離婚しても『ふたり親』離れてもずっと親子。 一般社団法人「りむすび」 代表 しばはし聡子さん
別居後・離婚後の子育てで、元配偶者との関わり方でお悩みの方へ向けて、離婚後の子育て 共同養育サポートをしている しばはし聡子さん。実はその背景には、ご自身もかつては元配偶者との関わりに抵抗があったそうです。そんな しばはしさんにお話を伺いました。
しばはし聡子さんプロフィール
出身地: 東京
活動地域: 全国
経歴: 慶應義塾大学法学部法律学科卒
職歴:エネルギー業界にて秘書・広報を20年
座右の銘: 『争うよりも歩み寄りを』
離婚をしても二人親
記者:今、しばはしさんはどのような夢を描いていますか?
しばはし聡子さん(以下しばはし 敬称省略):離婚しても両親が子育てに関わる「共同養育」が当たり前の社会にしていくことですね。離婚後、離れて暮らす親に会えている子供は3割しかいないんです。
また、離婚すると、「ひとり親」と言われがちですが、子どもにとっては親は変わらずふたりなので、「ひとり親家庭支援」という言葉がなくなっていくといいなと思っています。
記者:「言われればそうだな。」と思うけど、「ひとり親」と言う言葉を使うのが当たり前すぎますよね…
しばはし:離婚後、ひとりで育てるための経済支援や就労支援があるのは、シングルマザーが弱者で貧困だと思われている前提ですよね。
いろんな離婚経験者とお話をしていると、共同養育を実践している方は自立して輝いている方が多いと私は思っています。
共同養育するとワンオペ育児から解放されるので、社会進出もしていたり、とても自由になれている方が多いかなと。
子どもとか関わる大人がたくさんいることは、子どもにとってももちろん大事なことですが、お母さんにとっても経済的、物理的、精神的にもメリットが多いと思いますね。
それだけではなく、共同養育していることはリスクヘッジにもなると思うんですよね。
ある日、突然自分が病気になってしまうとか、交通事故にあった時に、愛する子供を路頭に迷わせないためにも。
やはり命に代えてでも助けようとするのって父親だとしたら、そこの関係はきちんと繋げておかないと、と思います。
たとえば、年頃の女の子が、突然母親が亡くなってしまって、スムーズにお父さんと暮らすことが出来なくなってしまったら不幸ですよね。
いざという時のためにも、離婚しても親子関係を作っておくことは大事です。
記者:まさに『二人親』ですね!
しばはし:そうですね。離婚をしても親はふたりです。
再婚しても親は増えていくというイメージで、子どもにとっては別に再婚相手は父親ではなく、お母さんのパートナーなので無理やり父親になる必要はありません。
子どもが「お父さん」と呼びたければ呼べばいいですけれども、そこは別に自由な関係でいいのかなって思います。
トータルサポートできる人材を育成
記者:しばはしさんはどのような未来計画をお持ちですか?
しばはし:今後やっていきたい取り組みは大きくふたつあります。
ひとつめは、共同養育の普及です。省庁や行政、議員に向けて陳情活動は従来から行ってきましたが、これからはこれから結婚や子育てをするであろう次世代層に向けて講演会などを行い普及していきたいですね。
ふたつめは、人材育成です。相談業務から面会交流の現場サポートを今まで私ひとりで行っていたのですが、救える家族の数が限られますので、私のスキルを継承し実践できる人材を増やし始めているところです。
りむすびの活動は、各家庭に合わせてカスタマイズしながらきめ細かいサポートを行うため、決して簡単ではありません。
どれだけホスピタリティをもって相手の気持ちを理解しながら共同養育実践に向けてサポートするかに重きを置きながら育成を行っています。
一家庭一家庭を大切に
記者:きっと、たくさんのトライ&エラーがあってどんどん進化してくのですね。
しばはし:はい。ご依頼者に合わせたサポートを行っていくので、ご要望に応じてメニュー以外のことも取り入れることもしばしば。ご両親とりむすび三者の信頼あっての取り組みです。
そして、親同士の関係が再構築できるために、物理的な仲介支援ではなく両親の心の架け橋になることを常にイメージしていますね。
心と心
記者:本当に手厚く、しばはしさんの想いがこもっていますね。
しばはし:こちらも全身全霊でサポートしたいと思っていると信頼ができていくので、仮になにか行き違いがあったとしても、「次は、じゃあこうしよう。」と一緒に作り上げていく感じができるんですよね。
決して杓子定規にできることではなく、AIが踏み入れることができない心への配慮を徹底してやることを「りむすび」は理念として、ミッションとしてやっています。
私の気持ちと、子どもの気持ちと、元夫の気持ち
記者:しばはしさんの活動のきっかけは何ですか?
しばはし:私自身、4年前に調停離婚をした子連れ離婚経験者で、現在、中学生の息子と一緒に住んでいます。
当時は、離婚した後に子どもの面会交流のことで元夫と関わることを全く思い描いていなかったんですね。
そんな矢先に、「いつ子どもに会えるんだ?」と連絡が元夫から来てすごく嫌でした。
子どもの気持ちは後回しにして、メールを捨ててしまうことも多くあったんです。
その頃は「子どもは私と同じ気持ち」だと思っていたんですよね。
元夫が子どもを迎えに来ると、私はわざわざ嫌そうな態度をして見送ったりもしていました。
そんな中で、『面会交流をきちんと前向きにやろう』という気持ちの変化がありまして、初めて自主的に元夫へメールを送ることができました。
元夫からの連絡が「すごく嫌」だったけど、こちらからメールしてみたら、まさかの「ありがとう」の返信が来て驚きました。
新しい関係性の始まり
記者:どのようなキッカケで『面会交流をきちんと前向きにやろう』という気持ちに変化したのですか?
しばはし:離婚後、面会交流支援のボランティアを行う機会があったんです。その際こんなことがありました。
子どもは、お母さんが言っていることとは裏腹にお父さんのことを全然嫌がっていなくて、お父さんと会った瞬間にとても喜んで仲良くしていたんです。
その時に、私の頭に残った残像が「能面のような母親の顔」でした。
そして、自分自身も、元夫と子どもの間を邪魔していたことに気付かされました。
私もそうだったので、お母さん側の嫌な気持ももちろんわかります。
けれど、乗り越えた方が、自分も子どもも元夫もいい形で関われることを体験をしたので、この経験から、離婚後の子育てや相手との関わり方に悩む方を救いたいと思い、「りむすび」を始めようと思いました。
自分にしかできないことに人生を!
記者:他の家族を通して、客観的に自分をみることで気持ちの変化が起きたのですね。
では、「りむすび」を始める背景には、どのような決意決断があったのですか?
しばはし:20年間勤めていた会社では副業がNGだったので、りむすびの活動を隠しながら続けていたことに違和感を感じていました。
大切なことをしているのに広めることができないジレンマです。
「自分にしかできないことに人生を!折角辛い思いをした離婚を無駄にしたくない。」という思いから、独立する事を決意しました。
「必要なものを堂々と広めていこう!」という熱意に自分自身がコミットして会社辞めました。
記者:すごい決断ですね!
夫婦問題ではなく社会問題
記者:実際に「りむすび」の活動を通して、しばはしさんにどのような気付きがありましたか?
しばはし:お母さん側のケアだと思って始めたのですが、「子どもに会えなくて困っているお父さん」が多いことに気が付きました。
私は面会交流のことを学ぶきっかけとして、子どもに会えないお父さんの団体に足を運ぶ機会があり、そこで衝撃的な事実を知りました。
夫婦間は悪かったでしょうし、妻にも夫への不満もあったでしょうし、どっちが悪いはないですけれども、
「子どもを連れて出て行って、一切会わせない。」
ということが世の中で起きているということに知ったんですね。
お父さん側と話していくうちに、これは夫婦問題ではなくて社会問題なんじゃないかなと思いましたね。
子どもを連れて出ていって会わせなくても済む世の中で、仮に調停などで決めたとしても、守らなくても済んでしまう。
でも、決してそれを制圧で会わせるのではなく、ちゃんと元夫婦間を親同士として関係を良くしていくことこそが大事なんだと思いました。
共同養育はハードルの高いものではない
記者:このことを一番伝えたい人は誰ですか?
しばはし:今、子連れ離婚を迷っている方、離婚して一人で育てている方ですね。
「離婚しても親子関係は変わらない」
「夫婦関係と親子関係は別物」
そして、
「子どもが親の顔色を見ないで両親の間を行き来できる環境をつくることが大事」
このことを、ぜひとも別居前に気づいてもらえると子どももご自身も救われると思います。
『共同養育』は決してハードルの高いものではありません。
元夫婦で顔を合わせなくてもできますし、「離婚しても育児を分担し、相手のマンパワーを活用させてもらう。」ぐらいのつもりで、頑なにならず始めてみるきっかけになってほしいですね。
記者:大変貴重なお話をありがとうございました。
【編集後記】
今回インタビューを担当させて頂いた大藤(左端)、澤田(中央右)、小田原(右端)です。しばはしさんのナチュラルな感じが、本当に相談者の方に寄り添うことを大事にされてるなと思いました。ありのままで出会ってくださる、その姿勢に心惹かれ、鷲掴みにされる感じがありました。ご自身の原体験を色々お話ししてくださっている姿を見てて、その姿勢がすごく美しいなと感じました。今後のしばはしさんの益々のご活躍を応援しております!
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