NPO法人 J.I.L.S.A(日本国際生活支援協会)代表理事 佐藤かずみさん
ネパールと日本の架け橋になるためにネパールに移住し、日本への留学生のサポートをされている、J.I.L.S.A代表理事の佐藤かずみさんにお話を伺いました。
プロフィール
出身地:福岡県北九州市
活動地域:NEPALと日本
経歴:福岡県議会議員事務所勤務時代に、県議から勧められたナポレオンヒルの【思考は現実化する】を読んで衝撃を受ける。その後ネパール人留学生のケアサポートとして、ボランティア活動を開始。日本に住む外国人に対して、もっと本格的な支援が必要だと感じ退職。NPO法人J.I.L.S.Aを立ち上げる。
現在の職業および活動:NPO法人J.I.L.S.Aでの外国人ケアサポートを主に、外国人にはもっともっと日本のことを知ってもらう事、日本人にももっともっと外国のことを知ってもらう事、相互理解を念頭に置き活動をしています。新規で【布ナプキンプロジェクトfor NEPAL】を立ち上げました。
座右の銘:経験は力なり! 経験は財産!
「ネパールと日本が相互理解ができる社会をつくる」
Q.どのような夢やビジョンをお持ちですか?
佐藤さん(以下、佐藤 敬称略):ネパール人には「日本人っていいね」、日本人には「ネパール人ってすごくいいね」とお互いが思える社会をつくることです。日本で起こる外国人の犯罪がクローズアップされますが、それは日本のケアサポートが整っていないからだと思います。外国から日本に来て言葉も文化も全く違うので、わからない人には教えてあげたり、問題が起きた時には寄り添ってあげる人がいないとすごく寂しいと思います。日本のサポート制度が充実してきたらもっと犯罪は減っていくと思います。そのために一番重要なのが”相互理解”です。日本人は海外に出ていく民族ではないので、考え方として「日本に来ているんだから日本のルールに100%従え」みたいなところがあります。その考えもわかりますが、日本人も他の国の特性や文化を知り、お互いのことを分かり合うことが大切だと思います。
この考えの根底にあるのは、私に2人の子供がいることが大きいと思います。もし自分の子供が海外に行った時に、サポートしてくれる人がいないと考えたら、とても苦しくなります。留学生はもちろん、親御さんが安心して子供たちを送り出せる環境にこだわり、そこまで汲み取って活動していけたらと思っています。留学する際に「私が日本にいます。知り合いが日本にいます。」と、伝えてあげるだけでも全然違います。ネパールは国自体が子供を宝として大切にする国なので、とても感謝されます。私はそれがとても幸せですし、やり続けるエネルギーになります。
もう一つの夢は「ネパールで産業を興こして、雇用を生むこと」です。ネパールは観光業がメインで、自国の産業というものがあまりありません。月収も最低賃金が1万3800円で、大学を出ても3万円位しか貰えません。なので若者は外国に出ていくのが当たり前で、外国に出たらネパールのことを愛していてもネパールに帰って来たくないのです。外国で学んだ後に就職ができなくて戻ってくる人も多くいますが、活躍できる場所がありません。その人たちが活躍できる場所を提供したい。せっかく日本で勉強してきた経験を何か形にできるようにしたいと思い、「布ナプキンプロジェクトfor NEPAL」を立ち上げました。市民レベルでコミュニティをつくって、自分たちのレベルで動かしていき、産業を興していきたいです。
記者:佐藤さんの日本とネパールを思う熱い気持ちにとても感動しました。
Q.「ネパールと日本が相互理解ができる社会をつくる」ために、どんな目標や計画を立てていますか?
佐藤:日本に来ている外国人が、トラブルがあった時などにいつでも相談できる場所をつくりたいと思っています。相談できる窓口があればみんなで情報共有ができます。そこに日本人も入って、外国人の考えていることを知って貰い、相互理解が深まるコミュニティーをつくりたいです。
もう一方のネパールでの活動としては、産業を興すために、1年後には布ナプキンを普及していき、3年後くらいには使い方や洗濯の仕方、無添加の石鹸作りなど、衛生教育や環境保護教育をネパール人がネパールでやっていけるようにしていきます。5年後には工場を建てたり、オーガニックコットンの栽培などをしたいと思います。
記者:佐藤さんの計画を聞いて、とてもワクワクしました。
Q.「ネパールと日本が相互理解ができる社会をつくる」を叶えるために、現在どのような活動指針を持って、どのような(基本)活動をしていますか?
佐藤:関わる学生はみんな子供だと思っています。何か困ったことがあった時に頼れる人がいるだけでも安心します。その中で裏切っていく子も沢山いますし、嫌な思いをすることも沢山ありますが、何かあった時には絶対に助けてあげることは決めています。先日もけんか別れみたいになって連絡を取らなくなった子から、3年ぶりに連絡があり「あの時かずみさんが言ってくれたことがわかりました。」とメッセージを貰いました。お互いの思いが時を超えて通じ合えて、とても嬉しい気持ちになりました。
記者:佐藤さんの思いの深さに、なぜそこまで人を思いやれるようになったのか、その背景を知りたくなりました。
Q.そもそも、「ネパールと日本が相互理解ができる社会をつくる」という夢を持ったきっかけは何ですか?そこには、どのような発見や出会いがあったのですか?
佐藤:私は2013年から、あるご縁で日本にいる留学生のケアサポートに携わってきました。2015年4月25日ネパール大地震が起こり、家族と連絡が取れず情緒不安定になる学生が多くいました。何かしてあげたいと思い、ゴールデンウイークに開催する門司港レトロでのキャンドルナイトで、主催者の方にお願いをして急遽キャンドルで描く絵の中にネパールへのメッセージを入れて貰いました。ネパールの留学生を集めてみんなでキャンドルを並べ、浮かびあがった「Play for Nepal」という文字を見た時に、震災以来笑顔を失っていた子が、やっと笑顔をみせてくれたんです。1つのことをみんなでやることは本当にパワーがあることだと感じました。それが私がやっていることの始まりです。そしてその年の11月に初めてネパールに行き、ネパール人の温かさにすっかり魅了され、その後は5年間で13回も行きました(笑)
そんなネパールが大好きな私だからこそ、日本の外国人に対する扱いに違和感を感じていました。日本に住んでいるので日本文化に習うのは大事だと思いますが、「日本のルールに従って日本人みたいに生きろ」などの押し付ける感じが嫌でした。同じことを伝えるにしても、言い方一つで印象は全然変わります。ネパールの学生は、他国と比べてもコミュニケーション力が高く、その分サポートがしやすいのですが、それでもサポートが難しいのが現状です。日本語でのコミュニケーションが難しい留学生は、発信がし辛いことで、犯罪が増えていっていると思います。そういう現状を知って、相互理解があればサポートができます。例えば病気になっても、国民健康保険の支払い用紙は漢字が多く、難しすぎて払うことができずに諦めて保険証がないために治療が受けられない留学生が沢山います。そんな些細なことでもサポートができれば日本に対する印象も変わると思いますし、お互いのことが理解できるようになると思います。日本に来る前から日本を知って貰うことが大事だと思うようになり、2020年からネパールに移住しました。
記者:佐藤さんが話される、日本のサポートの現状や留学生の悩みにはとても共感ができました。
Q.「留学生への対応に違和感を感じ、ネパールに移住する程の行動力」の背景には、何があったのですか?
佐藤:私は田舎でも稀にみる農家で育ちました。3人姉妹の長女で、妹の面倒を見ることが仕事だったこともあり、昔から困っている人がいたら放っておけない性格でした。父親からも「人が嫌がることはするな」、「人がめんどくさいと思うことは進んでしろ」という教えがあり、みんながやらないことを率先してやってきた少し変わった子供でした(笑) 「いいことをしたら神様はずっと見てくれてるよ」と思って、私だったらして欲しいことを考え、誰が見ていなくても行動をするのが当たり前でした。学生の頃も、みんなが掃除の時間に遊んでいるのを見ても「私は掃除をしてからいく」と伝えて、ちゃんと掃除をしてから遊びに行く正義感が働くタイプでした。
記者:佐藤さんの強い正義感や人を思いやる心の原点がわかり、今の活動と繋がりました。
Q.読者への一言
佐藤:楽な方、簡単な方にいきたい気持ちは誰にでもあります。でも「先輩が言ったから」など、不確かな情報ほど危ういものはありません。日本のことは日本人の私に聞くなど、いつも正しい情報を取って下さい。
記者:お話を聞く中で感じた、ネパールと日本の相互理解の弱さ。その問題を解消するために行動されている、佐藤さんの姿勢態度は本当に素敵だと思いました。貴重なお時間ありがとうございました。
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佐藤さんの活動、連絡については、こちらから↓↓
HP:https://peraichi.com/landing_pages/view/nunonapu2020
Facebook:https://www.facebook.com/kazumi.kitakyushu
【編集後記】
インタビューの記者を担当した不知、福田、中村です。
佐藤さんの心の奥底から溢れてくる、ネパールへの思いと熱意は聞いていてこちらがエネルギーを貰いました。佐藤さんが描かれている、ネパールと日本の相互理解ができ、お互いのことがもっと理解し合える社会が本当に楽しみです。
ますますのご活躍を楽しみにしております。