責任感が皆あるから、自分でやった方がいいと抱えがちだったり、過剰品質で細かいことに時間をかけすぎたりしてしまいます。そういう仕組みや文化を変えていく事に、少しパワーを割いてきた、とは思います。
 後は、パートだから、アルバイトだから、という雇用形態の壁を持たせたくないので、敢えて「時短社員」、「ジョブシェア社員」という呼称で呼んでいます。既存のパートやアルバイトのイメージですと、社員との意識の格差が生まれてしまう。その意識は他の社員にも影響してしまうので、時間が短くてもやりがいのある仕事をしっかりやりたい方の採用と、その意識付けを繰り返し行っています。
 そういう意識付けの一つとして、弊社では社員みんなに半年に1度目標設定をして貰い、査定ミーティングを行っています。それに加えて、月一全員が社長ミーティングをし、振り返りも提出して頂いています。そこで意識を摺合せていく事が凄く大事なんですよね。社員としては、私はここまで出来ているだろうと思う事と、会社が期待している事との評価がずれていくと社員の中では不満が蓄積されていくので、経営者の観点から、「あなたのここは強いけど、ここは伸ばしていこう。」など、話をする事で、その人の成長が大きくなるのです。私自身、昔大企業で放任されて苦しかった経験があるので、適切な支援や成長フォローはしてあげたい、という思いがあるんですね。女性自身がビジネス力と自信をつけて発言していく事の重要性を凄く感じているので、気になることがあったら指摘したり、結構マメにフォローを入れてはいます。

記者 ママや女性の意識をひとつずつ変えて行動していく事が、女性がビジネス力をつけ、社会へ発信できる強さに繋がっていくのですね。本日は貴重なお話、ありがとうございました。
谷平 ありがとうございました。

谷平さんに関する情報はこちら
↓↓↓

◇株式会社ルバート HP◇

https://www.rubato.co.jp/

◇ママハピ HP◇

https://www.mamahapi.jp/

【編集後記】
今回インタビューの記者を担当した、住吉と福井です。
子供が大きくなった頃には、自分が感じた違和感が感じられない社会を創りたい、そう言い切られていた谷平さんの意思の強さと、未来へのワクワク感が伝わり、心からそんな未来を創りたいと感じさせて頂いたインタビューでした。谷平さんのご活躍、心から応援しております!


この記事はリライズ・ニュースマガジン”美しい時代を創る人達”にも掲載されています。

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