一人でも多くの人に健康で幸せな生活を NPO法人日本移植支援協会理事長 高橋和子さん
みなさんは「移植」というと、どんなイメージをお持ちですか?移植をする側(レシピエント)と提供する側(ドナー)と病院だけでは如何ともしがたいことをご存知でしょうか?その突破口となるべく、20年間前だけをまっすぐに見続けている高橋さんを取材しました。
〜プロフィール〜
高橋 和子 たかはし かずこ
福島県生まれ。東京の大学附属看護学校卒業後、病院に勤務。その後インターナショナルフォーラムパリスに短期留学。美容と健康に関する会社を立ち上げる。1998年心臓移植の子供を救えない日本の現状を知り、仲間と共に「移植支援救う会」を立ち上げる。2000年、NPO日本移植支援協会認可を取得し、命を救うボランティア活動に取り組み、現職に至る。ニックBS協会会長。BSHセンター主宰。
子供の頃から命について考えること
質問:高橋さんの活動について聞かせてください。
高橋和子さん(以下継承略):臓器移植についての啓発を中心に20年以上活動をしています。
私たちの団体(NPO法人日本移植支援協会)は臓器移植を必要とするレシピエントさんとその家族の支援や、移植に関わる団体さんやレシピエントさんへ医療費などのお金を貸したり、助成したりもしています。
ボランティアのサポートスタッフさんの育成や移植に関するセミナーやイベントなどで周知もしております。それと電話相談(移植110番)や受け入れ医療機関との情報交換などです。
近年では報道やドラマの影響もありドナーカード(移植提供意思表示カード)について知られるようになってきました。ですが、まだまだ臓器移植ドナーは満たされていない状況が続いています。
移植うんぬんに関わらず、子供のうちから命について考える事も必要ですし、移植についての理解を広めるために日夜活動を続けています。私だけじゃなく、たくさんのボランティアさんや、理事やスタッフなど多くの方のお力をお借りしています。
私個人としては、美容と健康に関する会社を経営しています。私自身がかつて看護師だったことが起業のきっかけになりました。外科の移植もやっている病棟で、たくさん亡くなる方をみて、毎日泣いてましたね。どうしたらみんなが幸せになれるのか、、、色々見る中で、その時に目に入ってきたのが予防医学でした。それをきっかけに健康や美容の学びのために色々なところにいきました。
その頃には珍しく、世界の5大陸、全て行きました。そこでご縁をいただき学ぶことができました。パリやロンドンはもちろん、中国で足裏マッサージを学んだり。インドで世界一貧困な場所にも行きました。そこで、たまたまマザーテレサとも出会い、学びになったことを覚えています。それ以降、マザーテレサの関連施設の訪問を社員の研修として取り入れていました。
命の教育を「絵本」から
質問:最近、力を入れいている活動はなんですか?
高橋:当協会で作成させていただいた絵本(大きな木)の普及ですね。この絵本は主人公の兄の脳死と臓器移植について、子供にもわかりやすく描かれています。命の大切さや尊さを知ってほしいということをこの絵本でお伝えしています。当初、学校や地域の図書館・図書室への贈書をさせていただいていました。ですが、それではほとんどの子供達が読むことはありませんでした。
そこで、直接教育委員会や学校に依頼をして、一部教科書への掲載が決まりました。本当に、嬉しいですし、ほっとしています。教科書に載れば授業で取り上げていただけますし、子供たちが読む機会を増やすことができますから。
実は昔から「英語や数学よりも、まず、命の教育が大事」と思っていました。日本では他人の命についての教育に力を入れていなくても、英語の学習には力を入れています。最近の子は中学校で「他者の命」について学ぶこともあるかもしれませんが、中学生では実は遅いんです。今の小学生はそういったレベルが高く、他者の命については十分理解できます。
私たちの団体の代表の中に教育関係の者もおりますし、そういったことを互いに意見交換したり、世の中の情報を目にすると、人の「命」が軽くなってきているということを感じます。今の時代だからこそ、そう言った教育が誰にでもわかる形で必要だと思ったんです。
私たちはこの本の読み聞かせも行っています。この絵本と一緒に音楽CDもついています。その曲の合唱コンテストも開催しながら、子供達に命や移植について深める機会を作っています。各地の先生方がご協力くださり、少しずつですが広まっています。
困っている人がいたから始めたこと
質問:美容や予防医学の業界で活躍していた高橋さんが移植支援の活動をされるようになったのは何故ですか?
高橋:身近な人に移植が必要で、困っている人がいたからです。会社の社員のお子さんが心臓の病気で、その子が3歳の時に心臓移植しか治療法がない、と言われました。かつて看護師だった頃も移植というのは目の当たりにしていました。移植自体が人の命を救う尊いことだということは経験から理解していました。
でも心臓の病気の子供は移植でしか助けられないことは知らなかったんです。それにその子の親である大切な社員が「病気の子供に変わってあげたい」といっていたり、親の凄さを目の当たりにしました。
それも含めて、必死になりましたね。生まれて初めて記者会見をして、移植のための募金協力を訴えました。一緒にやる仲間も私も家族も、誰もが何もかも初めての経験でした。ですが、その子は亡くなってしまいました。色々な感情が湧き上がりました。
そのことがきかっけになり、NPO法人の立ち上げにつながりました。移植支援の財団を立ち上げようとしたのですが、ある方のアドバイスでその時代にあった形がベストだということを知り、NPO法人にしたんです。
〜右:取材中も終始明るく、軽く、真剣に向かってくださる高橋さん〜
大切なのはお金ではなく命
記者:これまで苦労してきたことはなんですか?
高橋:そんな苦労と思ってませんが、とにかく前だけをみてとにかくやってきました。その中で活動に関して関してやっかみを言われることもありましたし、私たちの募金の方法を知って、自分たちも稼ぎたいという人も現れました。人間はお金に貪欲ですね。本当に。私たちはお金のためじゃなく、命のためにやっているんです。
私たちは子供の移植に関することがきっかけで始まりました。6歳未満の子供は年に1人は助けられる様になりましたが 成し遂げることができるようにはなってきました。しかし、なかなかそこから増えるのが難しい現状です。病気を抱えながら待っている方はたくさんいますが、レシピエントはね。だからこそ、動かないと。どんどん新しいことにも挑戦できるのそのお陰かもしれませんね。
病は気から、心の健康が大事
質問:これからの高橋さんの夢や展望は?
高橋:そうですね。鬱や自殺など心を病んでいる人のことが気になります。移植の関係とは別に30年間美容と健康の会社の代表としてやってきて、そこで三面美容(外面、内臓、心の美容)をやってきました。大事なのは本当に「心」だと思っています。
病は気から、心の健康が大事だと思うんです。ですが、今は長年全速力で走り続けてきました。これからこれがしたい、というのは今はないんです。美空ひばりさんの歌「川の流れのように」生きたいと思います。
近々ですと、2019年の11月に日本移植支援協会での20回目の全国大会を開催します。渋谷のヒカリエの9階でより多くの方にご来場いただけるように、急ピッチで準備しています。この規模でこの内容でやるのは初チャレンジですが、より良いものをつくっていけたらと思っています。
20年の感謝を込めて、多くの関係団体様に出店いただいて、盛大に行う予定です。
記者:なるほど、20年の集大成ですね。大成功になるよう、応援しています。この度はお忙しい中、ありがとうございました。
■移植支援協会のHPはこちら
高橋さんの活動やボランティア等に関心ある方は『問い合わせ』からご連絡ください。
〜高橋さんとインタビューチームメンバー〜
〜編集後記〜
インタビューを主幹した深瀬です。今回北のはずれ札幌から首都東京の高橋さんのところへ取材に行かせていただきました。移植という命、お金、制度、倫理など厳しい分野の中で、医療でも患者でもないポジションから尽力する高橋さんの美しい生き様を取材したいと考えていました。彼女の行動の起源をたどる素晴らしい取材になり、生きる姿勢の美しさ、純真さを読んだ方にも感じていただけると嬉しいです。また、この記事が命やお金、制度、人の心について考えるきっかけになってくれればと思います。最後まで読んでくださって本当にありがとうございました。よろしければ、他の記事もお楽しみください。