ダンスを通じて誰もが自己表現できる社会を創る 一般社団法人 パラカダンス 代表理事 ”野中香織さん”
コミュニティダンスを通して誰もが自己表現できる社会創りをされている、野中香織(そら)さんにお話しを伺いました。
野中香織さんプロフィール
出身地:福岡県
活動地域:福岡県
経歴:福岡の劇団「あんみつ姫」でショーダンサーとして10年間活動。2013年よりコミュニティダンスの手法を生かして、ダンスを知らないすべての人にダンスの力と可能性を伝えつづけている。2018年9月、ダンスと社会をつなぐため、一般社団法人「パラカダンス」を設立。
現在の職業及び活動:一般社団法人 パラカダンス代表理事
座右の銘:「なるようになる」
誰もが自己表現できる社会を創る
記者:野中さんはどのような夢やビジョンをお持ちですか?
野中香織(以下、そら):コミュニティダンス(※1)を通して、誰もが自分を表現できる社会を創りたいです。
コミュニティダンスでは、どんなに小さな動き、例えば歩くことだったり、重度の障害のある人が目を動かすだけでもダンスになります。人それぞれが持つ”唯一無二”を表現することができるのです。
今はまだ、”ダンス”というだけで一般の方から距離を取られてしまいます。ダンサーとダンサー以外との境界線を無くしていきたいです。
ダンスを通して人と関わることによって、個人個人の違いを認識した上で「じゃあ、どうしようか?」という考えが生まれます。何か弊害があった場合、言葉で解決するよりも、ダンスで解決する方が分かり合いやすいことがあるのです。
記者:今まで持っていた、エンターテインメントとしてのダンスのイメージが崩されます。体を通した自己表現であり、コミュニケーションでもあるわけですね。
(※1)コミュニティダンスとは、教育や健康、福祉、地域活性化などにダンスの力を活用しようという取り組み。ジャンルを問わずに多様なダンスを取り入れている。
まず存在を知ってもらう
記者:「コミュニティダンスを通して人々が自分を表現できる社会を作る。」という夢を具現化するために、どんな目標や計画を立てていますか?
そら:障害がある人にもない人にも、まず私たちのようなダンサーがいることを知ってもらう1年にしたいです。
ダンスというのはモノを売るわけではないので、どこにお金が支払われるのか不明瞭だと見られがちです。ダンサーに適切な対価が支払われるようにするためにも、企業に協賛してもらう動きをしています。対価があって経済活動が回ることによって活動を継続することができますし、継続することにこそ意味があります。
記者:経済活動化することによって継続性が生まれるわけですね。
イベントやワークショップの企画・運営
記者:「障害がある人にもない人にも、コミュニティダンスのダンサーがいることを知ってもらう。」という目標に対して、現在どのような活動をしていますか?
そら:ダンスに関わるイベントやワークショップを企画・運営を行っています。
2018年11月には、山の中という自然の力を生かしてダンスをするワークショップを開催しました。
参加者の感想を聞くと、明らかにイベントの前後で変化があります。ダンスをすることを通して、発言量も格段に上がります。「ここでは発言してもいいんだ!表現していいんだ!」という安心感や仲間意識を持ってもらうことができるのです。
ダンスには”正解”がありません。自分たちが創るダンスですから、振付けを覚える必要もありません。たとえ本番で間違えたとしても、それはそれであり、否定しません。まず肯定した上で「じゃあ、それをよくする上でこうしたらどうだろう?」という提案をします。
記者:一緒にダンスをすることで、安心感や仲間意識を得ることができるわけですね。
舞踏との出会い
記者:そもそも、「コミュニティダンスを通して、人たちが自分を表現できる社会を作る。」という夢を持ったきっかけは何ですか?そこには、どのような発見があったのですか?
そら:舞踏をされている方との出会いが一番大きなきっかけです。
私は20代までショーダンスの世界にいて、30歳で辞めると決めて上京しました。東京の出演する舞台で紹介してもらった福岡出身の女性ダンサーが”日本のコンテンポラリーダンス”と呼ばれる舞踏をしていました。コンテンポラリーダンスはコミュニティダンスの中に取り入れることが多いです。
彼女が踊っている様子を初めて見た時、「これなら一生踊れる!」と思ったのです。ショーダンスの世界にはどうしても肉体的な限界があり、年齢を重ねるほど足が上がらなくなるなど、一生続けることが難しいです。
舞踏の魅力は自分の中に入っていくことで、他人の目を気にしなくなることです。自分自身との対話に適していて、深層心理を知ることができます。
人間は他人から見られているイメージに自らを寄せようとします。例えば「母である。」「女である。」などです。この”母”や”女性”という役割を取り払うことが大事です。
記者:舞踏を通して、役割という服を脱ぐことができたわけですね。
本当の自分を知りたい
記者:「コミュニティダンスによって、役割を取り払うことができる。」という気づきの背景には、何があったのですか?
そら:本当の自分を知りたいということです。まずは自分を知らなければ相手と関わることもできません。
ダンスによって、私自身が満たされた経験があります。「私が満たされたのであれば、他の人も必ず満たされるはず!」という確信を伝えていきたいです。
言葉だけでは伝わらないこともあるからこそ、体を通じてコミュニケーションを取ることで人と人とがわかり合っていくことができます。
”こうあるべき自分”と”本当の自分”という、二面性を受け入れることが自分を受け入れるということです。
記者:「本当の自分を知りたい!」という自己を認識できたからこそ、舞踏との出会いが変化の大きなキッカケでもあったのですね。舞踏によって本当の自分と出会える確信を得たことで、コミュニティダンスで誰もが自己表現できる社会を創るという、今の夢にも繋がっていることが伺えました。
そらさん、今日は本当にありがとうございました。
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そらさんについての詳細情報についてはこちら
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Webサイト:「障害のある人たちとの舞台芸術を考える座談会」開催 – 九州障害者アートサポートセンター
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編集後記
今回インタビューの記者を担当した吉田&北川&重松です。
他者から見える自分と、自分が思う自分との差を取ることによって、本当の自分に気づかれたそらさんでした。
今後の更なるご活躍を期待しています!