社員と企業を仲間にする エール株式会社代表取締役 櫻井将さん
「社員と企業を仲間にする」をミッションに、大企業向けにクラウド1on1サービス「YeLL」を提供。これまで目に見えなかった感情やコミュニケーションを扱うことで人材開発をサポートする新しいビジネスモデルが注目されているエール株式会社代表取締役の櫻井将さんにお話をお伺いしました。
櫻井将さんプロフィール
出身地:静岡県浜松市
活動地域:関東
経歴:横浜国立大学経営システム科学科卒業。
ワークスアプリケーションズにて営業部・人事総務部のマネージャ、gCストーリーにて、営業・新規事業開発と、健康経営を支援する子会社を担当。両社にてGPTW「働きがいのある会社」ランキングにてベストカンパニーを受賞。同時に「働きがい」を考える一般社団法人にて理事、「志」を発見する団体の主催、幼児教育に関わるNPOの設立も行う。
現在の職業および活動:“個人の幸せ” と “組織の幸せ” の両立についての探究を行う。
幸せな働き方の一役を担っていきたい
記者 今の時代における「幸せな働き方」とはどのようなものですか?
櫻井将さん(以下、櫻井 敬称略) 日本が高度経済成長の時は、会社で出世して、給料をもらって、家を建てて、車を持つことが幸せだったし、日本人皆がその目標に向かっていたと思うんです。
時代によってつくられてきた価値観を、楽しくて幸せだと捉えて働く人がほとんどでした。
けれど今の時代になって、「それだと幸せじゃなさそうだ」と思う人が増えてきているんだと思うんです。
目の前の仕事に苦しんで取り組んだ結果、20年後に得る楽しさや幸せじゃなくて、やること自体が楽しくて幸せだと思う仕事をやった方が良い。そんな風に思う人が増えています。
ですが、自分が楽しいことが何なのかわからずに困っている人も多いのも現実です。楽しいことや自分がやりたいことを100%自分で見つけることは非常に難しい。
私自身も何をやりたいかずっと模索していました。
私たちが受けた教育は高度経済成長の教育で自分の価値観や好きなことよりも大きな枠組みの中で上手く生きるための教育を受けています。
なので、自分の楽しい、面白いなど、自分の価値観に触れること自体に慣れていなくて、どうやって探していいのか、その方法すらもわかりませんでした。
そんな時代の中で、自分の楽しさに気づき、仕事に没頭できる。そんな環境で多くの人たちが働けるようになったらもっと生産性が上がるんじゃないかと思い、その一翼を担えたらよいなと思っています。
1対1のメンターとコミュニケーションを科学化することによって幸福度を上げていく
記者 現在どのような経営指針や行動指針をお持ちですか?
櫻井 ビジネスパーソン1人1人に組織外の専属サポーターとの1対1のセッションを提供し、社内では話せない本音を話してもらって、働きがいと成果を創っていきます。
具体的には、週に1回30分のコミュニケーションをとります。
記者 1対1のメンターとコミュニケーションを科学化することによって幸福度を上げていくんですね?
櫻井 そうです。
今、会社の上司、部下の交流が少なくなっていています。プレイングマネージャーが増えて、働き方改革という名の労働時間規制が強くなり、飲みニケーションも減っている。昔は、喫煙所コミュニケーションなんかもありました。
とある有名な研究結果で、上司と部下のコミュニケーションの量がモチベーションに影響するというデータが出ています。そんな中で、上司部下間のコミュニケーションの一部を外部のサポーターが担い、モチベーションを促進していきます。
このサービスのポイントは、上司部下ではどうしても発生してしまう利害関係。第三者であるサポーターにしかできない利害関係のないコミュニケーションというのが一番のミソです。
上司部下で行った方がいいコミュニケーションはもちろんたくさんありますが、利害関係のない人がやった方が上手くいくコミュニケーションというのもあります。
記者 サポーターはコニュニケーションの技術を持っている方が多いんですか?
櫻井 サポーターは7割が副業です。副業促進・解禁の流れも影響していると思います。キャリアカウンセラーやコーチングを学んだ方も多いですが、全くそういったコミュニケーションを学んでない方もいます。大前提にあるのは、誰かの役に立ちたいと思っているかどうか。自分のためではなく、相手のために時間を使えるか、ですかね。
もちろん基本的なマニュアルは用意してありますが、1対1セッションのフィードバックを通して、「どうやったら点数が上がるかな。」「どうやったらこの人の役に立てるのか。」とサポーター自らが考え工夫をし、そして、時にはサポーターの仲間に相談することができることの方が大切かもしれません。
実は、セッションを受ける人の幸福度も上がるのですが、結果的にやる人の幸福度も向上していきます。
人が変化するのに必要なのは、変わりたいという願望と、失敗しても大丈夫だと思える環境と、継続する習慣だと言われています。
何かしら変化をしたいと思っている人に対して、利害関係のない第三者が創り出す環境を、週1回継続的に提供するシステムで、社員一人ひとりの成長を支援しています。
現在、サポーターは150人しかいないのですが、来年2019年には1,000人、2020年には更に5-10倍まで増やす予定です。
サポーターが広がれば広がるほど、楽しく幸せに働くビジネスパーソンが増えていく。日本企業の生産性をテクノロジーで支えようという会社はたくさん出てきていますが、僕たちは人の面から支えていきます。
個人と組織がうまく行くためには、部分を捉えるのではなく全体を捉えて行くことが必要
記者 現在の事業のきっかけは何ですか?
櫻井 コミュニケーションの科学化したいと思ったのは、子供の時の経験がきっかけです。
子供の頃、父親と母親が不仲で、高2の時に離婚しています。ただ、大人になってから聞いたのですが、離婚を決意したのが僕が幼稚園の時だったらしいのです。 今でも覚えているのが、夕方までは、兄と母と祖母と楽しく話しているのですが、父の車のヘッドライトがリビングに差し込んでくると、みんな自分の部屋に戻っていって会話がなくなっちゃうんですよ。
会話がなかったので、会話じゃないものから、父と母の感情や思っていることを感じないとならない環境でした。
歩き方やドアの閉め方や茶碗の置き方、今でも鮮明に蘇るのが、階段を上がる音です。その音を聞くと感情がわかったりしていました。あっ、いま怒ってるな、みたいに。これは行った方がいいなと思って付いていくと相手の愚痴が始まって、それをうんうんと聞いていたんですね。
でもですね、実は2人とそれぞれ話すと、2人ともとっても良い人なんですよ。子ども思いだし、仕事が大好きだし。なのになんで、2人一緒になるとこんなに関係性が悪くなるのかなーというのが、僕がこの仕事をしている理由です。
それが私の個人と組織づくりの両立をさせたいという気持ちの原点になっています。
会社や組織を悪くしようとしている人は一人もいないのに、人が集まるといざこざが起きてうまくいかなくなる。
そこを改善したいと思っています。
そのためには部分を捉えるだけではなく、全体を捉えないと解決しない。
人間の体と一緒だと思っていて、僕の体を組織でみたときに、腰が痛いときに腰だけにアプローチすると瞬間的には治るけど、根本的には治らなかったりする。
全体を捉えてアプローチする必要があり、体でいうと自然治癒力を高めないとならない。
人間でいうと一人一人の意識レベルを高めて、調和していくことが必要だと思っています。
僕はいつも、YeLLという仕組みを人材育成・組織開発の東洋的アプローチだと言っています。あまり伝わりませんが。
1万人の会社を1つ作るより、100人の会社を100社創る方が幸せの総和が高い
記者 今後の夢やビジョンはどのようなものですか?
櫻井 今、ティール組織という言葉も出てきていますが、オープンで、全体性を重視している組織が増えてきています。現段階では、1万人の会社を作るより、100人の会社を100社創る方が幸せの総和が高いと思っています。
でも、大きい会社でないとできないこともある。今考えているのは、100人100社の組織を一つの仮想の組織体として扱えないかなーなんて思っています。
資本関係がない、皆オープンで、自分たちの利益ではなく、社会の利益を考えて、リソースは皆で分け合って支えあう会社が100社が一緒に何かをやる。そんな形がこの時代で試してみる価値のある組織形態なんじゃないかなーと思っています。
採用、マーケティング、福利厚生なんかを、大企業でいったら事業部を跨ぐような感じで、会社を跨いで。そんな新しい世界観の組織を創りたいと思っています。
記者 日本の社会や日本企業に対してどのように思っていますか?
櫻井 見返りを求めずにやることや人に何かを与えることなど、日本人は人の役に立つことが好きですよね。それが新しい組織論につながって行くと思うんです。
利益目的だけではなく働くということが、思考レベルではなく、骨の髄から湧き出てくるというのは、日本の素晴らしいところだと思うのです。
本当は誰かの役に立ちたい、純粋にそれができる組織や社会を創っていけるのが日本じゃないかなと思っています。
記者 本日はお忙しい中で、貴重なお話をいただきありがとうございました。
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【編集後記】
インタビューの記者を担当した岩永と池田です。
時代の流れを見据えて、時代のニーズに合ったビジネスモデルに取り組んでいる櫻井さんのお話を聞いて、幸せという概念の変化に伴って働き方が急速に変化していることを感じました。
人と人の関係性がクリエイティブになり、沢山の新しい組織が生まれて行き、さらにその組織と組織が繋がって行く、そんな日本企業が大きく変わって行く未来イメージができてとてもワクワクしました!