障がいの壁をなくし、お互いに成長し、信頼しあえる地域社会をつくっていきたい  たまみずきグループ代表 櫻井元さん

東京都練馬区を中心に、障がい児専門のデイサービス中心に様々な福祉の事業を展開し、利用者だけでなく、その保護者や、働く職員の成長や幸せを考えて、事業を運営し拡大している、たまみずきグループ代表“櫻井元さん”にお話をお伺いしました。

 

櫻井元(さくらいはじめ)さんプロフィール
出身地:静岡県
活動地域:東京都練馬区
経歴:1973年生まれ。
東京電機大学卒業後、パンローリングのシステムエンジニアで活躍していたが、双子の娘に先天性レット症候群という障がいが発覚。
当時、障がい児が放課後に通える施設が少なく、様々な情報を集めるうちに、「自分でつくろう」と思い立ち、勤めていた会社を辞めて2009年9月1日に障がい児専門のデイサービスを開所。
「たまみずき」という名前は、双子の娘「珠希(たまき)」、「瑞希(みずき)」からとり、母親が命名。
現在の活動:主に障がいを持った子どもたちの放課後の居場所、放課後等デイサービスを中心に様々な福祉の事業を行う。最近では介護タクシー事業も取り入れ、設立から10年経つ現在も事業を拡大。また、障がいをもつ子や家族、その地域をつなげる様々なイベントも開催している。

 

利用者だけでなく、働く人が幸せで、夢や希望を持てるような仕組みをつくっていきたい

Q.どのような夢やビジョンをお持ちですか?

櫻井元さん(以下、櫻井 敬称略):
福祉の事業において、利用者に幸せになってもらえることは嬉しいですが、それ以上に、そこで働いている人が幸せじゃないと、利用者やその家族も幸せにできないなと思っています。
働く人が幸せじゃないとダメだと思いますし、夢や希望を持てるような仕組みづくりを意識して事業運営していくことが、今の夢であり目標です。
障がい児のデイサービスを始めた当時は、とにかく自分の双子の娘を受け入れられるところがあれば良いと思っていました。
現在、娘たちは20歳になって、デイサービスを卒業しています。10年経った現在は違うステージに入っています。
「今は働いている人がどうやったらやりがいや仕事の楽しさなど『希望』を持てるようにできるのか。」ということを常に考えています。

記者:そうですね、働く人が元気じゃないと、利用者の方にも影響がありますよね。

櫻井:子どもが元気であるためには、その保護者が元気であること。そしてその保護者をサポートする我々職員が元気じゃないとなりません。

Q.それを具現化するために、どんな目標や計画を立てていますか?

櫻井:今の事業を、徐々に規模を大きくしていこうと思っています。なぜかというと、事業が新しくできないと、そこで働く職員の停滞が起こるからです。
上のポジションにいる職員は辞めない限りは抜けないので、新しい事業を立ち上げる必要があります。新しい職場にベテランの職員が移り、その空いたところに別の職員が移動することで、人の循環が活性化します。
新規事業を立ち上げるには、ある程度の財務的なリスクマネジメントの必要はありますが、事業規模の拡大はしていかないとならない。それは考えますよね。
今の時代にはマッチしないかもしれないけど、福祉の世界は経験がものを言うので、知識や経験、関係性がとても大事です。
利用する児童は新しい環境についていくことが苦手な子たちが多いので、職員との関係が大事で、特にこの業界に関しては、あまり職員の入れ替わり立ち替わりは良くないと思っています。

記者:今、事業としてやりたいことはどのようなことですか?

櫻井:児童デイサービスの分野は、現在5つの地域でやっています。
自分の娘たちが20歳になったこともあり、今度は成人になって通う場所をつくる計画があります。今年は準備期間で来年立ち上げる予定です。
ライフステージによってサービスを提供したいと思っていますし、子どもの時期だけでなく、成人になってから死ぬまで、つまり看取ることまでを最終的に考えています。
海外の事業も考えていて、福祉で事業をやるんだったら台湾です。親日ということもありますし、台湾も高齢者福祉がこれからのタイミングだと思います。後、海外で事業を行うことで日本のスタッフの刺激にもなると考えています。
また、現在北海道にも事業所があるのですが、創業時から働いていた職員が北海道の地元の街に戻って事業所を始めました。
このように職員が働いてきた経験を生かして独立していく流れは、職員が自ら生き生きできるし、このようなケースが増えると良いと思っています。

 

利用者と職員、お互いの信頼関係を大切にしていきたい

Q.その目標や計画に対して、現在どのような活動指針を持って、どのような活動をしていますか?

櫻井:最低限必要なのは会社の体力(財務的な)です。しっかり財務基盤つくることを考えています。そこが固まれば、我々がやりたいことだけでなくニーズがあることをしっかりやっていくことを意識しています。
5月からスタートする介護タクシーがあるのですが、許認可のコストしかかかりませんでした。僕も二種免許をとりました。(笑)
介護タクシーは患者搬送もできますし、ニーズはあるのではと思っています。

記者
:今の時代、10年続く会社が少ない中で、櫻井さんが会社経営を続けてこられた秘訣はなんですか?

櫻井:この業界は働く人がサービスの質を決めるといっても過言ではありません。特に最近は職員がどうやったらやりがいを持って働くことができるかを考えています。
創業当初、正社員4人のうち3人が辞めてしまうということがありました。そこのことがきっかけで、職員の「働きやすさ」みたいなものを考えるようになりましたが、今でも試行錯誤です。
我々のサービスは需要が高く供給が間に合わないという状況で、サービスを受けたい人は沢山いらっしゃいます。需要は多いけど、働く人が足りていないのが現状です。
定着してもらうには、意識して人を大事にしていかないといけません。
利用者と職員は、お互いの信頼関係が大切です。職員が頻繁に入れ替わるようだと信頼は築けないし、保護者との信頼も築けません。
保護者や利用者の方から、いつも気軽に名前で呼ばれて、要望や言いたいことを、言ってもらえる関係性は持つように意識しています。
以上のことは一例ですが、このような取り組みというか方針が結果的に10年続けられたのではないかと思います。

Q.そもそも、その夢やビジョンを持ったきっかけは何ですか?そこには、どのような発見や出会いがあったのですか?

櫻井: 今のデイサービスは娘たちが小学校5年生の時にはじめました。
その前は10年ぐらいシステムエンジニアの仕事をしていましたが、その当時から起業したいと思い、自己啓発本も読んでいました。
子どもをどこかに預けたかったけれど、近くにある施設はすでに定員がいっぱいで受け入れてもらえませんでした。
同時に練馬区や東京都などに行き、情報を集める中で、事業として成り立つんじゃないかと思い、「自分でやってしまえっ」と思い切って、デイサービスを立ち上げました。
起業をして1年ぐらいは、午前中はシステムエンジニアの仕事で、午後に事業所に行くという生活でした。
設立当初は営業にも力を入れていましたが、潜在的なニーズも高く、事業も順調に拡大していきました。
そんな中、次の課題になってきたのが、働く職員のやりがいや能力開発をいかに促進していくかです。
信頼関係が大切なこの事業において、スタッフ一人ひとりの教育とシステム作りが次の課題になっています。
経営していく中で、さまざまな課題が出るたびに、より良い仕組みづくりをして解決しています。その中でも人が辞めることのリスクというのは大きいと感じています。人が辞めるたびに、やっぱり育成の仕組みは必要だと感じました。

Q:元々起業したかったとお伺いしましたが、その背景には、何があったのですか?

櫻井:幼少期から、父親が個人事業主で書道の先生で、沢山色々な場所に教室を持っていたのですが、それで家族の生計を立てていたんですね。
大人になって考えると、「すごいな、それだけで家族を養っていたんだ」って思うようになりました。
今の私の気質は、家庭環境、父親の影響が大きいのかなと思います。
父親もサラリーマンが向いていなくて、私も型にはまらない性格です。
子どもの頃から、やりたいことをやって失敗しても、考えることはしますが、まず落ち込まない性格でした。(笑)

Q:AI時代に人間にしかできないことは何だと思いますか?

櫻井:そうですね、人間らしさってなんだろうと思います。
究極の多様性の理解が必要じゃないかと思います。
障がい者とそうでない人、高齢者とそうでない人、外国人とそうでない人など、お互いに理解し合うようにし、ありのままを受け入れることが大切だと思います。

記者:お忙しい中、貴重な時間をいただきありがとうございました。

 

たまみずきグループ代表 櫻井元さんの詳細情報についてこちら↓↓

●会社HP https://www.tamamizuki.com/

 

編集後記
インタビュー担当の岩永、池田です。
自身の子どもが障がいを持ち、普通に生活するためには想像を絶する苦労がある中で、その苦労を糧にして、ビジネスに転換して、事業を拡大されている櫻井さんの姿勢にとても感動しました。
本当の意味で多様性を受け入れ、誰もが普通の生活を営んでいくための社会づくりに意識を持ち、社会的な課題を解決しながら事業をされていることがとても素晴らしく、これからどんどん広がって欲しいと思いました。
櫻井さんの今後の活躍を応援しています。

 

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