市民がまちをつくるファシリテーション技術を育むNPOファシリテーションきたのわ宮本奏さん

【プロフィール】
宮本奏 みやもと かなで 北海道札幌生まれ。
札幌の大学を卒業後、名古屋の大学院へ国際開発を学びに。その後国際青年環境NGO A SEED JAPAN ごみゼロナビゲーションの専従スタッフとして働き、2006年に地元に戻り、環境NGO ezorock 事務局長として働く。その後2010年にNPOファシリテーションきたのわを設立し、代表を務める。

記者:今の活動について教えてください。

宮本奏さん(以下宮本):NPOファシリテーション「きたのわ」を2010年の4月に創設して、代表を勤めています。今年で9年目になりますね。

北海道内を拠点として、自分の地域や活動の中でファシリテーションを「実践」している人、これからやりたい、という人の集まりです。お互いに現場のフォローをし合うという活動もしています。ファシリテーションは「技術」なので、市民活動、地域活動、NPO活動などでファシリテーションを実践したいという人たちに現場でやってみて、困ったことなどを相談し互いに学びあいができる団体を作りたいと思って始めました。

海外の途上国の支援や国際開発、なぜ貧困は起きるのだろう?と思ったのがきっかけで、海外に興味を持ち始めて。その勉強をしたいと思って名古屋の大学院にいって。そこから勉強するより現場に出たいと思い、さらに仕事にしたいと思いました。

国際青年環境NGO A SEED JAPAN の活動は国内の環境活動が主で、徐々に国内に拠点を持ちはじめました。そこから自分の生まれ育った北海道の環境に関心を持ち始めるようになり、北海道の環境NGO ezorock (現 NPO法人ezorock)で働き始めました。そこからさらに、今の団体に繋がっています。

ファシリテーターは進行役。ファシリテーションは促す、促進するということ。

記者:ファシリテーションとはなんでしょうか?

宮本:私は「ファシリテーターです」と言わずに「進行役です」と日本語で伝えていますね。ファシリテーションを直訳すると、

「促す」とか「促進する」と言う意味です。

私たちはミーティングのファシリテーションなので、会議や話し合いの場を促進すると伝えていますね。

年代も業種も違うの人たちが集まって、ひとつのイベントをつくりあげることの可能性とパワーってすごい

記者:何故それをやろうと思いましたか?

宮本:ずっと市民活動をしていて、前職も環境団体の仕事をしていました。いろんな人、年代も様々、業種も様々な人たちと一緒に「Earth day ezo」というイベントを実施しました。北海道各地で年代も業種も違うの人たちが集まって、ひとつのイベントをつくりあげることの可能性とパワーってすごいと感じていました。いろんな人たち、年代の人たちが集まって、一個のイベントを作り上げるのが楽しかったし、その可能性とパワーって会議から作り上げていけるんじゃないかと感じていました。

ファシリテーションに興味を持ちはじめたのは、ezorock の会議ではやっていたのに、他の団体の会議にファシリテーターや板書をつけることを知らない人がいるということを知ったのもきっかけでした。今の団体を立ち上げる前に、北海道の14振興局、全部を3年間で行政職員研修としてファシリテーション講座を実施する手伝いをしました。ニーズがあることと、知りたいという人もいることを感じ、仕事にできるかもと感じたのがタイミングでもあったと思います。

ファシリテーターとして、食べていきたいな〜とか、仕事にしていきたいというのを意識したことはないんです。きたのわを立ち上げてからなんですよね。なりたい!といってなったというより必要としている人がいたことと自分の関心を追い求めた結果これだったという感じですね。

記者:ファシリテーターがいる会議とそうでない会議はどう違いますか?

宮本:「どんな会議をつくりたいのか?」によって変わってくると思います。今日の会議の目的や到達点がわからない状態で始まっていれば、そこを確認してスタートします。人数が多い時、それぞれが持っている経験や知恵を共有し合いたいときはそのための手法をいくつか提案したりもします。ただ話してください、では話すのは難しいこともありますね。問いの言葉を変えたり、2〜3人で話す時間を作ったりすることもあります。

私は娘を助産院で出産したのですが、助産師さんと「どんな出産をしたいか?」「どこで誰とどんな環境で産みたいか?」など毎回2時間くらいお話をしていたんです。産後のケアまで伴走してくれました。もちろん医療行為はしない。

助産師さんがいることで出産や育児に不安がなくなり、「また産みたい」と思えるようになることは、まさにファシリテーターの存在と同じだなと思いました。

これからは「北海道で市民ファシリテーター」を増やしていきたい

記者:これからやりたいことや、夢はありますか?

宮本:「きたのわ」の中で、今年から動き出したいのが、北海道で市民ファシリテーターを増やしていく、という動きです。プロのファシリテーターが外から来て進行するという働きはありますが、自分の住むまちにファシリテーションの視点を持つ人たちがたくさん増えていくことが、長い目でみてまちづくりに大事なことだろうなと感じていて。という働きはあるのすが、自分のまちにプロじゃなくても、小さい規模の進行だったらできるという人がいることが、すごく大事なことだろうなということを感じていて。

ファシリテーションを知っているとか、やってみたいという人を地域で増やしていきたいと思っています。まずは行政や町内会と市民団体と顔がわかるところから相談しながら始めてみたいと思っています。

北海道の自治体やまちづくりの中で大事になるのは「自治の力」だと思うのです。自分たちのことは、自分たちで決める。その土台にはファシリテーションのスキルが必要です。それはプロじゃなくてもその視点を持っている人たちが集まり学び合えるチームがあるといいと思っています。

地域の担い手になっていく、それがファシリテーションの基礎となる視点であり、大事だと思っています。ひとつのモデルですが、静岡県牧之原市で市民ファシリテーターを養成する取り組みがあり、そのプログラムを受講した人がまちづくりの中でファシリテーターをしています。それはひとつのモデルですが、北海道でも私たちに合う方法でやってみたいと思っています。

もうひとつやっているプロジェクトで、昨年9月6日の地震(北海道胆振東部地震)がありましたが、その支援団体が集まる情報共有会議(主催:北海道NPOサポートセンター)の会議支援の手伝いをしています。

3町(安平町・厚真町・むかわ町)の被災状況、支援状況を共有したり、課題を話し合う会議が現在は2週間に1回ほど開催されています。

自分たち自身も被災者であるという状況で会議の支援活動をすること、きたのわ会員が持つ北海道の市民活動のネットワークを活かしてファシリテーションでの支援を行う意味や価値を感じているので、それを取りまとめたいと思っています。

記者:近年、ファシリテーターが増えているそうですが、その背景は一体なんでしょうか?

宮本:きたのわにも20代のメンバーが増えてきました。日本では1995年の阪神・淡路大震災からNPO活動が活発になり、その3年後に特定非営利活動促進法(NPO法)ができました。それから約20年経ちますが、現在はNPOはボランティア活動ではなく仕事として働くという以外にも、社会貢献を仕事にしていくソーシャルベンチャーや社会起業家などが選択肢の一つになってきました。その中ではファシリテーションのスキルが必要とされてきており、ファシリテーターとして働きたいという人たちが増えてきてるのではないかと思っています。

対話をしながら地域やコミュニティの課題を解決していく社会の実現

記者:最後に世の中の人に伝えたいことはなんですか?

宮本:伝えたいこと・・・あんまりないですね(笑

きたのわのビジョンは、対話をしながら地域やコミュニティの課題を解決していく社会の実現です。地域やコミュニティでの困りごとや課題は次々とやってくるので、そこに住んでいる人たちが自分たちで話し合って解決を探していく力をつけていけるというのが一番大事です。ファシリテーションは答えではなく、道具でしかないんです。

会議が変われば会議の結論が変わりますよね。結論が変われば決まったことを実践する行動が変わりますね。行動が変われば地域が変わると考えています。話し合いから地域がダイレクトに変わっていくことを感じていますので、ファシリテーションをやっているということがあります。

北海道で同じ目的を共有する人たちが学び合える場を作ること、そして実践しながら学び続けられる仕組みを作る価値は「きたのわ」から教わりました。

さきほども言いましたが、私というより、きたのわで大事にしていることはこれです。

会議が変われば結論が変わる

結論が変われば行動が変わる

行動が変われば地域が変わる

記者)人と人が出会う会議から、地域が変わっていく。素晴らしいですね。今後の宮本さんのご活躍を心から楽しみにしています。

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宮本奏(みやもと かなで)さんについて
https://www.facebook.com/kanade.miyamoto

ファシリテーション きたのわ について
https://kitanowa.jimdo.com

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【編集後記】
インタビューを担当しました深瀬と堀江です。ファシリテーションの技術を深めるだけでなく、市民ファシリテーターを育て、「自治」を促進するというところがとても印象的でした。問題を解決するのは人間であり、重要なのは会議の場。その会議を促進するファシリテーター の活躍が北海道にとって、日本にとって、世界にとって必要不可欠だと感じました。

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