愛を提供する手段としてあえて人間レンタル屋。(株)ファミリーロマンス代表取締役社長 石井裕一さん
家族レンタル、レンタルフレンド、リア充代行など斬新なサービスで日本のみならず海外でも注目されている(株)ファミリーロマンスの創業者であり、俳優としても活躍されている石井裕一さんにお話を伺いました。
石井裕一(いしい ゆういち)さんプロフィール
出身地:東京都
活動地域:日本、アメリカ
職業:実業家、俳優
経歴:1981年、東京都昭島市生まれ。
父、母、弟の4人家族。福祉業界、広告業界、IT業界を経て、2009年4月に
人間レンタル業をメインとした株式会社ファミリーロマンスを設立。
今までにないサービスが話題を呼び様々なメディアで取り上げられる。
2018年3月ヴェルナー・ヘルツォーク監督映画「Family Romance, llc」にて主演。
同映画が第72回カンヌ国際映画祭にて特別上映される。
2018年5月THE NEW YORKERに取材記事が掲載され、
2019年4月ハーバード大学「Harvard Global Health & Leadership Conference 2019」にて講演を行う。
人間レンタル業をしている中で見える人と人の繋がりの問題提起や可能性の開発について広く発信を行っている。
座右の銘:本物以上の喜びを
著書『人間レンタル屋』(2019年、鉄人社)
「孤独をなくしたい」代行サービスを必要としない社会を目指して
Q どのような夢やVISIONをお持ちですか?
石井裕一さん(以下石井、敬称略):会社のビジョンとしては僕らのやっている代行サービスというのを必要としない社会にしていきたいです。今はこういった代行サービスのニーズが多くあるので僕らが必要とされてます。会社としてもちろんリピートしてもらうことは嬉しいんですが、その反面お客様には代行サービスから自立して欲しいとも考えています。
例えばリア充アピール代行というサービスを通じてお客様には写真の上手い撮り方やいわゆる「インスタ映え」の秘訣を伝授していたりするんですね。
依頼者さんにとっての出来ないことへの緊張を緩和させながら、ゆくゆくは代行を必要としなくても強く生きれるようにお客様が自立していってほしい。
そして僕らのサービスを通じて代行が必要ではなくなる日本社会を実現できること。それが僕らの目標でもあります。
あとはチームで成功していくことも大事にしています。
遡ってみると、例えば団塊の世代って家族がたくさんいて家族団らんでごはんを食べながらいろんなことを話す仲間のような関係性がありました。そういった日本の家庭文化が経済成長を生んできたと僕は思ってるんですね。
個人が1人で発信するのも良いとは思うんですけど、たくさんの仲間やチームみんなで成長し、そして成功していくといった方向性も目指しています。
「多種多様な個性が僕らにとっては強み」
Q.ではそのVISIONへ向かうために実際にはどんなことをされてますか?
石井:いろいろありますがひとつはサービスをマニュアル化したスタッフ教育です。愚痴聞き、リア充アピールなど各代行サービスにおいて研修とマニュアルを用意していまして、スタッフ全員が同じレベルで様々なニーズに臨機応変に解決していけるよう質を高めています。そこから組織としての力をつけていきたいと考えています。
もうひとつ、例えば子どもが逆上がりができないので指導して欲しいなど、HPのサービスには載ってないお客様からの細かいニーズがあって、それをもっとすくっていきたいと思っています。スタッフが今3000人以上いるのですが、みんな細かい特技やスキルを持っています。多種多様な個性が僕らにとってはすごく強みだと思っており、その特技を引き出すことがより細かいお客様のニーズにも当てはまっていく。そういった意味では今までは僕等が考えたサービスをそのまま当てはめていくスタイルでしたが、今後はスタッフの特技を活かしたサービスを作っていこうとしています。
今取り組んでいるのがレンタルマスクマンというサービスで基本的に顔出しせずに仮面をつけてもらって様々な特技をサービス提供して行くものです。鉄棒の練習のお手伝いですとか通訳やライターのお仕事などなど。2020年の3月に本格リリースに向けて今準備をしているところです。
「本物を超えて何が出来るだろう?」
Q. 石井さんの基本的な活動方針、活動指針を教えて下さい
石井:基本方針は「本物以上の喜びを」というのが常に僕らのテーマです。
では本物以上ってなに?というところなんですけど、たとえば結婚式の代理出席。僕らが出席すると普通に考える以上にものすごく祝福もしますし、積極的に声もかけるし、主賓スピーチ、友人スピーチ、余興もなんでもやるしレベルも高いと思います。何故レベルが高いかというとそこに僕らの想いがありまして。例えば愚痴聞き代行は本当は友人に愚痴を言いいたいけど「お前愚痴ばっか言っててやだな」とか「嫌われたらどうしよう」などでなかなか言えないし、でもネガティブな感情があって悩んでる人は結構多い。思い切り言えなくて結局それがストレスになってそこから鬱などになりやすくなってしまう。
そこで僕らは「本物ってどういったことをしてくれるだろう」をまず考えます。その上で「本物を超えて何が出来るだろう?」という二つの視点で考えニーズに応えていきます。友人としてお客さんが望んだ年齢、性別、服装でいき、それこそ会社帰りにYシャツで袖めくってビール飲みながら聞いて欲しいという要望なら全く同じようにやるんですね。そこは凄く細かくヒアリングして、単純に代行するというよりお客様が望んでるシチュエーションを再現できるように全力で取り組みます。見た目からしゃべり方まで全部含めてサービスなんです。
これはサービス上の関係性ということで割り切る部分を持てます。ですから相手を深く受け入れて接することもできますし、お客様も望んだシチュエーションで気持ちよく話せる。実際体験していただくとわかるんですけどこれは本物と話している感じでありながら余計な心配もせずしゃべれた!という本物以上の満足感を持ってもらえるようです。
僕らはメンタリストではないので心理的な作用は上手く語れませんが、別な角度から心のケアをしようとしています。
記者:相手の立場に立って深く物事を考えないといけないお仕事ですね。
役者とでも言いますか、どこまでなりきれるかというのは、どこまで相手の想いとひとつになれるのかが大事ですよね。自分の価値観がある状態だと難しいお仕事だと思いますが、感情が出たりする事はないですか?
石井:僕も人間なので心の中では思うこともありますがそこは仕事ということで感情を表に出すことはないですね。もちろんお客さんベースで感情の表現が必要な場面ではそういう表現をすることもあります。
最初は役者がこの仕事に向いていると思っていましたが、今はそうは思っていないんですね。なぜなら役者って台本があるじゃないですか。台本があって台詞を覚えてしゃべるんですけど、やはり現場って台本がないし何が起こるかわからない。役者は台本がないと普通の人です。やっぱりこの仕事に必要とするスキルって個々の今まで生きてきた経験則なんですね。色々な経験をしてる人ほど臨機応変に対応できる。ですからスタッフさん一人一人のプロフィールやスキルをしっかり把握しています。
この人は連絡がマメとかこの人は盛り上げ上手だから結婚式や合コンの盛り上げ役に向いてるとかこの人はインスタやってるからリア充代行向きだとか。スタッフみなさんの得意不得意をきちんと把握しながらマッチングしています。
「誰かを借りたい」という気持ちは世界共通ではないか
Q. では、いまやっている代行が最終的にはなくなればいいとおっしゃっていましたが、そう思ったきっかけはなんですか?
石井:リア充代行やレンタルフレンドなどを利用していたお客さんから、ある時「今までサービスを利用してきて色々学んだことで自分自身すごく成長できました。最近性格も明るくなって友達を増やすこともできるようになったので今までサービスを利用してきたけど次回は一人で頑張ってみたいと思います。」と言葉をいただいたんです。その時に「あ、これが僕らの社会貢献なんだな」と初めて気づきました。それが大きなひとつのきっかけですね。そういった言葉が増えてきているのもありますし、それによって僕らスタッフの意識も変わってきています。ただ単純に副業として代行するのではなく、お客様が喜び、そして自立する方向に向かうよう打ち合わせができたり、スタッフ同士の「こういう風にやればいいかな?」というディスカッションも増えていて感覚も変わってきていると感じます。
記者:ファミリーロマンスに関わることによって成長し人生を楽しく生きられるようになっている人がいるというのは嬉しいですね。あとはハーバード大学などで講演もされていて世界観もかなり広がってらっしゃるんじゃないでしょうか?
石井:そうですね。ハーバード大学で講演した経験も大きかったです。最近は世界の需要もリサーチしていて、そこから学んでることは「誰かを借りたい」という気持ちは世界共通ではないかという事です。訳あって家族の代行を必要とする人逹というのは日本だけのニーズではないですね。世界のメディア取材を通じても感じています。
記者:人間レンタルと聞くと不謹慎というかマイナスイメージでも取られやすそうですが今日お話を伺ってみて、本来は経験できないことを経験させれる事によって本当はそれは自分でも出来るようになれるよ、と可能性を見せてあげれる事なんだなと感じ感動しています。
「僕らが提供しているのはAIには提供できない心の琴線に触れる部分」
Q:これからAIがどんどん進化発展しVRや機械が取り入れられていく中で、人間がやってきた事をAIが代行していく時代になっていくと思いますがそこに対してはどのようにお考えですか?
石井:AIには心はないじゃないですか。僕らは人間なんで心がある。AIの進化発展によって人1人が便利な世の中になっていく反面、人と人の関係性はより希薄になり、より個が強まって精神的に寂しい思いをする人はさらに増えると思います。最近は言葉で発することが苦手な人たちも増えましたね。それで友達作りも苦手で、結果的にレンタルフレンドが必要になったり、結婚式の余興人員が必要になったりと、そういったことに紐づいているように思います。僕らが提供しているのはAIには提供できない心の琴線に触れる部分だと思っています。このままいくと僕らのやっていることの需要はさらに増えるのかなと思います。少し複雑ですね。
記者:お話をお聞きしてきてAIにはできないものとおっしゃってるものが、別の言葉で表すと「愛」なのかなと思いました。石井さんのされてる事はそれこそ愛が深いなと思います。役になり切れるのも石井さんの愛の深さなのではないかと感じました。
Q. 最後に読者の方にメッセージをお願いします。
石井:シンプルに仕事でもプライベートでも必ず人と人の繋がりは出てきますよね。
IT社会の進化によって人間の生活は便利になる一方、人間関係が希薄になりうる時代だからこそ、人と人とが支えあっているという感覚が自らの強い気持ちを形成していってくれると思います。
僕たちは人間なので悩むことも沢山ありますが、人は一人では生きていけないものです。新しい時代に移り変わって行っても「人と人との繋がりがある世界である」という心を持つことで、自ずとやるべき答えが見えてくると思います。
記者:人と人との繋がりを大切に新しい時代を共に歩んで行けたらと思います。本日は貴重なお話を聞かせて頂きましてありがとうございました。
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【編集後記】
今回インタビューを担当した喜多島、浅利、中谷です。
今まで聞いたことのないような興味深い話がたくさん飛び出し、見聞を広げるインタビューとなりました。ニッチな産業のイメージとは裏腹に一番リアルに現代社会と向き合っていらっしゃることがよくわかりました。その中で発見した社会貢献の形が興味深かったです。
また、石井さんの好奇心とカメレオンぶりに驚きや新鮮な発見がたくさんありました。そして、全ては石井さんの周りの方達への感謝と相手を思う愛からスタートしているものであることがよくわかり、あたたかいインタビューの場となったことに改めてお礼申し上げます。
一緒にハートのメガネで撮影に臨んで下さるお茶目さも魅力のひとつだと感じました。代行業を必要としなくなる社会、孤独になり得ない時代づくりへの取り組みを今後ともぜひ応援していきたいと思います。
今回は貴重なお時間をいただきありがとうございました!